トレーナー&ジョッキー、思いを語る
「障害といえば、中山の大障害コース」。これは、障害に熱意を燃やす関係者ならば当然のように感じている
思いだろう。日々の動きをリポートすることが難しい分、今回はそういった関係者の思いを、つづっていくこ
とにしてみた。なかなか誌面に登場する機会が少ない関係者もいるので、これを機に注目していただくことが
できれば幸いである。
4.吉岡八郎調教師(ギフテッドクラウン)
障害レースをよく見ている方ならば、このトレーナーの名前は親しみもあるはず。何せ、中山の大障害コース
となれば必ずといっていいほどこのトレーナーの管理馬が出ているのだ。近年では老齢まで一流で頑張ったケ
イティタイガーや、その馬名と意外性で知られるヨイドレテンシなどが挙げられる。よほど障害に対する意欲
があるものかと思えるが、ベテラントレーナーは「たまたまそういう素質を持っている馬がいただけ」と功を
誇ろうとはしない。実は、自分が現場に出た頃、この吉岡師は、要注意人物・と指導を受けたことがある。混
雑しがちな調教師席での取材の際、邪魔な位置にいると怒鳴られることがある、という理由。実際にそのよう
な邪魔をしないようにしたせいか、怒鳴られたことはないが、なにせコワモテ(失礼)のベテラン。初めて話
をするまでは、近寄らないようにしていたのだ。ところが、実際に話を聞くと物腰も柔らかで、コメントも的
確。先入観や偏見で見てはいけないとおのれを恥じたものである。
さて、今回のギフテッドクラウンは前述した白浜Jでの挑戦。テン乗りで大障害コースも初めてだが、「スク
ーリングはしません」とキッパリ言う。「スタミナはあるし、馬は障害を見て、それに合わせて飛べるから」
というのがその理由だ。ただ「まだ馬には若さがあるので、うまく折り合っていければ、という条件付き。今
回は胸を借りるつもりです」と勝ち負けに対するこだわりはそれほどでもない。息長く活躍させる手腕がある
トレーナーだけに、ここは経験を積むのも大きな目的なのだろう。「障害におろす以上、目的は大障害」と中
山コースに思いを馳せる吉岡師。今回に限らず、長い目でこの馬を見続けていく必要がありそうだ。
3.臼井武調教助手(メジロシュナイダー)
古いファンならばこの名前でピンと来るだろう。現在は尾形充弘厩舎の調教助手で、グラスワンダーの調教を
手がけていた助手さんだが、それ以前は障害ジョッキーとして活躍していた。中でも、中山大障害をはじめと
して重賞戦線で活躍したメジロマスキットは、数ある活躍馬の中でも思い入れのある1頭。そしてそのマスキ
ットの子供が、今年母娘挑戦となるメジロシュナイダーなのだ。
「今回はまだ障害3戦目だしね。人馬ともに経験になってくれれば」と今回の勝負に対するこだわりは、それ
ほど感じられない。「体は大きいけど、まだ全体に薄い感じでね。つくべきところに筋肉がついてないんだ。
でも、おっかさんも最初はそんな感じだった。それが障害に入ってからグングン良くなってね。馬体に幅が出
て、それに伴って力もつけていったよ。オレはああいう追っつけていくタイプは苦手で、下手に乗ったけど、
馬が上手だったんだな」と苦笑いしながら母娘を比較する。「ジョッキーもこのコースは初めて。経験しない
とね」と沢Jにも心遣いを寄せるが「馬がおっかさんみたいにこれから力をつけてくれば、来年の今ごろには
楽しみなんじゃないかな。この馬、これから良くなると思うんだよ」。思い入れの強い血統で、今後の成長が
期待されるメジロシュナイダー。母馬を知っている世代のファンは、そんな思いもダブらせて見てみるのもお
もしろいと思う。
2.出津孝一騎手(マキハタコンコルド)
このHPでは日記や予想コーナーによく登場されるので、親しみをお持ちの方もおられるかと思う。しかし、
実際に関西地区などで重賞を勝った際のヒーローインタビューなどを聞かれた経験がある人には、なおのこと
その人がらを敬慕されているはずだ。とにかくこのジョッキー、表裏がまったくない。非常に声が大きく、常
に快活で、そして何よりいつも競馬を愛している姿勢が伝わってくる。「若い子たちみたいにカッコよく乗る
ことはできないから、ガッツだけです」というのが口癖だが、ほとんどが障害レースでJRA132勝という
数字は立派なものだと思う。ガッツあふれる騎乗は、たとえハズレても爽快なものだ。いつも新聞を見てくれ
ていて、◎で2着以下に負けるといつも「どうもすみません」と謝ってくれる。こんなジョッキー、さすがに
他にいない(笑)。しかし、ジャンプ重賞のグラビアなどがウチの雑誌に出ていなかったりすると、「せっか
くいいレースをしているんですから、お願いしますよ」という意見も寄せてくれる。こういうことを言ってく
れるのも、非常にありがたいことだ。意気には意気で応えたいとこちらも思う。障害レースにほれ込むひとつ
の要因となったのは、この人と仲良くなれたから、ということもあるのだ。
マキハタコンコルドとのコンビは、幾度か手を離れたこともある。ユーセイシュタインとの兼ね合いや、ケガ
によるものなどだが、今回は満を持しての挑戦と言えるだろう。「昨年はうまく外めから好位に行きかけたと
ころで、外からカラ馬に押し込まれる形になって下がってしまったのが響きました。でも、今年は昨年よりも
引っ掛からなくなっているし、前ほど右回りも気にならなくなりました。前走ではゴールした後も半周くらい
元気よく走っていましたし、スタミナもあるからホントに楽しみです」。ゴーカイの強さは百も承知だが、そ
ういう強い相手を負かす時にこそ、男・出津のやる気に火がつくはず。今春の春麗ジャンプSで見せたような
ガッツポーズを、ぜひともこの中山で見たいものだ。
1.白浜雄造騎手(ギフテッドクラウン)
昨年は、関西のジャンプ界を背負って立つ若手と目され、大活躍を収めた白浜J。今年はその座を高田Jにす
っかり奪われたかっこうだが、本人にはさらなる飛躍への思いがある。それは後述するとして、今回、十分に
勝ち負けを争えるギフテッドクラウンの鞍が回ってきたことについては、喜んでいた。先週、初めて騎乗した
印象について、こう語っている。「同じレースに乗ったことがあるので、見てはいたんです。もっと雑に飛ぶ
ような印象を持っていたし、スピードがあるので東京向きじゃないかと思っていたんですけど、見ていた以上
に安心して乗っていられる馬ですね。行くところで行くし、セーブするところはするし。折り合いをつければ
チャンスはあると思います」。
今年、この馬に乗ってきた高田Jがカネトシガバナー、田中剛Jがヒカルボシというお手馬を抱えているため
に回ってきた鞍だが、障害界ではよくあること。チャンスを生かすべく、腕を撫している。そんな白浜Jは、
来年1月から、武者修行のためフランスに行く。基本的には、やはり障害ジョッキーとしての腕を磨くための
遠征だ。「いちおう、つてを頼っていくんですが、乗れるかどうかよりも、今と違う環境でどんなものなのか
を見てみたいんです。できることなら、1年でも2年でも」。JRAは以前、障害レース振興に力を入れてい
た時期に、積極的に障害騎乗騎手をフランスに送り込んで技術習得に励ませた。しかし、理事長の交替ととも
にすっかりその気配は消えうせ、フランス遠征も立ち消えになったまま。その中で、自力でフランス遠征する
白浜Jの決断には、心から惜しみない拍手を送りたい。決して楽ではないだろうけれど、ぜひとも優れた技術
を身につけて帰国し、障害界に白浜ありと言われるようになってほしいと思う。「大障害コースに乗るのは初
めて」とは意外な感もあるが、「障害に乗っている以上、あのコースを勝てるものならぜひ勝ちたいです」と
出発前の勲章ゲットに燃えていた。若手の中でも物静かな印象を受ける白浜Jだが、内面の熱さは相当なもの
だと感じる。今回、馬券を離れる意味においては最も応援したい一人と言っておこう。