補助輪を外して…


補助輪を外して自転車に息子を乗せてみる
バランスをとることの必要性さえ知らない
サドルを掴んで腰をかがめて教えながら一緒に走る
段々と息も切れて腰も痛くなってくる

前を見て!
ハンドルを切って!
身体をまっすぐに!
すぐに足を着くな!

言葉がきつくなっていく

一向に重心が安定しない
少し転んでみなければ覚えないか?
まだ早いと思いながらも手を離す

転ぶ

硬いアスファルトの上に身体を投げ出して泣く
いつもなら止めると言い出すだろう
訊いてみた、まだ乗る?
息子がうなづいた

気持ちが切り替わった
もう少し付き合って見るか

繰り返す
走る・転ぶ・泣く

ふと、自転車が軽くなる
自分でバランスを取っている
自分の足で漕いでいる

手を離す
ほんの5メートル
見詰めていた

バランスを崩す
駆け寄って抱きかかえる

喜んでみせる
大げさに
でもそんなことは無い

笑って頭を撫でる
くしゃくしゃに撫でる

息子がはにかんだように静かに微笑む
本当に嬉しいときに見せる顔だ

でも、今日はそこまで
また今度の休みに頑張ろうか?
傷だらけになって元気な声で返事をする

「うん!」


2003.07.03. 11:42 (Thu)