8.審議の基準
(99.03.22)

昨日行われたスプリングSにおける審議の内容が、どうにも引っ掛かって
ならない。詳細は新聞などに書かれているのでレース内の事実については
省くが、引っ掛かるのは裁決委員の説明である。

我々マスコミは、一般ファンと違ってパトロールフィルムをみることがで
きるという特権がある。長引いた審議の後、一部マスコミの申し入れで、
パトロールフィルムを見ながら裁決委員の説明を受けられることになった
のだが、これがいただけなかったである。

フィルムをみる限り、あれが降着に値するかどうかは判断しかねる。今ま
での「降着レベル」「過怠金レベル」をすべてみているわけではないから
だ。だから、当初裁決委員の説明にあった「えてして集団の後ろにいる馬
がああいう被害を受けやすい。降着には値しない」というものは何となく
納得できるものだったのである。例えて言うなら、3年前の朝日杯3歳S
でマイネルマックスが勝った時だ。ずいぶんと物議を醸したが、結果は3
万円の過怠金に過ぎなかった。武豊Jは怒りをあらわにしていたが、「あ
そこで行かなかったら、こちらがやられていた」と佐藤哲Jは言い切って
いたものである。このあたりの機微は騎手にしか分かるまいが、やられれ
ば誰もが怒るものだろう。だから、マスコミの身分で「あれは絶対に降着
でなければおかしい」と言うつもりはない。

問題はその後の説明だ。いわく「1コーナーでの出来事だったので、取り
返しがきくと判断した」。さらには「落馬していれば、また処分も変わっ
ていたかもしれない」というものである。これはどう考えてもおかしいの
ではなかろうか。前者の説明を解釈すると「同じだけ後ろの馬を邪魔して
も、勝負どころでなければ処分は軽くなる」ということになる。後者など
は同じ馬でも騎手が違えば落ちていた可能性はあるわけで(事実、矢野進
師は「ノリだから落ちなかった」と言っている)、こんな矛盾した話が通
るとは信じられない。

あれこれ食い下がるマスコミに対しては「長年培ってきた裁決委員の判断
基準がある」という答弁がなされた。降着するか否かについては、前記の
理由があるし、これを否定するつもりはない。だから、あのレースの結果
がどうのこうのと言うつもりもない。基本的には「進路妨害がなければ、
結果は変わっていた」ということが降着や失格の基準になるのだと思うが
確かに勝負どころでそういう出来事があれば結果に直結するのが見えるだ
けに、判断しやすいだろう。しかし、1コーナーでの出来事がどれだけ結
果につながるかは、当事者である騎手以外、判断できないのではなかろう
か。事実、あのシルクガーディアンの脚をみる限り、裁決委員のいう「巻
き返し」はきいたのだろうが、まともにコーナリングをしていたらどのよ
うに結果になったかは分からないと思うのが普通だ。

一般の方々には、降着、失格がない限りパトロールフィルムを見る機会が
ない。そもそもこれがいけないとも思うのだが、とりあえず見ることがで
きた立場のものとして、強い疑問を覚えたので書いてみた。いつになく、
難しい内容なのかもしれないが、たまにはマスコミらしいことも書いてみ
ていいと思う。今後も何かあれば、提言めいたことはしていきたい。

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