「マッド・アバウト・マンボ」

 劇場公開時にFC東京がタイアップ宣伝を打ったという「だけ」で記憶していた映画。ちなみに公開時の邦題は「マンボ・マンボ・マンボ」という、また何にも考えてないだろうって感じのタイトルでした。

 舞台は北アイルランドの中心都市ベルファスト。主人公のダニーはカトリック教徒で、労働者階級の通うミッションスクールで、ヘタクソながらサッカー部のフォワードを張ってます。夢は地元のプロチーム「ベルファスト・ユナイテッド」(実在はしてないみたいです)に入ること。しかし、ヘタクソなだけならまだしも、ユナイテッドはプロテスタントの選手ばかりを獲得しているため、カトリックのダニーには遠い夢という状態なわけです。

 ところが、ユナイテッドが珍しくも獲得した外国人選手はブラジル人でカトリック。さらに、このブラジル人選手がインタビューで「サッカーはリズムだ!」なんてのたまうものだから、ダニーはブラジルのリズムを体得してプロ選手を目指すべく、ラテンダンス教室に通うようになります。そこで出会うのがDIYチェーンの社長令嬢ルーシー。最初は全然かっこ悪いダニーが、少しずつダンスの腕(足?)を上げていき、それとともにルーシーもだんだん彼に惹かれていくってな流れです。

 正直なところ、ストーリーは普通の「貧乏野郎が金持ちのお嬢様と出会って恋に落ちる」パターンで、目新しいところは全然ありません。重要な要素として描かれるサッカーとラテンダンスですが、サッカーについてはずいぶんいい加減な描写。いや、ダニー役のウィリアム・アッシュ(英国ではちょっとしたTVスターらしいです)のリフティングはさすがに英国人って感じなのですが、全体として見ると全然駄目。まさか北アイルランドのサッカーってこんなレベル?と思わず疑ってしまいますが、製作にアメリカも関わっているのでその辺がいい加減になってるのかも知れません。どちらかと言うとラテンダンスの方はそれなりに(「Shall We ダンス?」ほど精密にではないけど)描かれていて、途中のダンス大会で出てくるエキストラもきちんと踊れているようなのですけどね。

 敢えて関心を持った点というと、やはりベルファストという土地の特殊性でしょうか。地元の人たちにとっては、プロテスタントとカトリックのいさかいも日常の出来事ですし、英国軍がそこかしこに検問を設置しているのも普通の風景なのでしょう。北アイルランドのみならず、英国では労働者階級と中産・上流階級との対立もそれなりにあるようですしね。しかし、ルーシーがロンドンの大学に行こうか悩む描写もあったりして、やはりそういう状況に嫌気がさして街を出て行く人は多いようです。上述のブラジル人選手も、本音では給料が安いし不穏な情勢のベルファストでの仕事は嫌だと語るなど、ベルファストならではの描写というものがいくらか見受けられるのが面白いと言えば面白い。

 ふじもとはサッカーファンとして借りて見てみたものの、あまりサッカーファン向きの映画という感じではないですね。「シーズンチケット」や「ザ・カップ」の方がずっと共感できます。


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