"Six String Samurai"

 舞台は架空のアメリカ合衆国。1957年にアメリカが核戦争の末にソ連(爆笑)に占領されていて、それから何十年後かたった後、という舞台設定。あ、ちなみにこの映画はごく最近のもので、別に'50年代反共バリバリ時代の映画ってわけじゃありません。要は出だしからしてシッチャカメッチャカ。アメリカ的なものはオールドべガスにだけ残されていて、キング・エルビス(大爆笑)がそこに君臨しているってな具合。そのキングが死んじゃって、跡目を継ごうというものが荒廃した北米大陸を歩いてベガスへと向かう、という話「らしい」んです。らしい、ってのがまた情けない話ですが、なにぶんキングがどういうものなのかとかいう話はまったく触れられていないので。

 すすきの茂る野原で母子が夜盗に襲われている冒頭。厚ぶちメガネに黒いスーツ、エレキギターを担いだ男が通りかかり、スラリと抜いた日本刀で夜盗をバッタバッタと切って倒す。母は死んだが、残されたチビガキはメガネ侍について旅をすることになる。侍の目的地はもちろんベガス。途中、わけのわからんボーリングトリオや「ほうれん草モンスター」(おいおい)などの刺客に狙われるが、剣とクンフー(おいおいおい)で窮地を脱する。刺客の親玉は「デス」と呼ばれる(JKみたいな帽子をかぶった)謎の存在。こういう説明をすること自体バカバカしくなるほど、話は意味不明です。

 で、じゃあこの映画って何なのかというとよくわからんのですが、きっとこの監督は'50年代文化(特にロックンロール)とチャンバラ時代劇とカンフー映画が大好きなんじゃないか、ということです。全編通して音楽はロックンロールですし、もちろんチャンバラシーンは満載(刀の使い方は中国っぽいけどね)。で、「ベストキッド」よろしく夕日をバックに太極拳っぽい鍛錬をしたりもします。途中のシーンで風力発電機が大量に回るシーンは、何かの時代劇にあった風車を連想させます。とにかく全体的に、'50年代とチャンバラへのオマージュというかパロディというか、そんな感じに仕上がってます。

 まあ変な映画ではありますが、とりあえず肩が凝らないしチャンバラや音楽がカッコイイので、損した気分にはなりません。ちなみにラストは細かく書きませんが、感動と爆笑(?)が交錯する何とも奇妙なものでした。


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