再び離脱

      春になって全身のスキンケアーから開放され、だいぶ治療も楽になっていた。
     生活も妹の助けをほとんど借りず、ひとりでこなせるようになっていた。
     それでも、顔と首、手首に肘の内側、膝の内側がいつまでも頑固にグチャグチャ、
     ポロポロが続く。色素沈着も残っていて、全身が黒ずんでいた。けれど、倦怠感も
     なくなり、妹と2人で、昼間ぼーっとしている時間がもったいないと感じ、
     お弁当でも作って配達してみようか。とか、なにか片手間で、おこづかいでも
     稼ごうか。などと前向きな考えが、どんどん浮かんできた。
     洋服を買いに行ったり、ランチを食べに行ったりすることもできるようになった。


      G.Wにはみんなで山中湖へ ドライブに出かけた。楽しい1日だった。
     その直後、異変がおきる。
      翌朝、起きると顔がむくんでいた。
     その後もいっこうに良くなる気配もなく、手足を掻き壊し、顔と首も傷だらけ
     になってしまった。


      そして、7月の半ば頃にカウンセリングを受けることにした。
     「紫外線にあたったからです。」とカウンセラーの1人が教えてくれた。
     「薬物離脱が終わっても回復期に無理をしてはいけません。」
     「皮膚をこれ以上壊す前に、ステロイドを微量使いましょう。」と専属の医師が
     言った。私はステロイドを使う事に乗り気ではなかったが、ここまできれい
     になったのに、というあせりもあった。
      リンデロンV・Gを保湿剤の0.5%入れたものをひどい所だけチョコンと塗ること
     にした。微量なので、副作用はないと聞かされていた私は、安心してそれを
     使った。


      海の日の連休には、みんなで千葉の勝浦方面へ泊まりに行く計画もたてていた
     ので、ボロボロで行きたくなかった。
     微量のステロイドの入った保湿剤は、見る見る間にボロボロの肌を修復して
     くれた。この旅行から帰ってくるまで、と期限を決め、使うことにした。


      エイっとそれを止めて次の日のこと。こんなに微量で、10日あまりしか使って
     いないから、副作用なんて絶対にありえない。
     そう信じていたのに、真っ赤にむくんだ顔や首、おまけに付けていない所までも
     かゆくなって、ほとんど全身ドバーっと出てしまった。月初めのステロイドを
     使う前よりひどくなってしまった。
     「離脱だ!」
     ショックだった。「またやり直しか。」
      私は、地獄に再び突き落とされたのだった。どん底だった。


      症状は前回と全く同じだった。ただ元に戻るのにそんなに時間がかからなかった。
     皮膚の損傷も少なかった。
     しかし、精神的には前回よりもつらかった。なぜなら離脱の体験はもう絶対に
     したくなかったし、思い出すことすらしたくなかったからだ。