"CUBE"

 えーと、はっきりいって、すげー怖いです。

 話はスプラッター不条理劇というか、立方体の部屋が山ほど重なった『仕掛け』の中に、何故か人々が閉じ込められてしまうというものです。各部屋は6面すべてに隣へのドアがついていて移動可能ですが、中には罠の仕掛けられた部屋もあり、その罠がピアノ線みたいのだったり酸のシャワーだったり剣山だったりして、その辺がかなりスプラッタな感じです。

 登場人物は(冒頭でサイコロステーキになる人を除いて)6名。それぞれがさまざまな過去を持ちながら、それぞれにこの『仕掛け』から脱出するための役割を持っています。

 この映画の不条理たる理由は、この人々がなぜここに閉じ込められるようになったのかという経緯も理由もわからず、またこの仕掛けそのものの目的や全体像もわからないという点です。彼らは軍産複合体の陰謀だとか宇宙人だとか推測したり、あるいは無気力な技師が「この仕掛けには無駄な巨大プロジェクトみたいなもので、予算を消化するために無計画に作った無意味なものにすぎない」と言ったりもします。そういった比喩と、登場人物それぞれの人間的な特徴(暴力、悲観、怠惰、などなど)を合わせて、社会とか人生のようなものに対する漠然とした批判をしているのかも知れません。また、部屋の雰囲気は宇宙ステーションのようですが、壁の模様はステンドグラスを連想させ、教会のようでもあります。彼の国の人々は幾何学図形の連続に神秘性を感じるようなので、そういう暗喩もあるのかも知れません。出られる保証すらない膨大な部屋の連続と、仕掛けられた数々の残虐な罠は、ある種の「試し」ということも考えられるでしょう。

 結局彼らは(グループとしては)自滅の道を進んでしまいます。監督が描きたかったのは、結局「なまじ知識とか地位とかを持つものは、その時点でこの立方体の迷宮のようなところに閉じ込められた囚人のようなものなのだ」ということなのかも知れません。

 ちなみにこの作品、カナダかどこかの新鋭の監督による独立系作品です。それなりの補助はあったらしいのですが、何せ撮影セットは「立方体の部屋が2つ」あればよく、また出演者もチョイ役含めて7名と、非常に低予算で撮られたと想像できます。怖い映画は金じゃなくてアイデアですね、やっぱり。ビデオ版の最後には同監督の短編も収録されていて、こっちは「エレベータ1台」で撮った(やっぱり怖い)作品です。


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