13.年度代表馬について
(00.01.02)

99年の競馬がすべて終わり、新たな1年が始まろうとしている。そして、
1年が終わる時には、必ず年度代表馬が決定するわけだが、今年は各方面で
議論となっているようだ。投票権を持っている方々は、多くの部門で難しい
選択を強いられることになる。4歳牡馬、牝馬、最優秀ダート馬、最優秀障
害馬なども、混迷を極めることになるだろう。しかし、何よりも重要なのは
年度代表馬にほかならない。

99年の年度代表馬候補として名が挙がっているのは、エルコンドルパサー
とグラスワンダーとスペシャルウィーク。それぞれを推す人々に、3者3様
の意見がある。そもそも、1度も日本で出走していないエルコンドルパサー
に資格があること自体を問題視する向きもあるが、とりあえず規則に従って
のものだけに、ここでその議論は避けておく。自分個人の意見としては、日
本における競馬の盛り上がりに貢献しているわけで、資格があること自体に
異を唱えるつもりはない。それより、地方競馬との交流が進んでいるのに、
地方所属馬に資格がないことの方がよほどの問題だ。もし地方所属の3冠馬
が出現したら、どうするつもりなのだろうか。まあ、この議論もまた別の機
会に譲ろう。今回は99年の年度代表馬について私見を述べたい。

エルコンドルパサーを推す人々の意見は、言うまでもなく、チャンピオンデ
ィスタンスにおいて日本調教馬としては初のG1ウイナーとなったこと、そ
してもちろん、凱旋門賞でも2着に好走したことが主となる。これに加え、
その果敢な挑戦者精神に対する称賛の意味合いも込められていよう。逆に、
エルコンドルに否定的な向きの意見としては、凱旋門賞馬モンジューがジャ
パンCで大敗したこと、そしてあくまでG1は1勝しかしていないこと、ま
た、どうしても日本で走っていない馬だから、ということなどがある。特に
G1を1勝しかしていない、という点については、前年のシーキングザパー
ルやタイキシャトルとも額面上は同じ評価に過ぎないこともあるようだ。

続いてグラスワンダー。勝ち星はG1G2をそれぞれ2勝ずつの4勝で、年
間にすると5戦4勝となる。ただし、出走を予定していながら出られなかっ
たレースが多く、年間を通じて活躍したという意味では、明らかにスペシャ
ルウィークに劣るという見方だ。とはいえども、そのスペシャルウィークに
は2戦2勝。特に宝塚記念では相手に完敗を認めさせたほどの勝ちを演じて
おり、この点は強いインパクトがある。安田記念の敗北と、毎日王冠の辛勝
がイメージを下げているようだが、残り3戦の強さ、内容を思えば、この馬
を推す人々がいるのは当然だ。

最後にスペシャルウィークだが、これは前述のように年間を通して競馬の盛
り上がりに貢献したという意味で、最大の功労者である。異例とも言える1
月の始動に始まり、近年では珍しい年間8戦のスケジュール。その中でG1
を3勝し、特に秋の天皇賞〜ジャパンCを連勝して有馬記念ハナ差2着とい
う戦績は、例年ならば文句無しの受賞となるべきものだ。同期に2頭もいた
相手が悪いだけにすぎない。この馬の難点は、やはりグラスワンダーとの2
戦2敗ということになろう。最後の3戦の内容で、京都大賞典の完敗は帳消
しと言えるだろうが、春秋のグランプリで同じ馬に2度敗れた年度代表馬と
いうのは、やはりしまらない。つらいところだ。

3頭を吟味してきたが、自分には投票権はない。記者歴5年以上の人々に与
えられるものだけに、かえって気軽といえば気軽に論じている。個人的な評
価としては、上に表記した3頭の順だ。やはりフランスに4度も同行したエ
ルコンドルだからか、と言われると完全に否定しきれるものではない。しか
し、全く環境の違うフランスという土地に見事に対応し、日本では考えられ
ない重馬場の凱旋門賞であれだけの走りを見せ、日本中に感動を与えたこと
を評価したいのだ。ジャパンCに来た時のモンジューが本調子でなかったこ
とは明らかで(といってスペシャルウィークをけなすつもりはないが、エル
コンドルの立場に立ってものを思うと、そう言わざるをえない)、ともに戦
ってきたタイガーヒルもボルジアもジャパンCでは敗れ去ったが、それこそ
遠征の難しさを物語っているとは言えまいか。長期滞在で故障することもな
く結果を残したエルコンドルパサーを最上位に評価したいと思う。

実際のところ、最優秀5歳以上牡馬に選ばれた馬が、年度代表馬ということ
になるだろう。今まで、特別賞というものが年によっては設けられ、これで
受賞なしという事態を避けてきたこともあったが、今年は3頭のうち1頭し
か年度代表馬にはなれない。特別賞に2頭の枠が設けられない限り、1頭は
何の賞も得られないことになる。果たしてどういう結果になるかは分からな
いが、これだけぜいたくなヒーローたちのレースを見てきたことを幸せに思
いつつ、年度代表馬に選出された馬を、あるいは特別賞に選ばれた馬を、ま
た仮に何の賞も得られない馬が出ても、3頭の馬たちは心から称賛したい。
3頭の中で唯一、現役を続けるグラスワンダーには、今後も頑張ってほしい
と思うばかりだ。

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