今年の有馬記念は、前々から言っているようにレオリュウホウの戦線離脱とともに自分の中で
の盛り上がりを欠いてしまった。しかし、だからといって、このレースを買わないまま年を越
すことができるかとなると、それは無理(笑)。だからこそ、いつになく冷静な気持ちで取材を
重ね、結論を出そうと思った。結果は後述するが、馬券は買う人の自由。どんな買い目になろ
うとも、当たれば勝ち…有馬記念とは、そんなレースだと思う。せっかくだから、1頭ずつの
見解を述べることで、予想の結論を導き出したい。

1.ツルマルツヨシ(▲)
二分師が「ファン投票でないと出られないみたいだから、どうか投票してください」とマスコ
ミを通じてファンに呼びかけ、その熱意が実った形での出走。素質の高さは巷間でも言われて
いるが、昨秋を思い出すと同斤量の京都大賞典ではオペラオーに先着し、有馬記念は2k与え
てコンマ1秒差だった。オペラオーが成長したことを差し引いても、能力は互角と考えていい
だろう。中間の調整はプールを併用して入念。普通なら本命にしてもおかしくないが、とにか
く体質の弱さが改善されていない。輸送の結果がどうなのか。当日の気配を見るまでなんとも
言えないだけに、この評価とした。アッサリ勝つ単の魅力は確かにある。

2.マチカネキンノホシ(…)
気分屋のイメージが強いが、そんな中で前走のジャパンCは全力を出し切った競馬のように思
えた。だからこそ、上位陣との力量差が明らかになったと自分は思っている。藤沢和・岡部の
ブランドで人気になってしまうのは分かるし、勝算なしにあの藤沢師が使ってくるとも思えな
いところだが、適性ある中山のプラスを考えても、ここは無印にしたい。

3.ホットシークレット(△)
よほどこの馬を本命にしようかとも思ったが、ちょっと芸がないかな、という理由でシルシは
落とした。逃げ馬のくせに、とにかくスタートが悪い馬で、枠順が微妙。ぶっ叩いてでもハナ
に行ければ、逃げ切る下地はある。4歳春の頃から、ペインテドブラックあたりと好勝負をし
ていただけに、能力面を思えば前走はフロックではない。単騎で行ければ、相当なしぶとさが
あることを忘れてはならないだろう。オペラオーの和田Jがこの馬を軽んじるようなら、チャ
ンスは十分に出てくると思う。この馬が逃げ切る流れになれば、相手は何が来ても不思議ない
のではないだろうか。

4.ナリタトップロード(…)
ステイヤーズSのレース後に自分の見解は掲示板などで十分に述べた。ハッキリ言って、前走
の負けは、この馬の現状における、ある種の限界ではないだろうか。もともと沖師は「暮れの
中山は向かない」と話し続けていた。結果的に馬場は例年ほど悪くなく、それが2番人気にま
で押し上げる要因となっているのだろうが、いくら前が楽をしていたといっても、前走の伸び
のなさは普通ではない。的場Jへの乗り替わりに期待する声が大きいのだろうが、それだけで
あの不甲斐なさが解消するとは、自分には思えないのだ。無印でいく。

5.ジョービッグバン(△)
金杯の勝ち馬。前走がマイル戦。どこかダイユウサクとダブる面もあるこの馬。能力の高さは
決してここに入ってもヒケを取るものではないと思う。問題は距離だけ。2000mでもかな
りの行きっぷりを見せるタイプなので、ホットシークレットがグイグイ引っ張る流れになるこ
とが条件だろう。しかし、うまく流れに乗れれば、宝塚記念のような結果は出せる力量の持ち
主。「北海道からの帰厩時に熱発した後だった前走は度外視」と坪正師もひと叩きされての良
化に自信満々だ。不気味さが漂う1頭といえる。

6.トーホウシデン(…)
この馬の無印はかなり勇気がいることだが、あまりシルシの数を増やせないという薄弱な理由
で無印とした。基本的に、今年の4歳世代があまり強くないというのは認めたいが、菊花賞後
有馬記念までの間に、力をつけていく4歳馬は多い。ましてこの時期に充実するブライアンズ
タイム産駒となれば、なおのことだ。美浦からはデキも絶好という話が聞こえてくる。しかし
クールに見ればまだ2勝しかしていない馬。実力の高さは認めた上で、苦渋の決断の無印。

7.テイエムオペラオー(△)
今さらこの馬に△などという評価はおかしいかもしれない。どうせなら無印でもいいと思うの
だが、本命馬とのオッズでも十分においしいという理由で、シルシは打った。別にこの馬には
何の恨みもない。むしろ、今をさかのぼること8年前。杵臼牧場に見学に行ったとき、この馬
の母ワンスウェドを写真に収めているし、実際にこの馬をペーパーオーナーゲームでも指名し
たほどだ。実績、実力、ケチのつけようがない。だが、距離不足と見られていた天皇賞、世界
の馬も多くいたジャパンCと違い、今回はどこの誰からもこの馬がマークされる。多くの騎手
が「絶対的強さとは思わない」ということも、都合よく解釈したいところだ。

8.ユーセイトップラン(△)
東京コースの専門家のように思われているが、とにかくここにきて具合の良さがすばらしすぎ
るのだ。今週、マイネルエスケープの佐々木晶師が「ウチのが一番時計やろ? トップロード
より速かったしな」と上機嫌だったが、調べてみたら何と、この馬が一番時計。今までは調教
でバタバタになるのが当たり前だったこの馬にとって、この動きは尋常ではない。今回は中舘
Jに騎乗依頼をして、追走に苦労しているレースぶりに変化を求めている。一発の妙味は、非
常に大きいと思うのだが、さて?

9.ゴーイングスズカ(…)
こちらも8歳馬ながら、ここにきて充実一途。ただ、こちらは馬場が予想以上に悪くない点が
割り引き材料だろう。それでも、展開を問わない自在性は大きな武器。今年はどの馬が来ても
おかしくないと思っているが、この馬も無印ではあるが、来ても驚けないと思う。

10.キングヘイロー(△)
古馬になってからというもの、今までほとんど買うことがなく、シルシもあまり打った記憶が
ないこの馬。しかし、今回は買う気をそそられている。ひとつには状態の良さ。そして陣営の
前向きな姿勢が挙げられる。「年末ジャンボだって、買わなきゃ当たらない」と時岡調教助手
が言えば、坂口大師は「2年前あたりの有馬記念と比べたら、メンバーは弱い」とハッキリ勝
負を意識している。本質的に気性の問題が成績を妨げてきたが、恐らく今回は折り合いに専念
して、切れ味を生かす策に出ると思う。オペラオーを瞬時に交わす切れがあるのは、この馬だ
と思うのだが、どんなものだろうか。

11.ステイゴールド(◎)
自分でも、この馬に本命をつけた記憶はない。しかし、あれこれ考えていくうちに、自然とこ
の馬が相応しく思えてきた。本来、本命とは「勝つ」と思う馬につけるべきなのだろうから、
その意味では趣旨に反するかもしれない。確実に上位に絡んでくる馬、という意味での本命で
あることは、先にお断りしておく。この秋3戦を振り返ろう。「チャンスやと思う」と山元厩
務員が腕を撫したオールカマーは、重馬場にたたられて惨敗。天皇賞は武豊J激怒の不利が響
いて敗退。そして前走は本来の策ではない逃げでこれまた敗北。人気は大きく落ちているが、
いずれも敗因は明らかなものがあるのだ。さらに今週の追い切りがパッとしなかったことが人
気下落に追い討ちをかけている。しかし「今さら追い切りがどうこういう馬じゃない」という
のが陣営の一致した見解。前半引っかかったために、しまいを要しただけのことだ。この馬も
ホットシークレットのよどみない逃げがベストの条件になるだけに、展開がポイントになると
は思うが、人気がない時にこそ狙って妙味があるタイプ。単はともかく、馬連で勝負しよう。

12.ダイワテキサス(…)
今年大活躍の8歳馬の中でも、特に頑張った1頭。前走の走りには、正直驚いた。とはいえ、
あれがいっぱいだろうとも思う。2500mは守備範囲を外れているように思うし、今回のメ
ンバー中では、一番評価が低い馬だ。←こんなこと言って来られたら、情けないなぁ

13.メイショウドトウ(○)
天皇賞で期待した分、前走は逆に無印にしてしまった。それだけ力の差があったと天皇賞の後
に思ったのだが、見る目のなさを感じさせられたものだ。今回は、何と言っても主戦・安田康
Jの「勝つ乗り方をしたい」という言葉にシビれた。もともと不敵なくらいの乗り役ではある
が、今回の一連の言動には、かなりの自信を漂わせている。外枠をひいたため、折り合い面が
ポイントとなるだろうが、打倒オペラオーの至近距離にいることは確かだろう。

14.アドマイヤボス(…)
トーホウシデンと同様、4歳馬ゆえの無印というのが大きいが、それ以上にキャリア不足があ
る。もっとも、どんなことがあっても武豊Jという人物を考えると、怖いことは怖いのだが。
来年のこのレースあたりには、本命馬として出てくるかもしれないと思うものの、いかんせん
現状は苦しいとみている。

15.アメリカンボス(…)
右回り、距離と不向きな環境が揃ってしまった今回。状態は引き続きいいようだが、前走の後
に土屋厩務員は「今年はもう使わないと思う」と話していたことが気になってしまう。オーナ
ーサイドの要望での出走だそうだが、実力は認めるものの、ここは割り引きでいいだろう。

16.メイショウオウドウ(…)
今回、穴党の間で人気が高いのがこの馬。オペラオーを負かす切れ味の持ち主として、クロー
ズアップされている形だ。確かに、グラスワンダーを追い詰めた毎日王冠、そして前走と、力
量はG1に手が届くだけのものを持っていると思うが、冷静になるとやはり距離の壁を感じて
しまう。名手・河内Jが大外枠からうまく導けば…とも思うのだが。


結論

買い目は予想ページに入れておくが、本命からの買い目だけには絞らない。どうせオペラオー
を軽視するのだ。あれこれ買っても元は十分に取れる。まずはステイゴールドからのシルシど
おり。そして、買う気をそそられる馬たちのボックス。さらに逃げ馬ホットシークレットから
の総流し。そして人気薄の複勝。まったく首尾一貫したものがないと批判されても甘んじて受
けるしかあるまい。とにかく、当たれば勝ち。それが年越し前のグランプリである。

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