10.ワイド発売に思う
(99.10.28)

何だかんだと楽しみにしている口ぶりのワイドであるが、果たしてもろ手を
挙げて賛同できるものかどうか、改めて考えたいと思う。

ワイドの触れ込みは「3倍当たる」である。これはすなわち、「配当は3分
の1」そのものだ。JRAとしては、少しでも当たる馬券を、ということで
ファンの心理に入り込もうとしたのだと思う。フランスのジュムレプラッセ
という馬券をモデルに、日本では大井が先鞭をつけているのだから、導入の
時期としては、何の問題もあるまい。むしろ遅すぎたとさえ思う。

しかし、である。なにゆえ、ここまで待ってようやくワイドなのだろうか。
このところ、あまり言っていなかったが、馬券の種類など、多いにこしたこ
とはない。ただ、ファンにとって選択の余地が広がるだけなのだ。何ひとつ
迷惑することはないのである。問題は、やはり法律ということになるのだろ
うか。高配当が出過ぎるものを「射幸心を煽る」という理由で敬遠し続ける
ことを続けて、はやウン十年。おそらくJRAとしては、売りたいという気
持ちはあるだろう。しかし、新種馬券の発売には、設備投資もさることなが
ら、法律の問題も絡んでくる。決して楽な手順ではあるまい。それでも、本
当にやる気になれば、絶対に不可能ではないと思うのだ。

普段からハズしまくって、ワイドでようやく救われそうな人間が、これ以
上どんな馬券を売れというのだ、などと突っ込まれてはミもフタもないの
だが、しばし聞いていただきたい。馬券の売り上げは、競馬の盛り上がり
そのものにつながる。これは不動の真理である。どんなにレベルの高い競
馬が行われていても、ファンがそっぽを向いては、競馬の存続が危うくな
ってしまうのだ。事実、フランスでは、サンクルー大賞のようなG1レー
スが行われていても、入場人員は1000人ちょっと。たとえに出して申
し訳ないとは思うが、平日の高崎競馬あたりと同じような人数である。ま
あ、フランスの場合、国中に場外発売所があるからいいようなものの、そ
れでも売り上げをアップさせるためにさまざまな施策を模索しているくら
いだ。いまの日本の競馬は、やや売り上げが下がってるとはいえ、十分に
世界の中でナンバーワンといえるだけの売り上げと盛り上がりを誇る。と
はいえ、それに安閑としていたら、いつか取り返しのつかないファン離れ
が起きないとも限らないのだ。

そのファン離れを防ぐ切り札が新種の馬券だとは言わない。何と言っても
ハイセイコー、オグリキャップで分かるように、スターホースの出現こそ
が競馬を盛り上げる。だが、そうしてつかんだファンが離れないようにす
るためには、できるだけソフト面の充実を図っていくしかない。簡単にソ
フト面の充実ができるとは思わないが、差し当たって新種の馬券を発売す
ることは、馬券というファンにとって最も入り口に近い場所での改革であ
り、言葉は悪いが、目先を変えるという意味において有効だと思う。だか
らワイドの発売を否定するつもりはないが、もっと新しい馬券の発売をす
るべく、早急に動いてほしいと思うのだ。

このことは何度か触れてきたが、世界各国で、日本ほど馬券の種類が少な
い国はない。ある意味、そのシンプルさがファンを捕らえてきたという側
面もあるだろうが、単複連という、新しいファンにもわかりやすいシンプ
ルな馬券だけではなく、手慣れたファンが買ってみたいと思わせる馬券を
売ることに、デメリットはないはずだ。とりあえず、地方競馬では発売さ
れている連勝単式がある。意外に当たりやすいという点では、3連複あた
りなら受け入れやすいだろう。何も、宝くじ級の配当金が出る馬券を売れ
というつもりはない。ただ、これまで米国、豪州、香港、フランスと出か
ける機会があって、それぞれの国で競馬を、そして馬券を楽しんできて、
つくづく「日本ももっと馬券で楽しめるのといいのにな」と感じてきた。
自分の考えを多くの人に押し付けるつもりはないが、前述したように、発
売したからといって誰が迷惑するわけでもないのだ。このHPでいろいろ
言ったところでどうなるものでもないとは思うが、ワイド発売という機会
とあって、思うところを述べてみた。善は急げという。できることなら、
早い時期に発売に向けたアクションを起こしてほしいものだ。

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