その年の夏は、雨が多くじめじめした天気が続いた。 私はまたしても全身ボロボロになってしまった。黄色ブドウ球菌の感染症だ。 黄色い汁にパンパンにふくれた炎症部分。とくに顔と手がひどかった。 ぐちゃぐちゃだった。 わたしは前回の教訓も忘れ、抗生物質のゲンタシンを塗っていた。ところが 全くそれも効かなくなり、調べたところMRSA(耐性菌)が付いている事が 分かった。 もちろん死を覚悟するほど落ち込んだ。2週間生きる気力もなく、ゾンビ状態 (見た目も)だったが、ある人が私に言ってくれた。 「健康な人間にとってMRSAもそこらへんににある細菌も同じだよ。薬が効か ないだけで。」 私は、菌に対する恐怖をすて、悩む事をやめた。そして2人の子供を母に 預けて、妹と山形県にある 蔵王温泉へと向かった。そこの泉質は強酸性。なかば 賭けだったが、5日間の温泉旅行は大成功だった。私に取り付いていた菌はいなく なったのだった。そして、他にも収穫があった。リラックスの仕方が少し分かった。 何も考えず、何もしない時間も大切だ、という事を知った。 そして大自然の中で、自分もこれの一部だと想像しているうちに、何とかなるような 気がしてきて、楽になれたのだった。