ステロイド地獄

      毎日毎日、ステロイドを全身にくまなく塗る。いや塗ったくる。新しい洋服を着て
     どこか出かけたいけれど、薬で洋服がだめになってしまう。髪の毛もばっちりきめた
     はずなのに、ベトーっとしてしまう。いつの間にかおしゃれをすることから
     遠ざかり、外出も必要最低限しかしなくなっていた。ひどい掻き壊しに、ひどい
     かゆみ。いつの間にか、ひとの目を見て話をすることができなくなっていた。
     それでも治ることをあきらめず、来る日も来る日もせっせと薬を塗っていた。


      病院をいくつ変えただろう。けれどどこへ行っても治療方法は同じだった。
     そのうちにステロイドがなくては、生きていけないとさえ思うようになった。
     医者は、すべて完治はありえないと言い、これをつけてさえいれば、ある程度コント
     ロールできるからと言った。


      いつのまにかステロイドに依存するようになり、人を信じなくなってしまった。
     友達を避け、情報に耳を傾けず、部屋から一歩も出ない日の方が多くなった。
     もともと人目を気にしすぎる私は、すべてに対して排他的になっていった。
     「なぜ、私だけがこんな目に会わなきゃいけないの?」
     「どうせ誰もわかってくれない。」
     発狂しそうになるほどのかゆみと、汚らしい見たくれと、不眠やら、なんやらで、
     私のストレスはいつも最高潮に達したまま。
     数少ない心を許せた家族には、いつもイライラをぶつけてばかり。
     何年もそんな生活を送り、確実にアトピーだけでなく精神的にも今振り返れば、
     ひどく病んでしまったことがわかる。


      お払いをしてもらったり、霊能者に見てもらったり、いつかはきっと宇宙の彼方
     から宇宙人が来て治してくれると思ったりと、現在の医療に絶望した私は、神様仏様
     キリスト様が、救いの手を差し伸べてくれるのではないかと思ったりもした。
     「誰か助けて!」と声にならない叫びを聞きつけてくれるのを待っているか
     のように・・・


      たくさんの民間療法を薦められたが、ステロイドとの併用では治るはずが無いこと
     も知っていた私は、何もする気になれなかった。
     それでもステロイドを止めることなんか、これっぽっちも考えていなかったので
     ある。いや、止めたらとんでもないことになることを知っていたから・・・・。