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UN NERV /8154 665 /2015
人類を襲う正体不明の大型兵器群「使徒」。
それに対抗するために開発された、汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」。
そのパイロットとして選ばれた少年少女は、14歳という若年ながら、人類の存亡を司る。
当然ながら、VIPである彼らには、昼夜を問わず保護・監視の目が光る。
今日は、そのパイロットを蔭から支える諜報部員の一日に、
スポットを当ててみたいと思う。
「以下の情報は情報閲覧資格α以上の者に限り閲覧を許される」
サードチルドレン<偽>監督日誌
2015年 ○月×日、△曜日
コンフォートマンション17 葛城家 サードチルドレン居室
AM06:30
『サードチルドレン、起床。』
コンフォートマンション17の向かい側に立つマンションの一室は、サード・セカンドチルドレンの監視用に、Nerv諜報部が借り受けている。
双眼鏡で、窓越しに葛城家を監視しつつ、サードチルドレンの居室に仕掛けた盗聴器から聞こえる音から、彼の起床を判断する。
ちなみに、何故監視カメラがないのかと言えば・・・・それは後で述べる。
「サード起床」
ヘッドフォンから、盗聴器の音を拾っていた諜報部員・・・・仮にAとしよう・・・・が言う。
「起床確認」
双眼鏡を覗いていた諜報部員・・・・仮にBとしよう・・・・が言う。
「了解」
記録係・・・・仮にCとしよう・・・・がノートパソコンに、時刻と状況を入力する。
ツーマンセル
通常ならば、二人一組で監視に当たるのだが、サード・セカンドの監視の任に当たる場合のみ、三人一組とされている。
理由は・・・・これもまた、後で述べる。
「ぐはぁ!」
突然、Bが双眼鏡を取り落とす。
「ぐふぅ!」
ほぼ同時に、Aがヘッドフォンをむしり取り、引きつけを起こす。
どうやら、葛城家では、サードとセカンドの「激甘」シーンとなったらしい。
「こちら第二班です。コードL発動。Aが汚染ランク5、Bが汚染ランク3です。監視続行不可能」
いつものことであるため、Cは冷静に、本部へと連絡した。
ちなみに、「コードL」とは「サード・セカンドLove^2状態」の「L」である。
これを直接、見聞きした者は、精神汚染状態は免れない。
諜報部では、これを5段階評価で表している。
もし、監視カメラがあったら、Cもただでは済まなかったろう。
これが、監視カメラが無く、三人一組で行動する理由である。
『了解。交代要員が到着するまで、引き続き監視業務を続行して下さい』
本部もまた、いつものことなので、慌てることなく対応する。
「了解」
そして、Cがヘッドフォンをした途端に聞こえてきたのは、甘いあま〜い、囁きだった。
「シンジのおはようのキス、すごく優しいから好き」
「好きなのはキスだけ?」
「やぁん! 意地悪言わないで! キスだけじゃなくて、シンジのことが全部好きなの!」
「僕も、アスカのこと大好きだよ」
「うれしいよ、シンジぃ・・・・ね? もう一回、キスしてぇ」
「うん・・・」
「・・・・・・ん・・・・・・んふ・・・・・・」
「「はぁ・・・・・・」」
「くぅ!」
Cは、机の角にがんがんと頭をぶつける。
汚染レベル、5。
諜報部第二班三名の精神汚染により、監視業務一時中断。
同日
AM07:50
市立第壱中学校への通学路上
『サードチルドレン、セカンドチルドレンと共に登校。』
「こちらD。サード・セカンド、確認」
ビジネスマンに身をやつした諜報部員が、襟元につけた極小マイクに向かって呟く。
『ヘッドクオーター、了解』
イヤフォンになっている眼鏡のつるから、本部オペレータの声が聞こえる。
『こちらE。チルドレン確認』
『こちらF、異常ありません』
互いの死角をカバーする形で、チルドレンを監視している諜報部員が報告する。
相手は人類の命運を握るVIPである。
外出時のガードは、1ブロック毎に三名づつでリレーする、非常に堅固なものとなっていた。
だが、そんな彼らの苦労を知らず、サード・セカンドは、相変わらずのらぶらぶモードだった。
「シ〜ンジ!」
「何、アスカ?」
セカンドチルドレンの呼びかけに、サードチルドレンが笑顔で応える。
「ん、呼んでみたかっただけっ」
セカンドチルドレンが全開の笑顔で、サードチルドレンの右腕を抱え込むようにして、腕を絡めた。
「アスカ」
「なぁに?・・・・んっ・・・・・・・!」
不意打ちのキスに、顔を真っ赤にするセカンドチルドレン。
それを見て微笑むサードチルドレン。
「可愛いよ、アスカ」
「・・・・シンジのばか・・・・」
セカンドチルドレンは、俯きながらも、絡めた腕に力を込める。
ぐわん!!
電柱へ顔面から衝突するD。
そのまま気絶する。
彼はまだ幸せな方だ。
「俺、最近彼女と上手くいってないんだよな・・・どうすればいいんだろう?・・・教えてくれよ、ポストさん」
赤いポストさんに向かって、身の上相談を始めてしまうE。
「いいんだっ! どうせ俺は独り者さぁ!!!!!」
朝だというのに、夕日に向かってダッシュしてしまうF。
彼は、そのまま失踪してしまった。
そうこうしている間に、チルドレンは彼らの担当ブロックを去る。
負傷者一名、精神汚染者一名、失踪者一名。
後から来た、Nerv諜報部のワンボックスカーが、彼らを回収する。
サードとセカンドのLove^2状態にあてられ、精神汚染される職員が大量に発生しているため、遂に専用回収車ができたのだった。
同日
PM12:10
市立第壱中学校、屋上
『サードチルドレン、セカンドチルドレンと共に昼食。』
サードとセカンドは、学校の屋上で、二人っきりの昼食を摂っていた。
他の生徒達は、この二人の所構わぬ激甘ラブシーンを見せられる事を嫌って、そばに近付かない。
何しろこの二人、自分達の作り出している情景が、どれ程の破壊力を秘めているか知らないのだ。
二人のラブシーンなど見たくないのは、Nerv諜報部員達も同様だが、彼らには、「人類を守る少年少女を蔭から支える(監視する)」という重要な使命があるため、逃げるわけには行かない。
そんなわけで、諜報部第五班は、第壱中学の屋上が見渡せる場所に陣取って、双眼鏡片手に、高性能マイクが拾う二人の会話を聞いていた。
「シンジの作るお弁当・・・・美味しい」
セカンドチルドレンが、隣に座るサードチルドレンに笑いかける。
「ありがとう、アスカ」
サードチルドレンは、照れたように微笑んだ。
「あ、シンジ。ほっぺたにごはんつぶくっついてる」
「え? どこ?」
サードチルドレンは、見当違いな所を手でこする。
「もう、馬鹿ねぇ」
セカンドチルドレンは、サードチルドレンの頬に顔を寄せると、ぺろり、と舌でごはんつぶを嘗めとる。
「ほら、とれた」
「ありがとう」
二人は顔を見合わせると、にっこり笑いあう。
「あ、アスカもごはんつぶくっついてるよ?」
「え? どこどこ?」
「ほら・・・・」
「あ、ん・・・・・・・・・・・・んんっ・・・・・・・・」
”でぃーぷ”なキスをする二人。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! やってられるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
どがっしゃん!!
突然、Gが機材を蹴倒し、立ち上がった。
「何で14歳のあいつらはらぶらぶらぶらぶらぶなのにっ!!!! 28歳の俺は独りものなんだぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「お、落ち着けG!! I、精神安定剤だっ!!」
第五班のチーフであるHが、暴れるGを羽交い締めにする。
こういったケースも頻繁にあるため、サード・セカンド監視担当の諜報部員達は、精神安定剤のアンプルを常に携帯している。
「I、早くしろ!!!」
Hが振り返ると、ゲシュタルト崩壊をおこして、目に見えない誰かさんとお話ししているIの姿があった。
合掌。
同日
PM05:10
帰宅途上
「オオハラ書店」
『サードチルドレン、セカンドチルドレンと共にショッピング。』
二人は学校帰りに、第3新東京市最大の売り場面積を持つ、大型書店に来ていた。
「ねー、シンジぃ、何の本選んでるの?」
セカンドチルドレンが、サードチルドレンの背後にぴたりと寄り添い(正確には抱きつき)、肩越しに彼の手元を覗き込む。
「ん? 新しい料理を覚えようかと思って」
サードチルドレンが手にしているのは、『特選 おかず百科』というレシピ本。
「アタシも料理覚えようかな・・・・」
「え? どうして?」
サードチルドレンが、不思議そうに訊く。
「だって・・・・好きな人には手料理食べさせてあげたいじゃない・・・・」
セカンドチルドレンは、顔を真っ赤にして俯く。
小さな声だったが、サードチルドレンにはちゃんと聞こえたらしい。
彼は振り返ると、そっとセカンドチルドレンを抱きしめた。
「僕は、アスカの気持ちだけで十分だよ」
「でも・・・・アタシ、料理も掃除も洗濯も出来ないし・・・・シンジ、そんな女の子イヤでしょ?」
怯えたように、サードチルドレンを見るセカンドチルドレン。
サードチルドレンは、彼女を安心させるように微笑んだ。
「アスカが家事が出来なくても、僕がアスカを好きなことには変わりないよ。それにね、僕は、アスカが僕の作った料理を『美味しい』って言ってくれるのが幸せなんだ。だから、そんなこと気にしないで」
「シンジ・・・・・・」
感極まったようなセカンドチルドレン。
「アスカ・・・・・・」
優しく微笑むサードチルドレン。
ゆっくりと、二人の距離がゼロになる。
「んっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いつのまにか、二人の周囲からは、客がひいていた。
それはそうだろう。
ナニユエ、本屋に来て、超激甘ラブシーンを見せつけられねばならないのか。
だが、約一名、ちょっと違った人間が居た。
「うちの奥さんも、ああいってくれないかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
諜報部員Jは、日経ビジネスごしに血涙を流した。
哀れな・・・・
同日
PM08:00
コンフォートマンション17 葛城家 セカンドチルドレン居コ
「サードチルドレン、セカンドチルドレンと共に学習。」
夜の担当の諜報部員は、比較的ラクである。
前述のように、監視カメラはない上、カーテンが閉じられた部屋を覗くこともできないので、盗聴マイクだけの監視になるからだ。
だが、侮ってはいけない。
音だけでも、あの二人のラブシーンは、かなりキている。
「・・・・できたよ、アスカ。見てもらえる?」
「どれどれ?」
サードチルドレンが、セカンドチルドレンに勉強を教わっているらしい。
セカンドチルドレンは、既に大学を卒業している頭脳の持ち主である。
これは当然のことと言えよう。
「うん、正解。やれば出来るじゃない、シンジ」
「アスカの教え方がいいからだよ」
照れたように答えるサードチルドレン。
「とーぜんよ!」
「うん。感謝してるよ、アスカ」
「じゃ、もう三問」
「うん」
しばらくのあいだ、軽いキィタッチの音が響く。
「はい、できた」
「・・・・・いいわ。全問正解」
僅かな沈黙。
「じゃ、ご・ほ・う・び」
セカンドチルドレンの、悪戯っぽい声。
「ん・・・・・・・・・・はあっ・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・あふっ・・・・・・・・」
そして、聞こえてくるのは、甘い吐息。
ナニを想像したのか、モニタしていた最年少諜報部員のK(23)は、鼻血を流し、そのまま後ろへ倒れ込んだ。
「ふっ・・・・・若いな」
そして、最年長のL(48)が、監視任務を引き継いだ。
だが、この後30分以上続いた超濃厚なラブシーンに、彼もまたキレた。
同日
PM10:30
コンフォートマンション17 葛城家 リビング
「サードチルドレン、就寝。」
「もうそろそろ、寝ようか?」
サードチルドレンが、セカンドチルドレンに言う。
因みに、二人の監督者である葛城三佐は、本日は夜勤である。
「ええ? もう寝ちゃうの?」
「うん、明日も学校あるしね」
不満げなセカンドチルドレンを宥めるサードチルドレン。
「シンジぃ・・・・ぎゅってして」
「うん」
どうやら、サードとセカンドが抱き合っているらしい。
状況が見えないため推測であるが。
「アタシ、すごく幸せ・・・・・・・・」
「僕だって幸せだよ」
「頼む・・・・・・とっとと寝てくれ・・・・・・・・・・」
モニタしている諜報部員Mは、泣きが入っている。
だが、彼の願いがチルドレンに届くはずもない。
彼はまだ、耐えなければならない試練があった。
そう。お約束、おやすみ前の『儀式』である。
「・・・・・はい・・・・・・」
数秒の沈黙。
「やん・・・・・もっとちゃんとキスして」
セカンドチルドレンは、軽いキスではご不満らしい。
「・・・・・じゃあ、明日の朝は、大人のキスで起こしてあげるから」
サードチルドレンが苦笑する気配。
「ホント?」
セカンドチルドレンは、うってかわって嬉しそうな声を出す。
「僕がアスカに嘘吐くわけないだろ?」
「うん。じゃあ、おやすみなさい! シンジ」
「おやすみ。アスカ」
そして、葛城家の電気が消される。
しばらくは、それぞれの部屋で物音がしていたが、やがて静かになった。
本日の監視業務終了。
これでようやく、諜報部員達の長い一日が終わった。
それは、全ての諜報部員に共通する、魂の叫びだったに違いない。
「以上がO月×日におけるサードチルドレンの主な行動である。」
「所見としては、普段と変わらぬ日常であったと考えられる。」
「明日以降も別命なくば、サードチルドレンの監督(及び諜報部による監視)を継続する。」
「追記」
「今回、監視任務に当たった諜報部員二十一名の内、レベル5の精神汚染者が、八名」
「レベル4が三名、レベル3が二名、レベル2が一名、レベル1が二名」
「自ら壁に頭をぶつけて負傷した者が一名」
「精神汚染者の対応で負傷した者が一名」
「出血多量の者が二名」
「任務遂行中に失踪した者が一名。」
「この任務にあった者全員が、何らかの形で障害を受けているが、本日の被害は比較的軽微。」
「しかし、抜本的な対策を練らねば、早晩諜報部は活動不能になると思われる。」
「・・・・・・・・誰か私を助けてよ!!」
作戦部 葛城ミサト三佐
この報告書に対するE計画担当者のコメント
「ミサト・・・・・・・それはあなたの台詞じゃないわ・・・・・・・」
頑張れ、諜報部員!
負けるな、諜報部員!
君たちの肩に、人類の未来がかかっているぞ!!
以上の情報は情報閲覧資格α以上の者に限り閲覧を許される
つづく・・・ワケがない!!
ver.-1.00 1998-08/01公開
ご意見・ご感想・ご質問・誤字情報などは こちらまで!
あとがき?
ははははっはははっははははっはははははっはははははははっ・・・・・・・・・・・
すんません!
ついにやっちまいました!!!
艦長のお話を読んだときから、このネタはあったんですよ!!
監視する側は大変だろうな〜と思って・・・・・
面白くない、LASがたりないのは、みんなぶらざー玲の所為です。
艦長の所為ではありません。
つーことで、すんませんでしたぁぁ!!
艦長からの特別指令(大嘘)
・・・・・・・・・・・・・・・
ごろろろろろろろろ・・・・(←部屋の中をハデに転がってます)
ガン!(←頭を机の脚に思いっきりぶつけました)
痛つつつつ・・・・あ!?・・・・いや、これはみっともないところを・・・・
こほん。では、あらためて。
玲さーん、萌え萌えっすー!(どこがあらためてや)
拙作、『サードチルドレン監督日誌』の裏バージョンが来るとは思いませんでした。
しかも、本家を上回る甘さ・・・・イヤーンな感じ!?(爆)
さて・・・・末尾に「つづく・・・ワケがない!!!」とありますが・・・・それは読んだあなた次第(笑)。
ぶらざー玲さんにメールを送って続きを書いて貰いましょう!!(ほとんど脅迫やな)
メールはこちら。
ぶらざー玲さんのHPはこっち!