優勝争いを中継しない在京テレビ局。

毎週日曜日、東京中日スポーツ(以下トーチュウ)の芸能欄に、大変辛口のテレビ番組批評が載る。島野功緒氏という放送評論家が執筆するコラムで、親父とOLが1週間の番組についてベスト・ワースト5を挙げて批評するというスタイルだが、見るたびになるほどと思えることを書いている。(トーチュウでは、この他に大相撲本場所のみ連載される「私は見た!」というコラムが出色である。閑話休題。)

その島野氏が先日、毎日新聞夕刊の第3面を大きく割いた批評欄に登場し、「首位決戦たる横浜〜中日戦を放送しなかった在京キー局、特にNHKは猛反省すべきである」という主旨の批判を書いていた。先週のトーチュウでもコラムで同様の意見を述べていたそうである。島野氏の意見はまったくその通りで、ふじもとは全面的に賛同する。

首位決戦だけではない。マジックが点灯した後も在京キー局は横浜戦をほとんど扱わず、幸いにも神奈川に近い(しかもUHFアンテナが立っている)我家ではかろうじてテレビ神奈川を通じて対ヤクルト戦を見ることができたのだが、テレビ神奈川が届かない地域の人たちはほとんどどうしようもなかっただろう。そして、そのとき在京キー局は「3位讀売」と「5位広島」の、まさにどうでもいい試合を中継していたのである。

在京キー局にもいろいろと理屈はあるのだろう。しかし、メディアはスポーツに関して「実力と注目度に見合った扱い」をするべきであると思うし、ときには讀売戦の中継を潰してでも扱うのが筋だろう。実際、去年や今年の横浜は実力も注目度も十分にあったはずだし、ようやくTBSが中継した優勝決定戦においては平均15パーセント、瞬間最大 30パーセントを超える視聴率を挙げたというのだから、実際に注目されていたのだ。もちろんこれは、在京キー局が今まで横浜をほとんど取り上げなかった状況でいきなり中継した時の数字だから、今後コンスタントに横浜戦を中継していけば選手の知名度も増し、視聴率のさらなる上昇も考えられる。成績に応じて中継数が増えれば、選手も「強ければ注目される」ことを認識するだろうし、そうなればより高いレベルでの試合が期待できる。つまり、今やプロ野球の活性化もメディアの扱いによるところが大きいと思えるのだ。

これはもちろん、在京キー局だけの責任ではない。プロ野球の活性化はプロ野球機構の責任でもあるし、Jリーグやメジャーリーグが実践しているように機構が放映権を一括管理して各球団に配分すれば、テレビ局も中継カードの選択がしやすいし各球団の財政も安定するはずだ。しかし、今の(讀売の太鼓持ちのような)プロ野球機構が、しかも一見プロ野球人気が不動であるように見える現状で、このような大々的な改革をするとも思えない。また、デジタル衛星放送(CS)があるのだからそれで見ればよい、という意見もあろう。とはいえ、CSはまだ特別と言えるような設備を必要とするし、その他のコストも掛かる。 F1やプロレスのようなマイナースポーツならいざ知らず、国民的スポーツを自負するプロ野球がファンに対して「見たけりゃCSに加入しろ」と言うのだろうか。ちなみに、ワールドスポーツを自負するサッカーに関して、国際サッカー連盟は「ワールドカップの中継が有料放送のみに限定されないよう」今後放映権料の抑制などを考慮するそうである。

在京キー局およびプロ野球機構には、ぜひとも「讀売ベッタリ」の状況を改善し、必死で戦う選手たちに報いる扱いをしてもらいたいと思う今日この頃である。


fujimoto@eva.hi-ho.ne.jp

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