17.障害レースの扱いについて
(01.11.05)

障害レースの振興策が始まって数年になるが、今年あたりから、何ら新しい動きが見受けられないと思う
のは自分だけではないだろう。東京競馬場のスタンド前の新障害の名称募集があった程度か。いずれにし
ても、「本腰をすえているな」と感じられた頃とは程遠い、今の状況を考えてみたい。

このことを考えるにいたったのは、先週の月曜日の晩。トレセンの宿舎に入って何げなくグリーンチャン
ネルを見ていたら、「レーシングインフォメーション」という番組を放映していた。その週の週末に行わ
れる各場の特別レースの名前を中心に、重賞の簡単な紹介などを行う短い番組である。この番組をボーッ
と見ていて、「おや?」と感じた。先週の土曜東京の特別を紹介する時に、秋陽ジャンプSの名前が入っ
ていなかったのである。何かの間違いかと思ったが、そんなことはなく、確かに入っていなかった。単純
ミスなのかもしれないが、恐らくそうではないだろう。どんな資料にも、特別レースが抜けていることな
どない。故意に抜いたものだと思っている。重賞でもないジャンプのオープン特別など、軽く考えている
のだろうか。呆れるとともに、ショックを受けずにいられなかった。

少なくともJRAがからんでいる番組において、しかも週末用の宣伝番組において、あろうことか特別レ
ースを省略するなど、どういうことか。本気で障害レースを盛り上げようという気持ちがあるとは、到底
思えない。しかし、問題はこれだけではないように思うのだ。

確かに重賞にグレードがつくようになり、グランドジャンプもできたことによって、ファンの間での認知
度は高まっている。しかし、そこまでを一気に行ったパワーに対して、最近は何ひとつ障害レースという
マーケットを高めようという動きは感じられない。たとえば、ジョッキーの海外派遣。3年前、東西ひと
りずつ、計2人を3〜4回にわたって、フランスに研修に派遣したことを記憶しているファンもいるだろ
う。横山義、西谷、三浦、川合、出津、鈴木…などなどベテラン・若手を問わず、本場の国に出かけた成
果は、たとえファンの目にすぐに見えずとも、長い目でみた成果があったはずである。ところが、昨年、
今年は音沙汰ナシ。あらゆる点で予算縮小が求められているのは、このご時世だから仕方ないにしろ、こ
ういう予算を削るべきものではないと思うのは、自分だけではあるまい。暮れの大障害の日程もそうだ。
朝日杯フューチュリティSと有馬記念の間の週は、G1の谷間。ここのメーンに大障害を持ってくれば、
盛り上がることは間違いない。にもかかわらず、有馬記念前日、しかもメーンではないレースに行うのだ
から、本気で盛り上げる気などないのだろう、と判断しても文句は言われないはずだ。

実際に、競馬ファンの多くの声として、障害レースが好きではないというのも多く聞く。平地のスピード
に慣れてしまうとつまらない、とか、落馬があると不安だからみたくない、など理由はさまざまだが、人
馬一体の飛越の美しさや、平地で芽が出なかった馬が障害で花開く姿など、障害レースならではの魅力に
果たして興味を持っているのかどうか。競馬の本場は、欧州である。その欧州における障害レースの人気
は絶大だ。グランドナショナルなどはキワモノ的なレースだから別扱いだとしても、フランスやアイルラ
ンドなど、障害専用の競馬場も少なくない。文化として馬が根付いている土壌があるにしろ、日本だけが
つまらないレースをしているとは思えないのだが…。

そんな障害レースにファンの目を向けさせる努力は、我々マスコミも怠れない。だが、悲しいかな最初か
ら主催者サイドにその気が感じられなければ、動けるはずがないのだ。あくまで個人の意見として、この
場で問題提起するのが精いっぱい。影響力なんてちっぽけどころか、あってないようなものだと思う。売
り上げ減を嘆く前に、もっとマーケットを拡大する余地がある部門を、きちんと見直してほしい。きっと
ファンの心はついてくる。自分はそう信じている。平地レースももちろんのことだが、障害レース振興の
ために何ができるか、これからも自分はもっと考えていきたいと思う。

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