男女混合スポーツの可能性。


 高知県の橋本大二郎知事が、高校の硬式野球大会に女子選手を出場させることを認めて欲しい、と高野連に要望したという報道があった。で、高野連の回答は案の定「駄目」。安全が確保できないからという建前らしい。しかし、真夏の炎天下で連日試合をさせて安全とは片腹痛いし、高校生だとまだまだ個人差が大きいので、男子同士だから安全というわけでもあるまい。一方で、大学野球ではすでに女子選手の登録・出場が認められており、実際の出場実績も複数例ある。要するに安全云々は根拠が薄弱なのだ。まあ、この辺までは従来の「何だかなあ」の気分で考えていた。

 で、ふと思ったんだけど、じゃあ男女混合でやるスポーツって何がある?まず、プロ/世界レベルになるとほとんど皆無であると言ってよい。これは、男子のトップアスリートと女子のトップアスリートを比べればどうしても性差が勝敗や記録に影響するからだろう。プロ/世界レベルで男女が同じ競技に参加する例は、ふじもとが思いつく限り以下の通り。

こんなもんだろうか。直接筋力を必要とするわけではないチェス(変に思う人もいるかも知れないが、チェスは国際的にスポーツとして認知されている)や将棋・囲碁なども男女はカテゴリーが分かれているようである。思考の能力や質にも男女差があるということか?あるいは単に文化的な障壁なのか。

 バレーボールは人数が多いものの事情はテニスに近いと思われるが、なぜか男女混合カテゴリーは無い。体操の団体種目や陸上・水泳のリレーなどは、男女の人数を揃えれば何も問題無さそうなものだが、やはり混合カテゴリーが用意されていないようだ。無理に混合する必然性が無いということか、あるいは能力のある男女を複数名揃える事自体が参加への障壁になるということだろうか。テニスや卓球は貴族の娯楽を起源にしているようだし、ダンス競技は明らかに「紳士が淑女をエスコートする舞踏」をベースにしているだろうから、歴史的に男女ペアという形が自然に形成されていたとも言える。

 

 フットボール系のスポーツはもともと激しい身体接触を伴うし、身体能力が極めて大きな比重を占めるので、そのままのルールでは混合カテゴリーを作るのは確かに無理だろう。特にサッカーは長らく労働者階級の、男のスポーツとして認識され広まってきた経緯もある。しかし、サッカーから派生したフットサルでは、身体接触をルール上禁止し、大会ごとに「女子の最低人数を規定」「女子の得点を倍に数える」などの調整を行うことで、男女が一緒に楽しめる環境を作ろうと努めているようだ。またWebをつらつらと見ていると、最近盛んになっているXゲームの種目の中には、女子選手の絶対数が少ないために男女混合の競技会が行われることがあるという。女子選手はかなりの不利を味わうそうだが、それでも門戸を開いているのは現代スポーツならではのことだろう。

 最初に問題とした野球はどうだろうか。野球を楽しみたい女性も少なくないだろうが、それでも女子のみのリーグを継続して維持するほどの競技人口を確保するのが難しいようだ。一方、リトルリーグなどでは少子化や他スポーツとの競合で(男子も含めた)競技人口が減っており、女子選手が男子とともにプレーするのは当たり前であるらしい。プロ野球はかつて存在した「女子は駄目」という条項を廃止し、また日本野球連盟も「クラブチームは男女問わず登録できるよ」と説明している。前述した通り、大学野球でも一部で門戸が開かれ、出場実績が出来ている。となれば、高校でも(男子に混じってでも)野球をしたい女子選手はいるだろうし、リトルリーグからプロ野球まで一貫して門戸を開けばそうした選手に希望を与えることにもなる。ルールや運営上の困難もあるだろうが、高野連には「教育的見地」に立って多少の不利は看過し、門戸を開いて欲しいと思う次第。


fujimoto@eva.hi-ho.ne.jp

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