まずリング&キャップの制作方法を簡単に説明します。
要するにニッケルシルバーの丸棒から削り出すわけですが、1セット分だけ必要なら行程が重複するのでチェックと合わせて3種類同時に作ると能率が上がります。
大量生産の場合は各々のパーツをまとめて作るといいでしょう。 

まず外側を削って仕上げてしまいます。曲線部分は姿バイトといわれる特殊なバイトで削ります。これは市販されていないので自作するしかありません。その後内側をくり抜きながら、カットしていけば完成です。

姿バイトです。古いヤスリの杖の部分で制作しました。綺麗な曲線を作るのはとても難しいですね。まだ精度が甘くていらいらします。

ここで困ってしまうのは最後のカットした面がどうしても綺麗に仕上がらないと言う事でした。
キャップの底の部分はもちろんですがリングやチェックの切り離した切り口もバリが出ていたりしてお世辞にも美しいとは言えません。突っ切りが未熟と言われればそれまでですがせっかくここまで集中して作ってきた素材を最後の最後で無駄にするのは耐えられません。何とかして切り落とした工作物をもう一度チャックにくわえられないものかと思い円柱に軽いテーパーをつけてそれにはめ込む方法を考えました。

こういう物です。せっかくなので両端を違う太さで削ってみました。太い方が内径17.5mm用、細い方が17mm用です。角度は2度でテーパーをつけています。本当はもっと繊細なテーパーの方が良いのでしょうが工作物の幅の範囲内で固定できなければ意味がないのでいたしかたありません。

チャックにくわえたら工作物を被せて軽くハンマーでたたきます。もちろん偏心は避けられないところですが、うまくすっと収まれば意外と最小限の偏心で抑える事ができます。旋盤のモーターを少しずつ回しながら偏心が最小になるまで調整します。
その後できてしまったヘソを切り取るなり面を綺麗に仕上げるなりすれば高価なニッケルシルバーが無駄になりません。
ごく僅かの偏心ならば削って行くうちに気にならなくなりますし、仕上がりにも痕跡はほとんど出ません。けど本当は邪道なんでしょうね。

あとで知ったのですがこのような治具を専門用語で「ヤトイ」というそうです。本物はもっと精巧に作り使い捨てるようですが・・・・。

これは普通の事だったのですね。失礼しました。