上原多香子『Make-up Shadow』

 井上陽水の同名曲をカバーしたタイトルチューンを含むマキシシングル。

 で、正直に言わせて貰いますと、

全然駄目。

 まあボーカルはしょうがないとしましょう。そもそも上原多香子って、SPEED時代もメインボーカルほとんど取ってなかったはずですよね。SPEED自体がダンスメインでそれほど歌唱力に期待されてなかったわけですから、その歌唱力に何かしらの期待を抱く方がどうかしてます。

 じゃ何が駄目なのかっていうと、アレンジ。原曲から10年経過しているんですから、曲がりなりにも創作をして著作権で飯を食おうって人たちなら、10年分の進歩というか変化を期待したいわけですよ。ところが、何かダンス系なんですが80年代風な打ち込み臭がプンプン漂うだけのチープなアレンジ。いや、まあTommy february6みたいな(徹底して80年代臭さをプロデュースしていく)アプローチもあるんでしょうけど、それにしては中途半端。ボーカルが駄目だってわかってるんだから、それをカバーするようなアレンジしてみろや!とまあ、怒りさえ感じちゃうわけですよこれが。

 『Queen's Fellow』(松任谷由実のトリビュート・アルバム)なんか聞いてると、それぞれのアーティストによる(原曲とは一風異なる)楽曲への取り組み方とか、原曲へのオマージュみたいなものが感じられて、カバーというものの価値というものを実感できるのです。が、この『Make-up Shadow』についてはまったくそういうものが感じられません。正直、やっつけ仕事でしょこれ?と言いたくなるほどスカスカ。

 加えて、このマキシは悪名高きエイベックスのCCCD(コピー・コントロールCD)なんですよね。まあふじもととしては未だかつてCCCDに「コントロールされた」ことが無いのですが、それはそれとしても音をわざわざ劣化させたり、普通のCDでまともに聴けるかどうかは保証しないってのは、酷いシステムですよね。で、そんなものを導入する大義名分は「著作者の権利を守る」らしいんですが、こんな安直なやっつけ仕事のカバー曲に対して「著作者の権利」ってのは何なのよ??と非常に疑問に思ってしまいます。CDが売れなくなっているのって、コピーがどうとかの問題じゃないよなあ……という実感が強く心に残った1枚でした。


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