新聞記事の紹介
産経新聞(2006/10/03)

光れば・・・がん細胞 クラゲ遺伝子を活用

 がん細胞だけで増えるようにしたウイルスにクラゲの蛍光遺 伝子を組み込み投与すると、がんが転移したリンパ節が光り正 常な部分と区別できるというマウス実騒結果を藤原俊義岡山大 助教授(消化器・腫瘍外科学)らがまとめ、2日発表した。

 がんを切り取る場合、転移したがんの範囲が正確に分からず、 転移の可能性があるリンパ節は正常な部分も含めてすべて切り 取ることが多い。この方法は外科手術に役立つのではないかと いう。 (右:光って見えるがん、左円部分:がんが転移し光るリンパ節)

 藤原助教授らは、風邪の原因になるアデノウイルスに遺伝子 の一部を組み込み、がん細胞だけで増殖するようにしたウイル スを開発。これにクラゲの蛍光遺伝子を組み込んだ。ウイルス が増えた部分は高感度カメラで光ってみえる。
 藤原助教授は「多くのがんに応用できると思う。がん細胞で 増殖、細胞を破壊する作用もあり治療にも使えるだろう」と話 した。研究結果は米医学誌ネイチャー・メディシンに発表した。

産経新聞(2006/09/17)

便内の細胞 DNA検査
がん発見率大幅向上

 大腸などの消化管の壁からはがれ、便に含まれる細胞のDNAを調べる ことで、がんを効率よく発見する方法を松原長秀岡山大助手らが開発した。 横浜市で28日から開かれる日本癖学会で発表する。  松原助手によると、米国の統計では、現在の便潜血反応検査で見つかる 大腸がんは最大2割程度。この方法は8割程度になると期待できるという。  松原助手らは、太腸など消化器がんの患者らの細胞を調べ、がん細胞で は遺伝子に特定の分子がくっつくメチル化という現象が起きていることを 突き止めた。大腸がんの場合は、6力所でメチル化が起きているケースが 多かった。  約170人の患者の便で、メチル化した部分を取り出す化学処理をした。 すると6力所のうち何カ所がメチル化しているかを把握できた。この方法で、 がんかどうかを判断できるという。  松原助手は「ごくわずかの便があればよく、胃がんなども見つけることが できる。太腸がんは早期に発見できれば、ほとんどは治すことがでぎる」と 話している。1〜2年で実用的な検査ができるようにし、5年程度で簡単な 検査キットにしたいという。

産経新聞(2006/09/05)

胃がんの危険度 ピロリ菌で5倍
  (厚生省研究班)

 へリコバクター・ピロリ菌に感染している人はそうでない人より5.1倍 胃がんになりやすく、萎縮性胃炎や毒性の強い菌の感染が重なると 危険度が10倍以上に高まるとの疫学調査の結果を、厚生労働省研究班(主任 研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が4日発表した。
 ピロリ菌は40歳以上の日本人の70%以上が感染しているとされ、過去の調 査では危険度は高くても3倍弱だったが、考えられていた以上に関係が深い ことが示された。
 ただ、研究班は「胃がんは喫煙や食生活による影響も非常に大きい」と指摘。

ピロリ菌を薬で除菌する冶療に関しては「副作用や胃がん予防効果が未知数な ため惧重に行うべきだ」としている。
 研究班は、岩手県や長野県など9地域で、40〜69歳の男女約4万人を平成2 年から15年間追跡調査。胃がんになった512人の保存血液を使って調べた。
 このうち94%がピロリ菌に感染。感染者は非感染者に比べて5.1倍胃がん になりやすく、CagAという遺伝子を持ち毒性の強い菌の場合は危険度が 12.5倍に高まることが分かった。
 また萎縮性胃炎を起こしている人は健康な人より3.8倍胃がんになりやす く、ピロリ菌にも感染していると危険度が10.1倍に跳ね上がった。