■ 設計の理念   Policy
 ”住宅”や”別荘”を新築なされようとする方のために、木造またはRC造・天然素材・合理的な工法による、健康的で快適な生活の拠点となる”住空間”のあり方を提案したいと考えています。
 建築を創ることは少なからず自然を破壊する行為でありますが、また新しい環境を創る行為でもあります。 自然との共生の上にはじめて人間(生物)としての生活空間があり、そのために建築設計がある....と考えております。
 「健康」とか「快適」という事については、人それぞれの考えとか感じ方の違があります。 私達は、建築・環境を構成する素材についての、充分な情報をもっております。 そして、その人独自の好み・感性・理念にあわせて「テイスト・ブレンド」すること、健康・快適をモットーに住む方の個性を表現したいと思っています。
 保守・維持費やエネルギーコストを抑えようとすると、初期の工事費は高くなりますが、長期的に考えればお得です。ご予算との兼ね合いがありますので、イニシアル・コスト(当初の建設費)とランニング・コスト(エネルギー/保守/維持費)のバランスについて、具体的にご説明し協議させていただきます。



 実際例  ”週末住宅A(別荘)”の場合

 設計事務所の作風を知るには、実際に建築された作品を見るのが一番でしょう。 ....それは「写真ギャラリー」を見ていただくことにして....ここでは、理念を抽象的に述べるよりも、どのような経緯を経て具体的に設計が進められるか、その実際例を示すことにします。

 以下は、”週末住宅A”の実例です。
 この建物は、湖と人工雪スキー場に近い別荘地に建てられました。 週末には頻繁に通い、休養しながらも仕事(構想を練る等)をしたい....という使われ方の、いわば”週末住宅”と言えるものです。 住宅金融公庫の融資を受けています。



 ■ 生活・空間イメージの優先項目

 設計の依頼を受け、初回のお打ち合わせでは、ご予算・敷地条件・間取りのご要望など、基本的な与条件をお聞きしました。 その内容をふまえた上で、具体的な設計に入る前に、この”週末住宅”での生活・空間イメージを想定し、優先すべき項目をお伺いしました。
項目   生活のイメージ   空間のイメージ   住まいのパターン 優先
屋外 ・ガーデニング (園芸)
・アグリカルチャー(農作業)
・デッキでバーベキュー 
・屋外で自然に親しむ
・屋外と屋内の連続性
・庭の取り込み 重視
・大地との触れ合い重視
専用室 ・趣味、絵画、工作
・樹上の眺望
・リラクゼーション、休息
・屋内で作業する、休息する
・アトリエ、オーディオルーム
・望遠室
・専用室での充足 重視
・書斎、オーディオルーム独立
スポーツ ・冬はスキー
・夏はテニス/登山
・四季折々、釣り、ヨット
・屋外スポーツの拠点として
・スキー乾燥室
・道具保管スペース ←→ 居間
・スポーツ基地 重視
・ベッドルーム 重視
×
交友 ・パーティーをひらく
・にぎやかに遊ぶ
・社交の場
・ギャラリー + ゲストルーム
・パーティー、会合 重視
・キッチン 重視


 お伺いした結果、恵まれた自然を生かす空間構成を重視し、「屋外スポーツ」や「オウトドアライフ」の拠点としての機能は、さほど重視しない....ということでした。 ご要望をお聞きすると、当事務所が以前に設計した「清里八ケ岳の家(モデル別荘)」(※)で提案したコンセプトと共通する点が多い、ということも判明しました。 そこで、このモデル別荘の長所をさらに発展させる形で、基本コンセプトを作成し提案させていだくことになりました。

   (※)
清里八ケ岳の家
 (モデル別荘)
 1985年 モデル別荘設計コンペ
 (主催者: 山梨県産材住宅建築事業共同組合)
 優秀作品入選
 清里の森(山梨県高根町)にて、コンペ主催者により
 モデル住宅として実際に建設された。



 ■ 基本コンセプト
 
 提案して、ご了解を得た、基本コンセプトの概略は以下のようなものでした。

イメージ
コンセプト

● 生活・空間イメージのキーワード 健康、生活を楽しむ
天然素材の建材を使う
広々とした ........ 空間の連続性
メンテナンスフリー(管理の容易さ)

● ”健康” を指向し、かつ快適さを求める。
”近くて遠い別荘” から、”近くて近い週末別荘”へ
”つい”の”すみか”=( ”終”の”住処” )へ


空間

条件

 ● 自然と一体化する居住空間

・夫婦+子供+(ゲスト) という家族の最小限単位にとって
 最適なキャパシティーと機能を備える
・小じんまりしていて、暖か味が強い................が、
 ................余裕と遊びのある空間を実現させる。
・居住空間が室内から屋外へと連続し、一体化する
・分譲住宅地の中でプライバシーを確保させる
・滞在中はもちろん、長期の不在期間でも防犯性を高める

仕様

 ● こだわりの仕様

 ・暖炉(下部は耐火レンガ)
 ・ペアガラス付・木製サッシ
 ・断熱材(グラスウール)厚100
 ・床高=地盤+1.200(湿気対策)
 ・基礎の割栗の下端=地盤―1.000
    (寒冷地につき、凍結深度以下)
 ・ならフローリングの床
 ・杉材の天井
 ・唐松材の屋外サンデッキ
 天然木材

寒冷地
設備
仕様

 ● 給排水設備の凍結防止対策

 ・埋設管や止水栓は、凍結深度以下に埋設
 ・凍結深度より上の給水管には、電気ヒーターを設置
 ・配管には保温を充分に行い、水抜き勾配を充分にとる
 ・風呂の追焚き循環チューブでも水抜き勾配を充分に
 ・水抜き操作を一箇所にて可能とする、また操作を楽に
   するため、水抜栓・止水線のバルブ位置を高くする


 構造: 木造在来工法 2階建
      基礎(コンクリト布基礎)高さ=1,800
 外部仕上 外壁: サイディング横張り
        屋根: カラー鉄板一文字葺き
 モジュール: 廊下がないので、3尺モジュール(※)とする。

注(※) ・3尺モジュールでは、3尺(=909mm)が寸法の基本単位ですが、
 mモジュールでは、1m(=1000mm)を基本単位とします。
・当事務所では一般的には「mモジュール」を推奨しています。
 (廊下や便所の横幅が 909mmだと、やや狭いのが理由です)
・しかし建設地によっては、採用した建材が入手しづらく、かえって
 単価が高くなる場合もあります。 このケースがそうでした。



 ■ 基本設計

 さらに何回かの打ち合わせと図面の書き直しを重ね、最終的なプラン(平面図)が決定しました。

1階プラン

2階プラン

ロフト・プラン
 ■ 実施設計/建築確認申請/および施工監理

 このあと実施設計に移り、ディテール(詳細な収まり)を検討し、設計図書を完成。
 工務店から見積りをとり、工事請負金額の調整を行なった後、工事契約。 工事業者は結局、現地に近い工務店(大工さん)に決まりました。

 建築確認申請を終え、春になってから着工。 4ヶ月間の工事監理、建設地が東京から遠いこともあって、現地におもむくのは工事の要所要所で....ということにさせていただきました。

竣工したのは夏の終りでしたが、現地では「きのこ」の採れる初秋の季節に入っていました。


アキツ設計 AKITU SEKKEI CO.,LTD.