INS64は本当に「お得」なのか?

前々からおかしいおかしいと思っていたのだけど、相変わらずおかしいのがNTTのINS64(いわゆるISDNですな)の広告である。何がおかしいのかというと、それは「アナログ2回線を引くよりお得です!」という売り文句。

NTTが「お得」の根拠として常に挙げているのが、以下の基本料金に関するコスト計算。

「ね、月々670円もお得でしょ?」というわけである。ちなみに通話料金は(パケットモードなどを使わない限り)どちらも同じなので、定額部分がコスト差を表すというのは正しい。

しかし、だ。 2回線をどのように使うかによっては、これ以外の定額料金が月々必要なケースもあるのだ。 アナログ2回線でもINS64でも、つながった2台の機械から同時に『発信』が可能という点は同じである。だが、特に問題となるのが「2台の機械で同時に『着信』をしたい」というケース。たとえば電話とFAXとか、2世代同居のケースが考えられる。

この場合アナログ2回線ならば、それぞれの回線に最初から電話番号があるので、電話とFAXをそれぞれの回線に接続するだけで同時に『着信』ができる。だが、INS64で基本料金を払っているだけでは、「両方の機械のベルが同時に鳴る」か、さもなくば「どちらかが代表扱いで電話を受ける」しかない。発信側がINS64ならば、繋がっている機械を区別する番号を指定できるのだが、相手がアナログではそうもいかない。

INS64でも、それぞれの機械に別の電話番号を付けるサービス(ダイヤルインサービス)はある。しかし、電話番号を1つ追加するごとに900円の追加料金が月々掛かってしまうのだ。 2つの機械を繋ぐときには、どちらかには「最初からある番号」を付ければよいので、あと1つ分の番号のために900円が必要となる。つまり、

ということで、逆にINS64の方が230円高くなってしまうのだ。

さらに言えば、INS64に留守番電話やG3FAXを接続するときにはどうしてもTAという機器が必要になり、この価格も万単位になる。 INS64に直接繋げる留守番電話は無いし、普通のデジタル電話や G4FAXは高くて手が出ない。こういった「初期投資」の部分も忘れてはならない。

註:最近、ISDN電話 S-2000が発売になったが、これには留守電機能が付いている。 29,800円でナンバー・ディスプレイにも対応しているので、悪くない価格だ。

アナログ回線の基本料金は前述した通り地域ごとに異なるので、ダイアルインサービス付きでもINS64の方が安い可能性もあるだろう。また、アナログ回線でプッシュホンサービスを必要とするなら追加料金390円が掛かる(INS64は最初からプッシュホン回線)。また、そもそもアナログでは64kbpsとか128kbpsの通信が出来ないので、インターネットを高速にやりたいという人にはINS64が必要となるだろう。ただ、いちがいに「INS64はアナログ2回線よりお得」とは言えないのであり、 NTTの広告はそういった点をスッ飛ばしているよなあ、と思えるのだ。

INS64の導入を考えている方々には、この辺の計算をしっかり考えて欲しい。また、NTTは単に広告を是正するとかだけでなく、ダイアルインサービスを安くするとか、INS64の基本料金を安くするなどして「本当に2回線引くよりも安い」ようにして欲しい、と思う今日この頃である。

とかなんとか言ってふじもとの家の電話はISDNだったりするんだこれが:-)

fujimoto@eva.hi-ho.ne.jp

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