"Starship Troopers"

ロバート・A・ハインラインのSF小説(『ガンダム』の下敷きになったとも言われる)をポール・バーホーベン監督が映像化した怪(?)作。

話はある意味で単純で、昆虫型の侵略宇宙人から地球を守れってな具合で、若者たちが軍隊に入って壮絶な戦いを繰り広げるというもの。とはいえ、最初の入隊動機はまちまち……というか実にアメリカ的であって、大学の奨学金が出るからとか、市民権が貰えるからといったものである(時代設定としては「生まれついての選挙権」が否定され、兵役をこなさないと市民権が貰えないという状況!)。

一見すると、とにかく猛烈に金を注ぎ込んでバカっぽいSF戦争映画を作ったという感じがするのだが、映像の端々を見ると必ずしも好戦的映画とは言えないという気分になってくる。たとえば、作品中にたびたび挿入される軍の広報映像。「君も兵隊になろう!」とか、「虫を殺そう!」みたいなものだが、これはある意味で実際の戦争での(いささか集団ヒステリーを感じさせる)国威発揚的広報に対するパロディだと言える。

また、敵との交戦シーンはマシンガンや手榴弾での肉弾戦で胴体飛び散りまくりという、かなりスプラッタな映像になっている。この辺、原作で主人公らが「パワード・スーツ」という装甲をまとって戦うのとは大きな違いであり、一説には昆虫型宇宙人のCGに金を掛け過ぎてパワード・スーツを撮る金が無かったのではという話もある(実際、宇宙船などの特撮やCGはかなりチャチであるし、有名俳優もまったく出てこない)。これについて、バーホーベン監督自身は某雑誌のインタビューで「戦争ってのがいかにグチャグチャしたものかを映像で見せるために」あえて肉弾戦にしたと述べている。ハインラインの原作はあまりに戦争を美化し過ぎているということで、バーホーベン監督は原作に対するアンチテーゼとしての映画を作ったということかも知れない。

とりあえず、食事中や直後にはあんまりお勧めしない映画であることは確か。


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