姉貴がまだ小さかった頃(小学校だよなあ、多分)、「りぼん」という少女マンガ雑誌を買っていたのだが、その中に載っていた作品。昨今の文庫判コミックの相次ぐ発刊の中、この作品もかなりの需要があったのか、復刻(?)された。本屋でたまたま見かけたので、10ウン年振りに読んでみた。
いやぁ、暗い。
女主人公ナタリーは細見で美人で、話の半ばにはもう三十路に突入という、私好みのタイプである (もちろん、ティーンエイジャーのイチャイチャなんざ今さら読む気も無い)。しかも典型的な「鬱」であり、理性がいくら希望を見いだそうとも、本人の深層心理がそれを許さないかのような、徹底的先天的ペシミストである。
これだけだったらいいのだが、対する男の主人公フランシス(ナタリーの昔の恋人の子供にして、後の恋人)までもが話の展開につれ、まるで感染したかのように加速度的に「鬱」になっていく。最終巻なんざ、もう鬱と鬱との激突。影のある女はなかなか良いものだし、男にも多少陰影のようなものが欲しいところだろうが、これはそんなもんでなくて、もうブラックホールというかなんというか。作者があとがきで「A型同士の恋愛、それもAA型」と書いているが、これは七代遡った先祖まで延々A型なんじゃねーかとか思うくらい凄絶な鬱である。こんな重い話が、小学生の読む少女マンガ雑誌に連載されていたというのは、今思うととても凄いことではないかと思う。文庫判の帯コピーには「日本中の少女たちに衝撃を与えた」とあるが、そらそうだろうなあ。(一部の少年には「鬱の年上美人」に対する憧憬を与えたかも知れない)
ラストを憶えていなかったので、おそらくそれ以前に姉貴が「りぼん」を読むのをやめていたのではないかと推測する。ちょうど中学に入ったくらいで、きっと「セブンティーン」とか「プチセブン」に流れたのだろう(読んだ記憶がある)。私は「少女マンガのラスト」について深く考察したわけではないのだが、ラストもちょっと少女マンガらしからぬ感のある、ヒジョーに重いものだ。舞台がフランスであるだけに、フランス映画的なペシミズムというか、そういうものが根底に流れているような感がある。というか、フランス映画に少女マンガ的エッセンスをちりばめているという方が正しいのかも知れない。
いやともかく暗かった。全4巻、1巻のみ620円、2〜4巻は600円、集英社刊。ちなみにフランス語タイトルが "Le Château de Sable" と書かれていて、これはこれでそのまま直訳なんだけど、サブレと言われると何となくうまそうである。
この『砂の城』を原案にして、舞台を現代日本に移した昼メロが制作されたのだけど、ナタリーに相当する主人公が大場久美子ときたもんだ。勘弁してくれ〜。
外国からメールをもらって、英語で書かれた「砂の城」の情報は無いか、とのこと。一条ゆかり恐るべし。
また外国からメールをもらったけど、「砂の城の作り方を集めている」らしいので、ちょっと誤解のないように英語で書いておくことにしよう。
Sorry, this page does not concern with a sand castle, but a Japanese comic titled "Chateau du Sable" by one of the most famous comic artist, ICHIJO Yukari.
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