観る世界 Faile(58)「観るということ」

932年ぶりに、日本全国で見られるという、金冠日食の機会に恵まれて、久しぶりに明るい話題で賑わっていました。

天候が前日から、いささか雲行きが怪しくなってきていたので、かなり心配していたのですが、朝は早く起きて、日光が射してくるのを待ちました。

まるで、少年時代の遠足気分でした。

天文好きな私も、観察用の眼鏡とカメラを片手に、近くの駒沢通りへ出て、そこにある陸橋に上って態勢を整えました。

しかしその時はまで雲がうっすらとかかっていて、ひょっとしたら絶好の天体ショウを見損なうことになるのかなと、いささか不安いっぱいでいました。

幸いこの陸橋には、誰も気が付いていないようで、私一人でした。 遮るビルもなく、観測には絶好のポイントでした。

あとは雲の様子だけが心配でした。ところがいよいよ天体ショウが始まるころになると、雲は切れていったのです。

ついに思いを果たしました。

綺麗な金冠日食を、食い入るように見つめていました。 すると脇から男の声で、「ほら、ガンダムのはじめのところみたいだろ」という声が聞こえたのです。

眼鏡を外して見てみると、そこには数名の子供と、その父親と思われる男性が、興奮気味に話かけているのでした。

逆のところにも、青年が二人現れていました。

私の姿を見て、慌てて参加してきたのかもしれません。

子供たちの父親は、「こんな時に、自動車で走っているなんてないよ!」と、如何にも私に話しかけるように、何度も叫んでいたのでした。

お陰さまで、私は平安時代以来の天体ショウを水戸でけることが出来たのでした。

きっと古代の人・・・まだ科学知識のなかった頃は、実に怪奇な天体現象で、恐怖にもなったことでしょう☆