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西暦2015年、使徒による脅威の去った世界は平和そのものだった。

戦闘により傷ついていたパイロットも回復し、今では元気に学校へ通っている。

12月半ばを過ぎても季節の無くなった日本では未だに暑い日々が続いている。

それでも名ばかりの冬休みが近付いている学生達は休みの計画に余念がない。

それは第3新東京市立第壱中学校2年A組でも同じである。















休みのはじまりに
















授業終了の鐘が鳴り、生徒達はざわついた教室を後にして帰って行く。


「シンジ、早くしなさいよ。帰るわよ。」


授業中から帰り支度万端のアスカはシンジの席まで来ると急がせる。


「ごめん、ちょっと待ってね。」


シンジはノートパソコンの電源を切るとカバーを閉じる。


「おまたせアスカ。あっそうだ、トウジ、ケンスケ」


後ろで何やらごそごそとしていたトウジとケンスケを呼ぶ。


「話があるんだ。一緒に帰ろう。」


それを聞いてアスカは昨日の夜に話したことを思い出す。

すでに帰ろうとしていた委員長のヒカリを呼び止める。


「ヒカリもよ。一緒に帰りましょう。」




こうして5人は並ぶようにして帰宅する。


「なあシンジ、話ってなんだ。」


「来週の終業式が終わった後にみんなでクリスマスパーティーしない?」


「ミサトがネルフでやるから来いって言われたんだけどさ。」


「ネルフのパーティーって子供は僕らだけだから、僕らも別にやろうかって話を昨日アスカとしたんだ。」



「私は良いわよ。」


「俺も別に用事もないから良いよ。」


「わいも。」


「じゃあ決まりね。場所は家でするから。」


それから5人は分担などを話し合った。

結局、ケーキなどのお菓子担当をヒカリが、ジュースやその他の買い出しにトウジとケンスケ、料理や部屋

の飾り付けをシンジとアスカとなった。



「せやけど、惣流が料理担当っちゅうのは・・・。」


トウジが不満顔で漏らす。


「何よ、文句があるって言うの。」


当然アスカは食って掛かる。


「どうせ、料理はセンセが一人で作るんやろ。今まで朝昼晩全部センセに任せっきりやったのに食える料理

なんて作れるんかいな。」


言外に『毎食シンジのご飯が食べれて幸せやろ』と言う皮肉だったのだがアスカには通じていない。


「いつもはシンジが料理が好きだからやらせてあげてるのよ。好きなことしてるのにわざわざそれを取り上

げることもないでしょ。だから私は作れないんじゃなくて作らないだけよ。」


どこから聞いても言い訳にしかならないようなことを言ってプイッとそっぽを向くアスカ。


「シンジも大変だねぇ、惣流みたいなのと付き合って。」


ここぞとばかりに口を挟むケンスケ。


「センセも早いとこ見捨てて別れたらどうでっか。」


すかさず合わせるようにトウジがニヤニヤしながら言う。


『別にシンジとは付き合ってないわよ』


と言うアスカの怒声が飛ぶのを身構える2人。

しかしいつもの声は無く、走り去るアスカの後ろ姿があった。


「あっ、アスカ。」


後を追おうとしてシンジは立ち止まり、トウジに向かって指を指す。


「トウジ! 今のは言い過ぎだよ。」


目をつり上げ、怒鳴るように言うと全力でアスカを追い始める。

残された3人は一瞬凍り付いたようになっていたが気付いたようにケンスケが聞く。


「今、シンジの奴本気で怒ってなかったか?」


「あぁ、わいも初めてみたわ。あんなセンセ。」


最後に立ち直ったヒカリがトウジの耳を吊り上げるようにして引っ張る。


「す・ず・は・らぁ、明日ちゃんと謝りなさいよ。」


「あいたたたた、分かっとるがなイインチョ、痛いわほんまに。」


トウジの耳を解放してヒカリは親友のことを思う。

何となくだが走り去った理由はわかるつもりだ。


(アスカ、大丈夫よね)












そのころシンジは走りながら数週間前のことを思い出していた。

12月4日、アスカの誕生日の夜のことを。











バースデイパーティーが終わって片づけをするシンジに声をアスカが声を掛けて来た。

トウジやケンスケ、ヒカリ達はすでに帰り、ミサトも二次会と称してリツコ達と外に飲みに出た。

家には残されたシンジとアスカの二人だけだった。

当然ミサトがそうなるように仕向けたのだが。


「ねぇシンジ。ちょっと来て話があるの。」


片づけをしていたシンジはキッチンを出てリビングに向かうとソファに座った真剣な顔のアスカがあった。

アスカの横に座り聞いてみる。


「どうしたのアスカ。」


「うん。シンジに聞いて欲しいことがあるの。」


そうしてアスカはぽつりぽつりと自分のことを話し出した。

死んだ母親のこと、なぜエヴァに乗っていたのかなどを。



「私はもう一人はいやなの。」



そう言ったアスカは俯いていた、肩を震わせて・・・。

最後の本当に言いたい言葉は出てこない。

シンジは黙ったまま聞いていたがゆっくりと立ち上がるとテーブルの上にあったリボンの掛かった箱を持っ

てまたアスカの隣に座る。


「アスカ、僕からの誕生日プレゼント開けてみて。」


なんだか分からないようにシンジを見るが、笑顔のシンジは頷くとスッと箱を差し出す。

先程貰ったプレゼントを再び手に取り包装を解いていく。

中には先端に小さな翼が付いた銀のネックレスが入っている。


「これは僕にとってのアスカなんだ。この天使の翼はね。」


翼を指先で撫でながら優しく諭すようにシンジは言う。


「何よ、私が使徒みたいな女だって言うの。」


少し頬を膨らませてシンジを睨み付けるアスカ。


「違うよ、アスカ真面目な話なんだ最後まで聞いて。」


ネックレスを箱から取り出し、翼を手のひらに乗せてシンジは続ける。


「アスカ、僕にとってアスカは翼なんだ。アスカがいれば何処にだって行ける、どんなに高い所にでもアス

カさえいれば飛んでいける。そう思ったからアスカにも翼を付けて欲しかったんだ。」


そう言うと留め金を外し、ゆっくりと両手をアスカの首の後ろに回してネックレスを付ける。

カチッという音がするのを確認し、元の体勢に戻ったシンジの顔は真っ赤になっている。


「それからもう一つ、そのネックレスは僕がアスカに『首ったけ』だって言う証拠だよ。」


アスカは顔中を真っ赤に染めてシンジの顔を見つめる。


「好きだよ、アスカ。だれよりも。」


その言葉を聞いてアスカはシンジに飛びついた。

何とかそれを受け止めたシンジは耳元でささやくアスカの言葉を聞いた。


「アンタってホントに14なの? そんなことクサイ台詞言われたら私も素直になるしかないじゃない。」


一呼吸おいた後に続けて言った、本当に言いたかった言葉を。


「好きよ。シンジのことが世界中で一番。だ、だ・・か・ら・・・」


涙と嗚咽で続きは言えない。

シンジはアスカの背中に回した腕に少しだけ力を込める。


「うん、分かってる。だから僕はずっとアスカの側にいるよ。」






あの時聞いた、『見捨てる』その言葉はアスカにとって禁句なのだ。

結局家に着くまで追い着かなかったシンジは、カードキーを差し込むのも苛立たしそうにしてドアを開ける

とアスカの靴を確認する。


(良かった、アスカちゃんと帰ってるな)


靴を脱いで玄関に鞄を捨てるように置くと真っ直ぐにアスカの部屋に向かう。


「アスカ入るよ。」


いつもなら返事を待ってから開けるところだがそんなこと今は構っていられない。

アスカは制服のままベットに俯せになっていた。

声を殺して泣いているのは直ぐに分かる。

シンジはベットの横に膝立ちになると右手をアスカの肩に乗せる。


「アスカ、トウジの言ったことは気にしないで。」


「だって、だって想像しちゃったんだもん。シンジが私に『さよなら』って言って去って行くのを。そした

ら不安になって、悲しくなってどうしようもなかったの。」


俯いたまま一気に捲し立てるとやっと顔を上げてそのままベットに正座する。


「この間言ったよね? 僕はアスカの側にずっといるからって、だから心配しないで。泣いてるアスカも嫌い

じゃないけど、僕は元気に笑ってるアスカが一番好きだから。」


両手の親指で涙を拭き取りながら言うと優しく笑う。


「このアスカ様ともあろう者が弱くなったものね。全部シンジのせいなんだから責任とりなさいよ。」


「うわ、うぷっ」


アスカはなんだか急に恥ずかしくなってシンジの手首を捕まえるとグッと引っ張り、そのままベットにシン

ジを倒して頭を押さえ付ける。


「そうだ、特訓をしよう。」


押さえ付けられていた顔をガバッと上げるといきなりである。


「とっくん? 何の?」


はて、と言った感じでアスカは首を傾げる。


「料理だよ、今度のパーティーでアスカの料理を出してみんなを見返してやろう。僕が教えるから。」


にやりと笑うシンジに、


「いーわねぇ、それ。あれだけ言われて黙って引き下がれないわ。」


頷くと、同じようににやりと笑うアスカ。

二人の顔はミサトが良からぬことをしでかす前の顔にそっくりだった。

やはり長い間一緒に暮らしていると似て来るようだ。

こうしてアスカの料理特訓は始まる。














翌日トウジに頭を下げられたアスカは、


「あんた私に謝らなきゃいけないことなんてしたの?」


と言ってごまかした。


その後も順調に特訓は続き、もともと器用だったアスカはシンジのわかりやすい指導でメキメキと上達して

いった。

何よりも初めはみんなを見返すためにやっていたが、途中からはシンジと一緒に料理をするのが楽しくて仕

方がなかった。

パーティー前日には


「これからもときどきは料理しようかな。」


と言わしめたぐらいだったのだ。


『好きこそ物の上手なれ』その典型であった。














そしてパーティー当日、テーブルの上には豪華な料理が所狭しと並んでいる。

部屋の中にはちょっと小さめのツリーも飾られ、クリスマス気分満載だった。

決めていた時間通り18時に来た3人はテーブルの前に立ち止まり感嘆の声を上げている。


「うおぉ、すごいやないけ。」


「へぇ、さすが碇君ね。」


「ふぇー。」



アスカはヒカリにまでシンジが作った物と思われてちょっとムッとしたが後から本当のことを言ったときの

反応を想像してにやにやしてみている。


「いらっしゃい、みんな。洞木さん、ケーキ冷蔵庫に入れて置くから貸して。それからケンスケビデオ回す

のは後でいいからジュース何本か置いたら残りは袋ごとちょうだいそれも冷やして置くから。」


キッチンからグラスを持って出てきたシンジは簡単に挨拶すると荷物を受け取って冷蔵庫に入れる。

シンジが戻って来ると一番上座にケンスケが一人でトウジとヒカリが隣同士で座り、残りの席は当然アスカ

とシンジがやはり隣同士になるように席が空いている。

どうやらアスカの指示のようだ。



「シンジ、早く始めるわよ。」


「早く始めようや、センセ。」


トウジはすでに箸を握っている。

アスカも早く言いたくてウズウズしてるようだ。


「ちょっと待って。はい、トウジはこれを食べてね。」


シンジは手に持っていたサラダの山をトウジの目の前に置く。


「センセ、何でわいだけこれ食わんとならんのや。」


サラダの山を箸で指して尋ねるトウジ。


「だってトウジはアスカの作った物は食べないんだろ? だから僕が作った特製サラダ『だけ』を食べてね。」


シンジは無邪気な子供のようにニッコリと笑うとアスカの後ろに立ってアスカの両肩に手を置く。

アスカはおもむろにピースサインを突き出す。


「うっそー、これ全部アスカが作ったの?」


「マジかよ、ホントに惣流が?」


ヒカリもケンスケも思いっきり驚いている。

信じられないと顔に出してだが・・・。


「だから言ったでしょ。私は作ろうと思えば作れるんだって。」


アスカは『当然よ』と言った顔で3人の反応を楽しんでいる。


「惣流、センセ、この間のことは謝ったやろ、かんべんしてぇな。」


トウジは『お願いします』と言う感じで両手を顔の前で合わせる。


「『僕のアスカ』を傷つけた(泣かせた)罪は重いんだから。それを全部食べ終わるまでは他のを食べちゃだ

めだよ。」


シンジにとって『シナリオ』通りの言葉にその場が静まり返る。


そして













「「「僕のアスカぁ?!」」」











トウジ、ケンスケ、ヒカリのユニゾンが家中に木霊する。


「シンジぃ!」


聞かされていなかった『シナリオ』に、恥ずかしさで耳まで赤くなって振り返るアスカ。

胸には翼が付いたネックレスが揺れている。


「いつかばれるんだから。」


と笑顔のシンジに言われて諦めたように


「あーもう知らないわよ。とりあえず乾杯しましょ。」


そう言ってグラスを掲げる。


「そうね、じっくり聞かせて貰いましょ。」


「せやな、いろいろとな。」


「そうそう、何処まで進んでるのかとか。」


三者三様にいやーな笑顔でグラスを掲げる。


シンジも


(これは失敗したかな)


等と思いながらも音頭をとる。


「それじゃぁ。」






「「「「「メリークリスマス」」」」」













<作者の電波的お・ま・け>


その後、ネルフのクリスマスパーティーに寝坊して出かけてなかったミサトが一部始終を立ち聞きして、


「あ〜ら、私も聞きたいわ。」


と言ってにやにやと笑いながら部屋から出てきてアスカの料理特訓の話までぶちまけた。

さらに全員にエビチュを勧めたために、酔っぱらったアスカが洗いざらい喋ってしまい、シンジの告白話

で大笑いされ、しばらくの間からかわれ続けたとか。



E N D
















*い・い・わ・け*
NAOKI「初めまして、NAOKIと言います。この度は私のへっぽこSSを読んで下さいましてありがとうございます」
直輝   「裏人格の直輝だ。言い訳、さっさといけば?」

NAOKI「あなたは少しは物の言い方という物があるでしょう、公の場なんですから」

直輝   「ふん、俺の辞書に『謙る』と言う文字はない。だから早く進めろ」

NAOKI「あぅ、それでは言い訳をあまりに多いので3点ほど、レイについては今回出すと話が長くなりすぎてしかも扱いにくいので名前すらも出しませんでした。わざとです。それからサードインパクトや戦自については私が映画を未だに見てないので無かったことにしてます。最後にアスカ嬢の精神崩壊の回復については軽い状態で直ぐに回復したとでも思って下さい、あれにふれるとそれこそ話ができませんので」

直輝   「いいかげん」

NAOKI「あっそれを言ってしまっては・・・、それからちなみに話の大元はLASデーネタでした、間に合わなかったので急遽クリスマスネタに。それさえも間に合いませんでしたが・・・」

直輝   「サボり魔」

NAOKI「あぁ、しょうがないじゃないですか。仕事もあるし、書きたい事書いていくとどんどん話が長くなっていったんですよ当初の予定の2倍ですよ」

直輝   「行き当たりばったりの無計画電波的作家」

NAOKI「うぅ、ごめんなさい、すいませんでした」

直輝   「さて、主人格いじめも楽しんだし俺は帰る」

にNAOKI「え〜ウィルス以外の物であれば何でも結構です。必ず返信しますのでメールをお願いします」


NAO 輝「See You Later!」

e−mail a010s046@tmn.co.jp







艦長からの感謝の十字砲火(意味不明)



本艦に新たな乗り組み士官が来てくれました!(笑)

8人目の士官は・・・・

NAOKIさんです!

ホントーにありがとうございました!

内容については・・・・言うまでもありませんな。

ゲロ甘LASです(爆)

しかも時期ネタ。

私自身が時期ネタというのをまっっったく書いたことがないんで、嬉しいです(笑)

と、いったわけで(どんなわけや)

NAOKIさんはこの度の投稿により、

海軍少尉

になっていただきます。

投稿数が多くなれば艦艇の貸与もおこないますのでこれからも投稿して下さいね(笑)

さあ!あなたの感じたモノすべてをメールに込めてNAOKIさんにぶつけるのだ!(爆)





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