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Can't love you
               〜Dead Memoly 2〜
Write by Y-MICK




「なんでだよ・・・・どうして・・・・」

「・・・・・・」

「何とか言えよ!」


アタシに対面する男が声を荒立て始める。


「・・・そうかい、そういう事なのかい・・・」


勝手に理解し、勝手に納得している。


「・・・なにもしゃべらない、これはその代償だよ・・・・」


口調は平然を装っているが、かなり怒り心頭なのだろう。

すると。


パーーーーーン


辺りに乾いた音が響いた。

アタシは音がやむと、ゆっくりと自分の頬に手を当てる。


「・・・サヨナラだ」


男はそのまま駆け出していった。

そして、アタシはただ、佇むだけに至った。









「サヨナラ・・・・」


早朝。

アタシは家を出た。

アタシの両親はいない。

一年前、いきなりいなくなってしまった。

アタシを残して。

だからアタシもこの家を出る。








「本当にいいのかね?」

「はい」

「・・・仕方有るまい。本人がそう言っているのなら・・・・分かった、手続きはこちらでやっておく」

「済みません」

「君が謝る事じゃない。しかし・・・惜しいな、学校始まって依頼の才媛をむざむざ中退させるって言うのは」

「済みません」

「だから君が謝る事じゃない。頑張るんだよ。外国に行っても」

「はい」


あの時以来、アタシは高校を辞める手続きをし続けた。

同時に今まで住んでいたアパートも売り払った。

両親の残してくれたお金と、アパートを売ったお金を使ってアタシは外国へ行く。

学校には外国の親戚の所へいくと言っていたが・・・実際は違った。

実際は単なる逃避旅行。

いつ帰ってくるのか分からない。




<<10:34発、Los Angels行102便にご搭乗の方は搭乗カウンターまでお越し下さい>>


国際空港。

アタシの荷物はこのバッグ一つ。

いらない物は全て処分した。

そして今・・・待っている。

アイツが来てくれたら・・・・アタシはきっと思いとどまる。

希望を抱いているのだろう。アイツが来てくれるのを。

来て欲しい・・・来てアタシを引き留めて欲しい・・・・そう願っていた。
















結局アタシは今は空の上。

アイツは来てくれなかった。

来て欲しかったのに・・・・もう遅いわね・・・





























「十カ国目ね・・・」


あれからもう2年がすぎていた。

アタシは幾つもの国をわたった。

アメリカ、イングランド、フランス、インド、オーストリア、スイス。

小さな国を挙げればきりがないほど回った。

もっとも、主にEU諸国だったけど。


「ドイツか・・・・」


十カ国目に選んだのはアタシのパパが一時期いたと聞いているドイツ。

もし、良い国ならば・・・永住しよう。そう決めた国。




「シンジ・・・・」


アイツの名前はこの2年間、離れたことはなかった。

何でだろう。

アタシから別れを切り出したはずなのに・・・

忘れようとして色々と試してみた。

でも結局アイツの顔と声、香りが頭をよぎり、何もできなかった。




「どうしようかしら・・・とりあえず適当に住むところを決めないと・・・」


まずは落ち着けるところ。

行動の全てはここから・・・

とりあえず初日はホテルで、そこからは安いアパートとか、マンスリーマンションとか探さないと・・・

まだ十代って言うのに、妙に生活感が出てしまったわね。

仕方がないといえば仕方ないのだけど。

「・・・ここなら安全で安そう・・・ここでいいや」


少し郊外に離れているけど、安そうで安全そうなホテルを見つける。

アタシも一応女。安全を考えなくちゃいけない・・・




ホテルにチェックイン。

そしてホテルの周りを物色。

でもこう言うところは得てして・・・・


「やっぱり・・・」


色々な国で出会った。

いわゆる”チンピラ”と言われる類の人間。

前までは適当にはねのけ、それでもかかってくるようなら急所を攻撃していたけど・・・・

甘かったみたい。

逆にアタシは返り討ちにあってしまった。


「金だ。まず金を出せ」

「イヤよ。アンタ達に渡す金はないわ」

「そうか。ならば自分がどうなっても良いと考えているのか?」

「・・・・」


妙にインテリぶっている。

さしずめグループの頭脳って所なのね・・・


「なにも言わないならそうとこちらは考えるぞ。良いのか?」

「ふんっ!金を取ったところで結局はアタシもどうにかするつもりなんでしょう?!」

「ほぅ・・・察しがいいな。その通りだ。俺達はそれを生業にしている。運がなかったな」


・・・マフィア・・・

チンピラと思っていたらマフィアだった。

それも少し悪質な。

アタシもここまでなのかな・・・・・


「やれ」


低くこもった声がアタシの聞いた最後の言葉だった。

そのあとのことは覚えていない。

アタシはお腹に衝撃を受け、一瞬で意識を失っていたから。
































「う・・・・」


光がまぶしい。

ここは・・・・何処?


「気がついたみたいだね・・・アスカ」


あぁ・・・聞き覚えがある声・・・

懐かしい声・・・・

アタシの好きな声・・・・
























「僕はね。すぐに追ったんだ。でももう出発してしまったあとだった」

「僕はまずはロサンゼルスに行ったよ。一ヶ月探した。でも結局見つからなかった」

「そのあとは・・・いろいろ回ったね。世界を」

「あぁ、お金なら父さん達が何とかしてくれた。『好きな女を捜しに出かけるのならこれを持っていけ』ってね」

「確か・・・砂漠を渡ったね。小さいけど。ジャングルも経験したよ」

「僕の頬を銃弾がかすめたこともあった。あれは怖かったな」

「ずいぶん遠回りしちゃったけどようやく足跡を見つけて、ここまで来たんだ」

「この町に入ったのはついさっきなんだよ。運が良かったね」

「心配しないで。もう怖い思いをすることも寂しい思いをすることもないんだ」

「これからは・・・僕がそばにいる。一生」

「だから・・・僕の気持ちを受け取って欲しい・・・・アスカ」




















アタシが気づいたとき、そばにシンジがいた。

話は全て聞いた。

アタシを追ってきたことも。

危険な目にあったことも。


「・・・・・・ぐすっ・・・・」


アタシはシンジの胸に顔を預け、泣いていた。

久しぶりに泣いていた。

他人がこれ程気持ちいいことを初めて知った。









アタシはシンジに抱かれる。

心地よい感覚に全てをゆだねる。

シンジに全てをゆだねる。








日本に帰ったら話そう。

シンジと話そう。

将来のことも含め。




今考えると何故世界に出たか分からない。

他人が怖かったのか、今の環境がいやだったのか。

もう分からない。




でもそれでも良い。

シンジのそばにいることが今は絶対。

側にいて欲しいと感じることが出来る人がいるときが一番と思うから。




Fin


後書き

Dead Memoly の続編という形です。
もしかすると、全体通して痛いかも・・・痛かったかもしれないですね。
書いている本人はそうでもないんですが(笑)

Dead Memoly 自体は自分が一番気に入っている作品。
事実、続編を希望するメールは結構来ていました。
で、今回書いたんですけど・・・前作ほどの良さは出なかったですね。
書いた時間自体は前作と同じ1時間強なのですが。
何が足りなかったのでしょう。今となっては分かりません。

では今回はこの辺にて。
何か感想、要望、意見など有りましたらY-MICKまでどうぞ。
それでは。


艦長より。

ううむ。

なんかちょっとだけイタモノっぽいですね(笑)

ま、このくらいだったら大丈夫(爆)

ハッピーエンドだしね。

さあ、よく考えたら上と下双方で乗艦を持っているY中佐に「連載の続き書けやぁ!」とメールして差し上げましょうや、みなさん(笑)

しかもこの度、連合艦隊司令長官(暫定)に就任されました!

この調子で上も下も連載をさくさくと・・・・(爆)

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