讀賣新聞12月3日付「異見小見」通信ネットワークの盲点


 同論説ではインターネットの急速な普及を取り上げ、その中にある問題点を取り上げている。が、なんというかこの問題点が何とも間抜けである。
 曰く、「ネットワークを経由して買い物をしたからといって、結局品物自体は普通の物流ネットワークを使わないと配送できない。ネットワークでの買い物によって激増する購買量が、今なお脆弱な物流ネットワークに一気に流れ込んだらどうするのか」ということらしい。で、

「健全な常識を持ち合わせた人ならばこのことに気付いて慄然とする」

はず、らしいのだ。

 ちょちょ、ちょっと待ってくれ。

ネットワークは買い物専用のものなのか?

ネットワーク経由で買い物をするからといって、そこまで購買量が激増するのか?

ネットワークで買い物をすることで、逆に物流が減るということは考えないのか?

 これらをもうちょっときちんと見てみよう。

  1. ネットワークは買い物だけをするものではない。在宅勤務・在宅医療などで、今まで「人が出向かざるを得なかった」ことが家庭内で可能になる。すなわち、旅客輸送を減少させるファクターとなる。
  2. ネットワーク経由で買い物をするために財布を緩めやすくなり、購買量が増えるという説を唱える人もいる。しかし、同様にキャッスレスで購買するカード支払いでも、それほど購買量が増えるわけではない。増加のファクターとはなるにせよ、溢れるというほどではないだろう。また、将来的には何かを購入するたびに「電子銀行」のようなものを経由して決済することになると思うが、このとき自動的に預金残高を照会・表示する仕組みにしておけば、逆に今より財布の紐が堅くなる可能性も考えられる。
  3. ネットワーク経由の買い物によって、「買い物に出かける」必要も無くなり、前述したような旅客輸送の減少ファクターとなり得る。さらに、今までは消費者が個別に車やら何やらで運んでいたものも、宅配便による巡回輸送となり、これまた道路交通量を減少させるファクターとなり得るのではないだろうか。

 この他にも、新聞・雑誌・書簡などの電子化によってこれらの配送が物流から消える(少なくとも減少はするだろう)ことが考えられるが、まあこれは元々それほど大きなファクターではないだろう。

 本人認証、個人情報保護、通信帯域の拡幅など、通信ネットワークに解決すべき点がなお山積しているのは確かである。また、物流ネットワークが今もなお脆弱であることも筆者の指摘する通りだろう。だが、以上に指摘した通り、この論説はどうも誤解と早合点によるものに思えてならない。筆者のいうところの「健全な常識」って奴が何を指すものかは書かれていないが、

「健全な思考能力」

を持っていればこのくらいのことはすぐに思い付きそうなものではないだろうか?


fujimoto@eva.hi-ho.ne.jp

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