「・・・・・・つまんない」
ショウウインドウを眺めながら、私は溜息を吐く。
あいつが「本部にちょっとした野暮用」だなんていうから、学校で別れて、待ち合わせの場所と時間を決めたんだけど、中途半端な時間を一人で過ごすのって、結構苦痛。
勿論、好きで一人で居るワケじゃない。
ヒカリは鈴原とデート。
マナとマユミは、「幸せ者のそばなんかいたくないわ!」と見捨ててくれた。
「・・・・・・やっぱり、あいつにくっついていけば良かったかな?」
私は、もう一度溜息を吐いた。
土曜日の午後ということも手伝って、待ち合わせ場所として有名なその噴水の前には、たくさんの人が居た。
「う〜ん、早く来すぎちゃった」
思わず呟きが漏れる。
あいつからもらった(正確に言えばぶんどった、だけど)左手首のごついダイバーウォッチは、約束の時間の30分前を示している。
あいつ、今頃どこにいるのかな?
もうそろそろ本部は出たよね?
今頃は電車に乗ったところかな?
ケイタイに連絡入れてみようかな?
そんなことをつらつら考えていたとき。
「カ〜ノジョ! ひとり?」
あ〜あ、変なのが来た。
いかにも軽そうな男が三人、私を取り囲む。
「暇なら俺らと遊びに行かない?」
ナンパ野郎はお呼びじゃない。
そう思ったから、黙って無視。
「あ、ひでぇ。シカトすることないじゃん」
「お前が怪しいから怯えちゃってんじゃねーの?」
「え〜、そんなことないって」
「ね、カノジョ! カラオケでもどうかな?」
五月蠅い。
「・・・・・・人と待ち合わせしてるから」
私は不機嫌なカオを隠さずに言う。
「待ち合わせって女? 男?」
「男」
私ってば、ホントに良くできた人間よね。
こ〜んな奴らに、ちゃんと答えるんだもの。
「ええ? それってカレシ? だとしたら最低だな。こんな可愛い子待たせるなんて」
「そんなヤツ放っておいて、俺らと行こうよ」
ああ、もう五月蝿いわね!!
あんたたちにとやかくいわれる筋合いはないの!!
「Fahr zur Holle(さっさと消えなさい)!!」
私はドイツ語で怒鳴る。
「最低なのはあんたたち!! 私を待たせてる男は、あんたたちなんかより百万倍もいい男なんだから!! あんたたちみたいなのは大っキライなの!! 私の前からさっさと消えなさい!!」
最初からこうすれば良かった。
私の剣幕、というよりも、判らない言葉で言われたせいだろうけど、ナンパ野郎どもは、すごすご消えていった。
周囲の人達の視線・・・・・・特に男の視線が、私に集まる。
そりゃそうよね。
腰まである手入れの行き届いた蜂蜜色の髪は、それだけで十分目立つ。
自分で言うのもなんだけど、顔の造作だって、そんじょそこらのアイドルじゃ、束になったって敵わないくらいのものだし。
ユーラシアン
スタイルだって、欧亜混血だから、西洋人と東洋人のいいとこ取りだし。
そんな極め付きの美少女が、突然ドイツ語で叫んで、ナンパ男を撃退したんだもん。注目もされるわ。
でも、その視線がとても不愉快に感じる。
嫉妬と羨望、珍しいものでも見る目つき。
それは、『外側』だけしか見ない視線。
・・・・・・良く考えたら、昔からそうなのよね。
整った容姿。
13歳で大学を卒業した『天才少女』という肩書き。
人類を護る『エヴァのエリートパイロット』という肩書き。
みんな私の『外側』だけを見てた。
私自身も、みんなに見て欲しくて、必要な人間だと思われたくて、『一番』っていう『外側』に拘泥った。
『外側』だけに『価値』があると思ってた。
そのために、いっぱい無理してた私。
でも、今は違う。
私は、自分の『価値』が『外側』だけじゃないことを知ってる。
そもそも、『価値』なんてものが必要ないことを知っている。
そして、私の周りには、『外側』だけじゃない、『惣流・アスカ・ラングレー』という人間を見てくれる人達が、ちゃんと居る。
それに私の『外側』も『内側』も全部全部包み込んで、見守ってくれる人が居るんだもん、無理する必要なんてない。
「ねぇねぇ、カノジョ、暇?」
また来た。
「忙しいわ」
なれなれしげに近寄ってくる新手のナンパ野郎に、クロスカウンターで答える。
「冷たいなぁ」
そう言ってにやにや笑う男。
ああ鬱陶しいっ!
「・・・・・・っ!」「アスカ?」
怒鳴ろうと息を吸った瞬間、名前を呼ばれる。
どんな人込みの中だって、絶対に間違えたりしない声。
振り向けば、柔らかく微笑んでいるあいつ。
「シンジ!」
私はシンジの前に飛び出す。
その瞬間、傍にいたナンパ男の存在は、きれいさっぱり忘れた。
「遅い!」
緩みそうになる頬を引き締めて、シンジを睨み付ける。
「ごめん、これでも急いで来たんだけど」
シンジは笑みを深める。
「アスカは随分早かったんだね? まだ15分前だよ?」
「いいでしょ、別に!」
私はそっぽを向く。
一人で時間を潰すのがつまらないから早く来た、なんて言えるわけがない。
シンジは苦笑すると、私から鞄を受け取った。
二年前は無理矢理、荷物持ちをさせてたけど、今は自分から持ってくれる。
「・・・・・・じゃ、行こうか?」
笑顔と共に、差し出される手。
いつものことなのに、いつもこの瞬間はどきどきする。
「うん!」
私は、シンジの腕を抱え込む。
歩き出すと、男女を問わず、周囲の視線が、私達の動きを追ってくるのが判った。
私は言わずもがなだけど、シンジもかなりの美形なのよね。逢ったばかりの頃は、冴えないヤツって思ってたけど。
今じゃ身長は183あるし、顔の造作は整ってるし(女顔だけど)、何より笑顔が反則!
あんなふうに優しく微笑まれたら、大抵の女のコは参っちゃうわよ。
シンジは『にぶちん』だから、自分の笑顔の威力に気付いてないみたいだけど。
でも、それでちょうどいいのかも。こいつが加持さんみたいに女心に敏感だったら、私の心配の種が10倍くらいになっちゃう。
だからシンジは鈍いくらいでいいのだ。
「そういえばさ」
シンジが突然、口を開く。
「何?」
「先刻の男の人と話してたでしょ? 知り合いか何か?」
訂正。
鈍すぎるのは犯罪。
「だぁれが知り合いよ! あれはナンパよ、ナンパ!!」
このバカシンジ!!
私は思いっきり、シンジの腕を抓る。
「ってぇ!!」
シンジが情けない悲鳴を上げる。
ふん、自業自得よ。
「酷いよアスカ・・・・・・」
あらら、シンジってば涙目になってる。
でも簡単には赦してあげない。
「酷いのはあんたのほうよ。あんたが遅いせいで、いっぱい変なのに絡まれて、すっごく不愉快な思いしたんだから!」
それに、妬いてくれたっていいじゃない。
「・・・・・・アスカは綺麗だから絡まれるんだよ」
ぼそっと呟くように言われた台詞に、一気に顔に血が上る。
他の人に言われても気にならない言葉が、シンジの口から出ると、すごく面映ゆい。
「そ、それはともかくっ! 罰として今日は、ぜ〜んぶシンジのおごりだからね!」
恥ずかしさの余り、早口でまくし立ててしまう。
「罰って・・・・・・いつもおごってるじゃないか・・・・・・」
聞こえてるわよ?
「何か文句ある?」
「いえ、ないです」
シンジは、やれやれっていうふうに溜息を吐く。
それをみて、私はちょっとだけ不安になった。
「・・・・・・あのね、シンジ」
「何?」
声のトーンが変わったせいか、シンジが私の顔を覗き込む。
「・・・・・・ホントにそう思ってる?」
「え?」
「私のこと・・・・・・その、綺麗って・・・・・・」
だんだん、視線が下に落ちてしまう。
時々思うの。
誉めてくれるのは、私のご機嫌とりじゃないか、って。
私にとっての『一番』はシンジだけど、シンジにとっての『一番』は本当に私なのか、って。
「アスカ」
私が不安そうな表情をしているからだろう、シンジの眼差しはとても優しい。
「アスカは本当に綺麗だよ? 僕には勿体ないくらい」
ありがと、シンジ。
「・・・・・・もう一つだけ訊かせて?」
「うん?」
「私のこと好き?」
あまりに唐突な質問で、シンジは一瞬、びっくりしたようなカオをしたけど、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「好きだよ」
「どれくらい?」
ちょっとだけ意地悪。
たった一つを除いて、今は『一番』なんていらないの。
欲しいのは、シンジの『一番』。
少しだけ躊躇った後、シンジは軽く身を屈めて、私の耳元に口を寄せた。
「世界で一番好きだよ」
言い終えた途端、シンジは顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
私は、その腕を強く抱え込んだ。
「私もね、シンジのことが世界で一番好きよ!」
<fin>
ども、お世話様でございます。
玲@いっちょまえにスランプでございます。
お祝いが遅くなって申し訳ありません。
はっきり言って今回、むちゃくちゃ苦しかったです。
電波来ないし、感想来ないし(>脅迫(笑))、自分の才能に限界を感じてしまって・・・・(いや、もとから限界なんですけどね(自爆))。
そんなわけで、LAS度の低い駄作なんですけど、受け取ってやって下さい(T-T)。
お目汚しを失礼しましたm(_ _)m
艦長からの感謝の辞&艦艇貸与命令(笑)
ぶらざー玲さんから投稿していただきました!
ありがとうございました!!
いんやー・・・LASの日常ってやつですかねえ(笑)
アスカがシンジを待つ所を想像してみると、なんかこう微笑ましくなってしまいます(笑)
さあ、読んだアナタ、ぶらざー玲さんにメールを出すのだ!
感想メールはこちらへ。
ぶらざー玲さんのHPはこちら!
さて。
ぶらざー玲さんはこの投稿をもって
海軍少佐
に昇進です!(笑)
少佐に昇進ということは・・・・
そうです!我が「P−31」の護衛艦の艦長に就任していただきます!(爆)
艦名、艦種などはフネが就役したら報告します(笑)