薄く広がる雲の向こう側に満月を前にした月が見える。
「やぁ、お月様。久しぶりだね」
『こ、こんばんは…』
「火星さん輝いているね」
『観てた?』
「うん。みんなの話題だよ。寄り添う二人のこと」
『久しぶりに逢うから…』
「そうだね、募る話もあるでしょう」
『でも、何を話したらいいのか…二人とも黙っちゃって』
綴られた言葉や、紡がれた言の葉なんていらなくて
その温度を感じられたらそれだけで良いから…。
「明日の夜、みんな君に注目しているよ」
『どうして?』
「中秋の名月だって」
『そう…』
「うん。今の君が満月だって知っているけれど」
『ん。』
「みんな、暦を頼りに君を観ているから。」
一番、月の輝く瞬間が、今この時だって知らずに。
「僕も、明日の夜、君を待ってる」
『うん』
「だめだよ。雲のベールに隠れたりしちゃ」
『でも…』
「みんなが君を待ってるから」
『…はい…』
月の輝く夜に、それぞれの想いが交差する。
2003.09.11. 01:49 (Thu)