ジャズはアメリカの音楽である。正しくはアメリカで発生した音楽である。そのジャズが我々日本人も含めて広く世界に受け入れられるようになった理由を考えてみることにします。我々がジャズを楽しんでいく上で考えなければならないことだと思います。

ご存知のようにアメリカのジャズは黒人霊歌にそのルーツがあり、ゴスペル、ブルース、スイング、ビバップ、クール、モダン、モード、フュージョン、アシッドとさまざまにそのスタイルを変え現在に至っています。時の経過とともに起きたこの変化そのものにグローバルに受け入れられるようになったひとつの理由があるように思います。日本においてジャズが広く受け入れられるようになったのはやはり戦後の混乱期にそれまでの体制から解き放たれ、ジャズの自由な音楽スタイルが世相に当てはまったということではないでしょうか?また、アメリカ軍の進駐も大きな理由になっています。

一方、アメリカのジャズは言い換えればアメリカン・ニグロの音楽であるということも言えますので黒人の歴史を語らずにはジャズを語ることはできません。現在、40−50歳代の人々がジャズに興味を持ち始めるようになったのはアメリカが外にベトナム戦争、内に黒人の公民権運動を抱えて悩める大国であった当時のことです。ジャズの歴史でみるといわゆるクールジャズの発生期にあたり、反戦あるいは黒人の非暴力抵抗とも無縁ではないようです。当時の様子は今でも色々な記録資料や映画等のメディアで伺うことができますが、直接的な当事者でない我々にとっても当時のすさまじい社会状況を目の当たりにすることができます。

お薦めは、南部での公民権運動さなかのKKKとFBIの捜査を描いた「ミシシッピ・バーニング」や50年代モントゴメリーでのバスボイコットを描いた「ロングウオークホーム」があります。それ以前の40年代頃のジャズシーンを彷彿とさせるものに「カンサスシティー」などもあります。