アトピー地獄
はじめてアトピーと診断されたのは、産まれてすぐだったとか。喘息とそば粉
アレルギーもいっしょにカルテに書き込まれまれたらしい。
親は、そんな私のために、家と病院を行き来して「どうしたらいいのか?」
と試行錯誤の毎日だったらしい。
苦しい喘息やいつも引っかき傷だらけの体は、記憶にはある。
私が苦しい声をあげれば、親が飛んで来てくれた記憶もある。
それでも、そんな親の苦労を知らずに、天真爛漫に幼少時代を送り、大きく
なった気がする。そして、小学校3年ぐらいには、喘息がでなくなった。
アトピーは依然でていたものの、1年に何回か近所の主治医で軟膏をもらう程度
だった。
高校時代は、自分がアトピーであることさえ 忘れて青春を謳歌していた。
首やひじの内側の傷も、まったく気にならなかったし、むしろニキビで悩んでいる
友達にニキビがないと、羨ましがられていたほどだった。
こうして、彼氏やたくさんの友達に囲まれながら、毎日をおもしろおかしく過ごし
てきた。
20才の秋、それは突然やってきた。
その時私は、一人暮らしをはじめたばかりで、昼はOL。夜は、塾の先生。夜中は、
ふつうの20才の女の子として、友達と遊びに行ったり、彼氏に会ったりと、
今じゃ考えられないパワーを発揮していた。
ある日、体中かさかさして、ものすごいかゆみを感じた。
いつものように夏の日焼けだろう!と知らん振りをきめ、またいつものように、
忙しいスケジュールをこなしていった。
けれども、1週間たってもかゆみがおさまらないし、引っかき傷の範囲も広がって
いる。顔がほてったようになり、がさがさしている。
身体は疲れているのに、夜はかゆみのせいで寝付けない。とてもイライラする。
服を変えてみる。シャンプーを変えてみる。変化なし。
「アトピーのはずがない。いつもならとっくに治まっているんだから。」
「これは病院に行くしかない。他の病気かもしれない。いや、そうに違いない。
なんとかしてもらえるかもしれない。」
と、すがるような気持ちで大学病院へ行く。
この年でアトピーなんかにかかるはずがない。そう思い込みたい気持ちも
知らず、診断結果はいとも簡単にアトピーとでた。
「薬を塗ればまたきれいにもどれる。」
そして軟膏を何種類か処方してもらう。祈るような気持ちで、先生に言われた通り
にていねいに塗る。何日かたつと、良くなったように見えた。父から
「ステロイドの軟膏を塗らないほうがいいよ。」
と言われたため控えるようにした。しかし、すぐに大量に使わなければならなく
なった。前にもまして赤みがひどく、とても恥ずかしくて仕事や遊びに
なんか行けなかった。塗って良くなって止める。止めては悪くなって塗る。
その繰り返しをするうちに毎回段々とそして確実に、ひどくなっていった。
ある朝、いやーな感じがして、鏡を覗き込む。
声にならない叫びをあげた。
何とも言えない醜くなった私がいた。
真っ赤どころか むくんで1.5倍に大きくなった顔、血だらけでぼこぼこしていて、
ザラザラしてごわごわして・・・
「なによこれ?何が起きたの?どうして?」
そして、アトピー地獄が始まった。

