"Ronin"

 押しも押されぬ名優ロバート・デ・ニーロ、今をときめくジャン・レノという2大スターによる、ジョン・フランケンハイマーのアクション映画。"Ronin" はまさしく日本の「浪人」を意味していて、冷戦下で大国のために働きながら今はフリーランスとして暗躍する主人公たちを現した言葉になっている。ただ、あんまり浪人的な悲哀やニヒリズムが画面からは感じられず、序盤と中盤に取って付けたように浪人の解説が入っているのが何とも浮いた幹事になってしまっているのが残念。

 舞台はフランス(リヨン、パリ等)で、土地土地の名所旧跡等が画面に挿入されるあたり、何となく「南フランス湯煙旅情殺人事件」っぽい感じもある。ストーリーは比較的凝っていて、ロシアから流出したらしい核兵器をアイルランド系テロリストが強奪しようとして、デ・ニーロとレノは(詳細を知らされずに)その片棒を担がされようとするのだが、実は強奪グループの中にロシア系の工作員もいて奪い合いになる、という感じ。

 適度にどんでん返しが入ったり、デ・ニーロ演じる元CIA工作員の使うテクニックの数々はなかなか見ごたえもある。また、リヨンおよびパリで展開されるカーチェイスは、リュック・ベッソンの "TAXI" に対する対抗心というか、本場米国のプライドがかかったような凄さがある。しかし、やはり肝心の「浪人の心の機微」みたいなものがあまり描かれておらず、また前述の「湯煙旅情」的画面構成に加えて、フィギュアスケートの元五輪メダリストであるカタリナ・ビットがゲスト的に登場しているあたりは、まったく意味不明といわざるを得ない。2大スターがなかなかに良い掛け合いをしているだけに、もう少しストーリーを何とかして欲しかったところである。


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