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「初雪」 written by ぽてきち

















それは第三新東京市に、初雪が降った日の出来事。

それは・・・いつもと同じ、登校風景。





「うううううっ、寒いよぉ、シンジぃ!」

寒さのために赤くなった手をこすりながら、アスカが僕に訴えかける。





「あれ・・・? アスカ、手袋はどうしたの?」

「わ、忘れたのよっ!」

「そうか・・・・・困ったな。」

「な、何とかしなさいよっ!バカシンジっ!!」







・・・僕は何も悪いことしてないのに・・・・・。

アスカってば、ひどい言い草だよな・・・。まぁ、毎度のことだけど・・・。








しかし・・・よく、積もったものだ。

確か、昨日の夜から少しずつ降り始めて・・・。

僕が目を覚ました時には、辺り一面が銀世界になっていた。










雪。



初めて見たのは、去年の冬だったかな。

使徒との戦いが終わり、僕とアスカがエヴァを降りたその年に、初雪が降った。

そう、日本に四季が戻ってきたんだ。






僕たちは、夏以外の季節を知らなかった。


初めて迎える秋。

初めて迎える冬。

初めて迎える春。




気温の変化に伴う自然現象は、僕たちに新鮮な感動をもたらした。

燃えるような色彩の紅葉。

寒さゆえにかじかんで、思うように動かない指先。

風に乗って舞い落ちる、桜の花びら。

どれもが驚きだったけど、特に印象に残ったのは、やっぱり「雪」だったな。

真っ白くて、冷たくて、さらさらとした感触で・・・。

太陽の光に当たると、きらきらと輝くんだ。










「シンジ・・・?」

「えっ?」

「・・・何、ぼーっとしてるの?」

「あ、ああ・・・ごめん・・・・・。」

「変なの。・・・ほら、遅刻しちゃうわよ!」

「わっ・・・ホントだ。」

「しょーがないわねぇ・・・じゃ、近道するわよっ!」

「え?・・・近道なんて、あるの?」

「・・・・・見つけたのよ。」








そう言ってアスカは、普段の通学路とは少し違った方向に足を向ける。




「ねぇ、アスカ・・・これって近道なの?」

歩いても歩いても一向に学校に近づかない様な気がして、僕は不安の言葉を発する。

「うるさいわねっ!いいから黙って着いて来なさいよ!!」



・・・取り付く島もなし。

僕は半ばあきらめて、アスカの後を着いて行った。













どのくらい歩いただろうか。

アスカがふと、足を止める。




「ここよ、シンジ。」

「・・・!!」




アスカが指差したのは、真っ白な雪が一面に降り積もった空き地だった。

まだ朝早い時間のせいか、人によって踏み荒された形跡はなく、そこには柔らかくてさらさらとした

新雪が広がっていた。




「きれいでしょ?」

顔中に満面の笑みを浮かべて、アスカが僕の顔を覗き込む。


「・・・うん。」

「シンジに、見せたかったのよ。」

「・・・・・うん。」

「いや・・、違うわね・・・シンジと、来たかったのよ、ここに。」

「アスカ・・・。」








「ねえ、シンジ・・・まだ手が寒いんだけど・・・・・。」

「えっ?・・・ああ・・・・・、うん。」

アスカの言葉に導かれる様に、僕はアスカの手を取ろうとする。




瞬間。

ぼふっ!という音と共に、視界が真っ白になる。




「!?!?!?」

「ぶっ!!・・・あははははははっ!!」




一瞬、何が起こったか理解できずに、呆然と立ちすくむ僕。

辺りに響く、アスカの笑い声。




「・・・ひ、ひどいよ、アスカぁ・・・・・。」

「ふふふっ・・・・・アンタが鈍感だから、その罰よ。」

「・・・・・。」

「アタシが寒いって言った瞬間に、ちゃんと温めてくれなきゃ。」








少しいたずらっぽい笑みを浮かべて、アスカが僕の顔についた雪を払ってくれる。

その指が、僕の頬をかすめたとき、アスカの指が本当に冷え切っていたことを僕は知った。




急いで、アスカの手を握る。

そして、その手を僕のコートのポケットに突っ込む。


突然の僕の行動に、驚きの表情を隠せないアスカ。

でも、その表情はすぐに喜びの表情へと変化する。

うっすらと頬を桜色に染めて。









ポケットの中で、しっかりとつながれた手と手。









「あったかいよ、シンジ。」

照れくさそうにうつむきながら、小さな声でアスカがつぶやく。

「・・・うん。・・・遅くなっちゃって、ごめんね。」

「・・・・・いいよ、ありがと。」



「学校・・・遅刻しちゃうね。」

「いいよ、ゆっくり行こう。」








新雪の上を、手をつないで歩き出す僕たち。

互いの温もりを確かめながら。







空気はとても冷たかったけれど、僕たちのこころは暖かかった。







それは第三新東京市に、初雪が降った日の出来事。

それは・・・いつもと違う、登校風景。










* fin *







☆あとがき


はじめまして。しがないSS書きのぽてきちと申す者です。

P艦長とは某所でいつもお世話になっています (笑)

今回、初めて投稿させていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
季節モノということで、雪を扱ったSSを書きましたが・・・わたしの住んでいる地域は、
今年あまり雪が降っていません (^^;
雪というとロマンチックな雰囲気が漂いますが、雪に慣れていない地域だと、
ちょっと積もっただけで怪我人が続出したり、交通が麻痺したり、とにかくえらいことになります (爆)
ま、それは置いといて・・・。
好きな人と(コートのポケットの中で)手をつないで歩くのは、わたしの永遠の憧れであり、
煩悩であります (笑)
その辺を踏まえて読んでいただくと、より一層楽しんでいただけると思います (爆)
では、失礼しました。





艦長からのお礼の言葉。



本艦9人目の士官が来てくれました!

”あの”ぽてきちさんです!

さてさて・・・作品の方は・・・・・


うーん・・・・・・・きゅう・・・





(倒れました。再起動中)





はっ!

失礼しました。

あんまりらぶらぶなんで倒れてしまいました(笑)

いいっすねぇ・・・・なんかこう、情景が目に浮かんでくるようだ・・・・


んでわ、ぽてきちさんには今回の投稿によって


海軍少尉


に任官して頂きます(笑)

メールはこっち。








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