『歌謡曲日本一周』

 いわゆる「ご当地ソング」を集めた2枚組のコンピレーションもの。さすがに全都道府県とはいかず(一方でダブってる都道府県もある)合計36曲から構成されてます。

 DISC1の出だしはSLの汽笛から山口百恵の「いい日旅立ち」と、まあまあいい感じの流れ。北海道が「知床旅情」と「襟裳岬」で、まあこの辺も選曲は無難なところだけど、なぜ「襟裳岬」は森進一でなく吉田拓郎なのでしょう。「演歌日本一周」ではないから?

 本州に入り、岩手は「北上川」(岡崎友紀)。聞いたことがあるような無いような……仙台の「青葉城恋唄」(さとう宗幸)もまあ妥当なところでしょう。埼玉の「秩父・夜祭り・音楽寺」ってのはどうなんでしょうねえ?さいたまんぞうの「なぜか埼玉」の方が圧倒的にメジャーでは?千葉の「とりあえずNARITA」(ハイ・ファイ・セット)はかなりこじつけ臭い。だって歌の内容はそのまま海外に行くんですもん、全然ご当地じゃないですよこれ。どうせなら「KASHIWA マイ・ラブ」(爆風スランプ)とかあるじゃないですか。東京は曲がありすぎて大変だけど、まあ「東京ららばい」(中原理恵)は許容範囲。しかし、静岡・山梨を「FUNK FUJIYAMA」(米米CLUB)にするのは余りにも無茶でしょー。

 DISC2の出だしは愛知の「DA.GA.NE.」。歌謡曲系ラップの「DA.YO.NE.」をカバーしたご当地ソングが各地で作られたうちの一つですが、こんなどうでもいい曲でなくても、名古屋ならいくらでもご当地ソングがあるでしょうに。つボイノリオの「名古屋はええよ!やっとかめ」とか(笑)。大阪・京都は選曲が難しいけど、上田正樹の「悲しい色やね」はあまりに無難すぎて逆につまらない。奈良で「旅愁〜斑鳩にて〜」(布施明)、滋賀で「琵琶湖周航の歌」(加藤登紀子)を持ってきたのは秀逸。でも「琵琶湖〜」ってこれ歌謡曲ですか???

 山陰は厳しいかと思ってたら、両県とも採用。でも鳥取の「砂丘」(鈴木雅之)ってこれ本当に鳥取砂丘の歌ですか?はなわの「佐賀県」はあまりにベタ。というかこの曲がヒットしたせいで出てきた企画じゃないですかね、このアルバムは。長崎の「精霊流し」(クレープ)は秀逸なご当地ソングだと思いますが。で、締めは森高千里の「ロックンロール県庁所在地」(笑)。

 まあ全体を見て、はなわの「佐賀県」が売れて、みうらじゅんの「勝手に観光協会」みたいな企画もうけて、そこでソニー系の版権が使える範囲でまとめたかなり無理な企画、という印象はぬぐえません。上述の「襟裳岬」にしても拓郎は当時ソニーだった(今はフォーライフ)ですしね。演歌が却下なら、城之内早苗の「金沢の雨」は入らないはずだし。あと、「中央フリーウェイ」がユーミンでなくハイ・ファイ・セットなのは、人によっては後者の方が自然に感じるらしいので微妙なところですが、前者が東芝EMI、後者はアルファレコード→版権がソニーに移ってる?っぽいので、その辺もちょっとうがった見方をしたくなる一因です。

 もしこういう枠をとっぱらって有名どころで全都道府県並べたら……と思って考え始めたんですけど、駄目ですね。北海道や東京・神奈川・大阪はたくさん並ぶんですけど、それ以外はスカスカ。


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