本の隠し部屋
個人的読書記録乃頁

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2003年読破作品一覧
 吉田浩美
a piece of cake
クラフト・エヴィング商會の店主・吉田浩美さんの作品。彼女が作った架空の12冊の本を紹介している本。例えば「夜更かしのためのパン焼きレシピ」「ゆっくり犬の冒険1」「ものすごく手のふるえるギャルソンのはなし」「誤字標本箱」などなどなど。どれも実際に手にして読んでみたくなる。いつもの懐古的なクラフト・エヴィング商會の作品に比べると、現代的でちょっとお洒落なエッセイってかんじ。
 会津八一
自註鹿鳴集
私が愛してやまない歌人・会津八一が自らの歌に注釈をつけてまとめたもの。16の歌集が収められている。とくに好きなのは「南京新唱」。南京とは”なんきょう”と読み、奈良の都を指す言葉。「南京新唱」には仏・お寺に関して詠まれた歌が数多く収められていて、詠んでいるとなんだか切なくなってくる。特に好きな歌は、
あめつち に われ ひとり いて たつ ごとき
この さびしさ を きみ は ほほえむ

何とも言えない寂寞感がたまらない。
 川端康成
伊豆の踊り子・温泉宿
川端代表作。この短篇集は彼が20代に書いた作品を集めたものである。それにしても「雪国」といい、私には川端文学は難解です(^-^;面白かったのは「青い海黒い海」と言う作品。とっても抽象的なお話なのですが、恋愛の激情が紙面からひしひし伝わってきて、胸苦しくなる作品でした。
 大岡信
啄木詩集
啄木の歌は何編か知っているけど詩は読んだことがなかったので、試しに読んでみた。うん、難しいかったです。大岡さんの解説を読むと、彼の才能がいかに素晴らしかったかということがわかるのですが、如何せん、詩に対する基礎知識がないため、彼のすごさがわかりませんでした。しかしそんな中でも「家」という詩はよかったな。こうしたいこうありたいって夢はあったけど、今は日々の暮らしに忙殺されているーーっていうような内容の詩で身に積まされた。やはりどちらかというと短歌の方が好きみたい。
 C.S.ルイス
ライオンと魔女
ナルニア国シリーズの第一巻。初めて読んだのは確か小学生だった。う〜ん随分昔に読んだから、どんな話だったか余り覚えてなかったけど、当時はナルニアの世界観がすごいツボにはまっていたような気がする。で、久々読んでみて・・・やっぱり大人になった所為か?ツボったところは曖昧になってしまったなぁ。
翻訳という作業は非常に困難だと思われます。どうしたって日本語に訳できない独特の言い回しってあるでしょうからね。しかしそれにしても、巨人ゴロゴロ八郎太って・・・一体・・・原文ではジャイアントローリングジャックとかなんとか、そんな名前だったのかなぁ?
 C.S.ルイス
カスピアン王子のつのぶえ
ナルニア国シリーズの第二巻。
「ライオンと魔女」で活躍してベペンシー家の4兄弟がナルニア国を再び訪れ、ナルニア国を助ける話。全7巻のうちの2巻目なのでまだまだこれから面白くなっていくだろうってかんじに、途中経過のお話。
 池澤夏樹
言葉の流星群
本屋さんでこの本の装丁を見たとき「あ!クラフトエヴィング商會だ!」と思って見てみたら、本当にクラフトエヴィング商會が装丁してたという本。内容は宮澤賢治の作品論。といってもそんな堅苦しい物でもなくて、詩人・宮澤賢治の紡いだ世界を言葉と自然と科学から読み解いていくというもの。最後の2本は講演会の演説を興した文章でうち1本は、宮澤賢治生誕100年の時に演説した物。生誕100年と言えば、私は横浜で開催された宮澤賢治展に大学生の時に行きました。そっかあのころ池澤夏樹は賢治さんに関して講演会をしていたのねーーとちょっと不思議な気分。中に「セーラームーン」の言葉が出てくるのも、何やら時代の流れを感じるなぁ。
 篠田真由美
月蝕の窓
久々の建築探偵桜井京介の事件簿シリーズ。ひさびさ〜〜・・・に読んだから前回までの話をすっからかんと忘れてます。前回の話がこのシリーズのターニングポイントであったにも関わらず、すっからかんと忘れてしまっているので、随所に出てくる京介の思考がわからない、わからない(^-^;なんでこの主人公、こんなにネガティブなんじゃ〜〜い!ミステリとしては風呂敷広げすぎて着地地点でちょっとズレたので8点ってかんじでした。ネガティブな主人公に事件解決は大変かも知れません。
 内田青蔵
お屋敷拝見
東京近郊にある明治〜昭和初期の近代建築を紹介した本。洋館の改装が終わって一般公開が始まった旧岩崎邸も勿論載っている。他にも行ったことのあるイタリア山・外交官の家も載っていたし、これから行きたいお屋敷についても、細かい写真と説明入りで掲載されているのでとても為になる。近代建築好きにはたまらない本だなぁ。しかも巻末には建築用語辞典が載っていて、より深くお屋敷を見ることが出来るのだ。この本を小脇に抱えて、少しずつでもいいからお屋敷見学に行こうと思ってる。
 C.S.ルイス
銀の椅子
朝びらき丸東の海へ
魔術師のおい
最後の戦い
中学生の頃読んだはずなんだけど、最後の方はもう全然覚えてなくて、新たな読み物として読めました。「朝びらき〜」でどんどん東の海へ向かっていくと、船体の影が海底に映っているのがわかるくらいどんどん海の透明度がましていって、いつの間にか睡蓮の白い花が海一面に咲き乱れ、その花の中を分け入って船は進んでいくーーって場面がとても好き。光はまばゆいばかり、耳を突き刺すような静寂に包まれている。その厳かな空気感は、子供の頃にかんじたお正月の朝の、あの明るい静けさを思い出させた。
 
月をめざしたふたりの科学者  
 京極夏彦
ウブメの夏  
 京極夏彦
陰摩羅鬼の瑕 あまり動かない話だったけど、面白かった。今回のはミステリ、なんでしょうか?最初からトリックらしいトリックはなかった気がします。私にもすぐわかったし。あぁしかし、薫子さんはどうにかして助かって、伯爵と幸せになって欲しかったなぁ。そういえば、これを読む前に期せずして「ウブメの夏」を読んでいたのがとても役立った。
 樋口一葉
大つごもり・十三夜 初めて読んだ樋口一葉作品。今度お札の絵柄になるのにどんな人なのか、どんな作品を書いていたのか、全然知らないのは問題でしょう!と思い、手に取ったのがこれ。
文章が文語体なので最初はとても読みにくかったけど、何編か読み進めていくうちに慣れました。自由に生きられない女性の悲喜こもごもを描いた作品が主で、それは作者一葉の実生活を投射したものだったらしい。男の身勝手さ、それに振り回される女の遣る瀬無さ。財があるだけでは決して幸福にはなれない現実。今も昔も悩み事は尽きないのです。
 小野不由美
黒祠の島 久しぶりに読んだ小野不由美作品。彼女が書く十二国記、ホラー以外はあまり興味なくて、これはミステリだからどうも食指が動かず、ずっとほっぽらかしにしていたのだ(汗)
読んだ感想は、可もなく不可もなく・・・京極作品ほど細部に至る説明が濃厚ではないし、宮部作品ほどじんわりした感動もなかった。十二国のような「すごさ」を最初から期待して読んでしまったのがいけなかったかも。トリック(志保と麻里の入れ替わり)はわからなかったけど、犯人は私にもわかった。
 江戸川乱歩
孤島の鬼 昔、このお話をイメージしたという漫画を読んだ。それの印象が残っていて、どんなお話なんだろうと手に取った本。結論から言うと、その漫画は、一体どの辺をイメージしていたのだろうか・・・謎。
内容は乱歩の世界ぎっしりでした。せむしとかかたわとか不具者とか。そして極め付けが同性愛。うむ〜妖しい世界だ。
 樋口一葉
にごりえ・たけくらべ うむむ・・・相変わらずの古語文に苦しめられる。なんとなくしか内容がわからない・・・。
あと、昔ながらの風習・風俗が登場するので、常識として馴染みがなくてわからない・・・。
「にごりえ」は、芸者・お力が、彼女を慕うあまり、妻子を捨てた男・源七に殺されるお話。お力は、芸者としてはかなり破天荒な女で、そんな彼女を愛人・結城(大店の旦那。羽振りがよく、人生経験に長けているが、いまだ独身でふらふらしている)は可愛がっていた。源七もかつては羽振りいい布団屋だったが、今は落ちぶれてしまい、いつまでもかつての栄光にすがってまともな生活をしようとしない。そしてお力のつれない素振りに思い余ってお力を殺し、自身も自殺してしまうーー自分勝手な男だ、源七。お力はやっと気のいい愛人と出会ったのに、可愛そうな最期である。
「たけくらべ」は芸者屋の美登利とお寺の信如の淡い恋を描いた物語。これを読むとどうしても「ガラスの仮面」を思い出すなぁ(漫画「ガラスの仮面」で演じられた演目のひとつなのだ)
解説に「一葉の小説は、女だからあわれな生き物ということが主要なねらいにあり〜」とあり、昔の女性の辛苦がしのばれる。