TOPへ/第2書庫へ/










DUAL MIND  第5話

 

 

 

 

 

「ねえ、お兄ちゃん。どうして会いに来てくれなかったの?旅に行っててもたまには来てくれればいいのに」

 

レイにとっては当然の質問だった。

大好きな兄。

その兄が全然自分に会いに来てくれなかったから。

もしかして自分は嫌われているのではないかとさえ思った。

だから聞いてみた。

返ってきたシンジの答えはレイにとっては喜ばしいモノであった。

だが、そこにあるシンジの苦しみに気付けるほどレイは大人ではなかった。

 

「レイには会いたかったよ。僕の大切な妹だからね」

 

「ホント!?」

 

「ああ、本当だよ。でも・・・」

 

「でも?」

 

「ここには奴が・・・、EVAがいるから・・・」

 

ケイジへの扉は目の前まで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DUAL MIND

第5話「精神的外傷」

BY ささばり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイジ。

圧倒的な力を持つ巨人が拘束されている檻。

LCLと呼ばれる水のようなものにつかり、顔の部分だけがでている。

その前に佇む少年。

シンジの顔は嫌な物を見ているかの様にゆがんでいる。

実際にシンジは意識的に嫌っているわけではない。

ただ、この巨人を見るとなぜか軽い吐き気をおぼえる。

生理的に受け付けないのである。

シンジの脳裏に浮かぶ光景。

目の前のモニタの中で溶ける様に消えてしまう母親。

フラッシュバック。

たくさんの大人達に押さえつけられるシンジ。

どんなに泣き叫ぼうが大人達は許してくれない。

引きずられていく先には巨大な化け物が・・・。

そのまま何か筒のような物に無理矢理入らされるシンジ。

泣き叫び暴れるシンジを大人達はロープでシートに縛り付ける。

ただひたすら泣きわめくシンジ。

だが、彼を助けてくれる者は居ない。

実の父、碇ゲンドウですら、冷たい目でシンジを見据えているだけ。

彼は狂っていたのだ。

妻を助けるために、実の息子を生け贄にしようとしている。

 

「う・・・うう・・・」

 

片手で頭を押さえるシンジ。

シンジの顔が歪む。

彼を苦しめている過去の出来事。

忌まわしい記憶が、今もシンジを捕らえて離さない。

 

<シンジ、落ち着け!その事を考えるな!>

 

シンジの頭にリュウヤの声が響く。

ビクッ!

一瞬身震いすると辺りを見回すシンジ。

自分のすぐ隣でレイが心配そうにシンジを見ているのがわかる。

そんな彼女の頭に手を乗せて撫でる。

 

「大丈夫・・・何でもないよ・・・」

 

そう言って微笑むシンジ。

だが、それはいつものような魅力的な笑みではなかった。

どう見ても辛そうな、無理をしている笑み。

 

「お兄ちゃん・・・」

 

レイは心配でしょうがないのか、頻りにシンジを見ている。

 

「大丈夫・・・大丈夫だよ・・・」

 

そう言って再び紫色の巨人をみるシンジ。

先程は久しぶりのことで取り乱したが、今はもう大丈夫なようだった。

何とか心の平静を保っていられる。

そんなシンジの頭の中に声が響く。

その低く澄んだ声を聞いただけで、シンジは安心できる。

シンジにとって、友でもあり、兄でもあり、父でもある存在。

碇リュウヤ。

 

<どうやら落ち着いたようだな>

 

(ありがとう、兄さん)

 

<・・・ああ・・・>

 

巨人を見ているシンジの表情に先ほどの様な嫌悪の色はない。

 

「ごめんね、君が悪い訳じゃないのに」

 

そう紫色の巨人に話しかける。

当然返事など帰ってくるはずはない。

シンジ自身もそんなことは期待していない。

しばらく巨人を見ているシンジ。

その時、シンジは気配を感じた。

彼のよく知っている気配を・・・。

その気配の主は彼の両親、ゲンドウとユイである。

シンジより遥か上、初号機の頭上にあるボックスからシンジを見下ろしている。

 

<やっと来たか。・・・しかし、あんな所からとはね>

 

リュウヤが忌々しそうに呟く。

その声を頭の中で聞きながら、シンジも同じ様なことを口にする。

 

「・・・どうして降りてこないんだよ・・・」

 

誰にも、すぐ隣にいるレイですら聞こえなかったほどの微かな呟き。

だが、レイに聞こえなくて良かったのかも知れない。

それ程、毒のある口調。

ユイとゲンドウはシンジの両親である。

普通は息子のもとに降りてきて再会を喜んでも良いはずなのだが、そんな素振りは見せない。

それが、息子との溝をますます深くしていると気づけない愚かな親。

 

<ふん。あいつは人を見下すことに慣れてるんだよ。そしてそれが実の息子でも同じというわけだ>

 

(自分達が選ばれた人間とでも思っているのかな?だから嫌いなんだ。父さんも母さんも・・・)

 

頭の中でそう吐き捨てるシンジ。

だが、それを表面に表すことはない。

シンジはただ微笑みを浮かべているだけ。

 

「よく来たな、シンジ」

 

碇ゲンドウの声。

無視。

しばし、ケイジを沈黙が支配する。

ゲンドウが、咳払いをする。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・よく来たな、シンジ」

 

気を取り直して言い直したゲンドウの言葉を、シンジは再び無視した。

それどころか、ゲンドウには見向きもしないで、隣にいるレイの方を見る。

レイは先程から、まるで飼い主に懐く子犬のようにシンジにすり寄っている。

 

「ところでレイ。これからいろいろ必要になるから買い物に行きたいんだけど、どこか良い店知らないかい?ここもだいぶ変わってるからわからなくてね」

 

両親の登場に全く関心を示さずに、レイに笑顔で話しかけているシンジ。

だが、レイは戸惑ってしまう。

 

「えっ?・・・お兄ちゃん、今は・・・」

 

「うん?どうしたんだいレイ。何か心配事があるなら相談にのるよ?」

 

そう言ってシンジはとても魅力的な笑顔をレイに向ける。

その笑顔に何となく赤面してしまうレイ。

 

「シンジ・・・」

 

碇ユイの声。

だが、シンジはひたすら無視する。

ゲンドウの顔がひきつっている。

 

<アハハ。シンジ、義兄さんの顔見てみろよ。面白いぞ!>

 

本当に可笑しそうに言うリュウヤ。

シンジもわかっているのか笑いを堪える。

 

「シンジ、こちらを向け!」

 

ゲンドウが怒鳴るとやっとそちらを向くシンジ。

だが、彼の口から出た言葉は・・・。

 

「レイ、馬鹿は高いところが好きって知ってる?」

 

「えっ、えっ!」

 

いきなり振られて困惑するレイ。

 

「いい加減にしろ、シンジ!」

 

<アハハハハハハハハハハハ!>

 

爆笑しているリュウヤ。

もし彼に生身の身体があったら、辺りを転げ回っていただろう。

そして、シンジもついに堪えきれなくなってしまう。

 

「ク、ククッ・・・父さん、母さん、久しぶりだね・・・プッ」

 

「あ、ああ。・・・葛城1尉!」

 

「は、はい!」

 

ミサトは、シンジを予定時間までに連れて来られなかった事を罰せられるのかと思っていた。

その上、腹いせに減俸処分にもされるかと思った。

だがゲンドウの次の言葉は全く違った言葉だった。

 

「初号機パイロットが到着した。直ちに発進準備」

 

「な!」

 

「?」

 

驚き声を上げるミサト。

よくわからないレイ。

すまなそうにシンジを見ているユイ。

 

<あいつ、もっとほかに言い方があるだろうに>

 

(・・・もういいよ、兄さん)

 

<・・・シンジ・・・>

 

ゲンドウとユイはシンジがエヴァを嫌っていることを知っているので、シンジが家を出ても引き留めようとしなかった。

もちろん、よかれと思って引き留めなかったのである。

もっとも引き留められたからと言って、エヴァの側に留まるシンジではなかっただろうが・・・。

そして最近、ゲンドウとユイがしきりにシンジに第三新東京市に来るように催促してきたのだ。

手紙には、『家族でまた一緒に暮らそう』と書いてあった。

だがシンジには、ゲンドウとユイが何故自分を第3新東京市に呼んでいるのか、その本当の理由がわかっていた。

結局はエヴァンゲリオン。

シンジの両親は、所詮化け物に魅了された科学者達にすぎなかった。

 

「これに乗れと言うの?父さん」

 

これ・・・エヴァに目をやるシンジ。

そんなシンジを見下ろしているゲンドウ。

 

「そうだ。お前にしか出来ないことだ」

 

「ほかのパイロットはいないの」

 

「レイと、後はドイツに1人いるが、どちらも起動すら出来ない」

 

ゲンドウがそう言ったその時。

ピクッ!

シンジの顔色が変わる。

 

「父さん・・・レイにそんなことさせてるの?僕はさっき見たよ。外で化け物が暴れてるのを。それと戦うんでしょ?そんな危ないのにレイを乗せるの?」

 

「仕方がなかろう。レイは選ばれたパイロットだ」

 

「へえ・・・そうなんだ。父さん達が選んだんでしょ?自分たちは安全な所に居られるようにさ!」

 

今まで大人しかったシンジが突然牙を剥く。

レイに危険なことをさせていると聞いて黙っていられなくなったのだ。

シンジはそれ程、妹のことを愛していた。

 

「お兄ちゃん、私はいいの!」

 

興奮しているシンジにしがみつくレイ。

そんなレイを見据えるシンジ。

 

「レイ、わかってるの?死ぬかも知れないんだよ?それも真っ先に!」

 

シンジの表情からはレイに対する愛情が見て取れる。

それを聞いていた大人たちは何も言えない。

皆胸が痛くなる。

シンジの言っていることは事実。

最も死亡する確率が高い前線へ、レイは赴かなくてはならない。

 

「自分たちだけ安全なところで・・・一体何様のつもりだよ・・・。これだから・・・父さん達は嫌いなんだ」

 

シンジの雰囲気が変わってくる。

レイは寒気を感じた。

 

「お・・・お兄ちゃん?」

 

<落ち着け、シンジ。感情をコントロールしろ>

 

シンジの頭の中にリュウヤの声が響く。

だがその言葉にも耳を貸さないシンジ。

 

「だいたい父さんと母さんはこいつが何だか知ってるんでしょ!こんな化け物にレイを乗せるなんてどういうつもりだよ!」

 

シンジはかなり興奮していた。

その時、シンジの頭に怒声が響く。

 

<落ち着けと言っているんだ!!この馬鹿が・・・レイちゃんを怖がらせてどうする!!>

 

そんなリュウヤの声にやっと我に返るシンジ。

 

(えっ・・・レイが?)

 

何とか冷静さを取り戻したシンジは、レイの怯えたような気配を察する。

 

(・・・うん、そうだね。ありがとう兄さん)

 

そしてすぐに隣にいるレイに微笑む。

その顔を見てホッとすると同時に、シンジに思いっきり抱き付くレイ。

シンジが我を忘れるほどレイの心配をしている。

その事実は、かなりブラコン気味の少女にはとても嬉しかったようだ。

そんなレイのことを軽く抱きしめているシンジ。

だが、その視線はゲンドウに突き刺さっている。

殺意。

シンジの視線には、明確な殺意が宿っていた。

やがてレイを離し、一呼吸おいてから再びシンジが口を開く。

その顔からは、殺意も含めた一切の感情が消えていた。

 

「僕が乗れば起動するの?」

 

「お前は一度起動させている」

 

その言葉にピクッとするシンジ。

 

<まったく・・・シンジのことを何だと思ってるんだ>

 

(・・・しかたないよ、あいつは・・・父さんは喰われたことないもの)

 

一瞬沈んだ表情をしたが、すぐに無表情になるシンジ。

 

「僕が乗らなかったらどうなるの」

 

「世界が滅びるだけだ」

 

<それはそれで興味あるな・・・それに、ゴキブリは生き残ってそうじゃないか?・・・あっ、後ゲンドウとかいうゴキブリの仲間も・・・>

 

そういった言葉がシンジの頭に響く。

その何気ない冗談が、シンジの心を軽くする。

 

(ふふっ、ゴキブリ・・・父さん・・・確かにしぶとく生きていそうだね)

 

そう頭の中で答えを返しながら、シンジは笑っていた。

だが、所詮は頭の中だけでのこと。

シンジの実際の表情は、感情のない冷たいものだった。

 

「・・・わかった。僕が乗るよ」

 

そう言って、つまらない物でも見るかのようにゲンドウとユイを見据えるシンジ。

その視線に耐えられなくなって言葉を絞り出すユイ。

 

「・・・シ、シンジ・・・」

 

だが、シンジはユイに何も答えなかった。

 

<まだ許せないのか?シンジ>

 

(仕事だって事は理解してるんだけど、どうしても許せないんだ)

 

<そうか・・・そうだな・・・>

 

リュウヤの声は、少し悲しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セカンドチルドレンと弐号機を至急ドイツから呼び寄せろ」

 

「良いのか?未だ起動すら出来ていないのだぞ」

 

「かまわん。起動実験ならここでも出来る。それにいざと言うときの囮としても使える」

 

「・・・わかった」

 

冬月との話が終わるとゲンドウは1人考え込む。

ユイは初号機の起動準備のためここにはいない。

 

(シンジ、我々を許してはくれんのか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発令所。

ここから全てがコントロールされている。

そしてそれらを管理しているのは、マギと呼ばれる3台のスーパーコンピュータである。

赤木リツコはウィンドウに映るシンジの顔を見ている。

 

「シンジ君・・・ごめんなさい」

 

そう言ってすまなそうな顔をするリツコ。

他の職員達は少し驚く。

彼女のそんな顔を見たことがない。

いつも凛として、冷たいという印象もあるリツコ。

だが、シンジに対する言葉と表情には、間違いなく相手をいたわる心遣いがあった。

 

『リツコ姉さんのせいじゃないですよ。あのヒゲ眼鏡が全て悪い』

 

「ヒ・・・ヒゲ・・・プッ」

 

思わず吹き出してしまうリツコ。

 

<フッ、勝った・・・>

 

そう言って何故か勝ち誇っているリュウヤ。

だが、内輪ネタなのかシンジにも意味がわからない。

未だ笑いを堪えているリツコに微笑むシンジ。

 

『そうそう、リツコ姉さんは美人なんだから笑ってなきゃ』

 

「フフ、シンジ君ったら・・・しばらく会わないうちにずいぶん上手になったわね」

 

『リツコ姉さんの笑顔・・・僕は大好きですよ』

 

そう言って微笑むシンジ。

 

「あ、ありがとう」

 

さすがのリツコもシンジの笑顔を目の当たりにして、照れてしまったようである。

赤木リツコ。

シンジは子供の頃、周囲の大人達に気味悪がられていた。

リュウヤの居るせいで、常識をはるかに越えた聡明さの持ち主だった。

子供のような無邪気さがない。

ユイですら及ばないほどの学術的知識。

そして機密事項を何でも知っている。

年齢とは明らかに釣り合わない戦闘能力。

そんなシンジを、両親ですら敬遠してしまったのだ。

だが、リツコはそんなシンジの事を実の弟のように可愛がってくれた。

彼女自身、何故だかわからなかった。

もしかしたら、自分が愛した男が可愛がっていた甥だからなのかも知れない。

シンジにとってもそんなリツコは実の姉同然の存在だった。

だからシンジはリツコの事を「リツコ姉さん」と呼んで慕っているのだ。

 

『そうだリツコ姉さん。マナちゃんは元気ですか?』

 

「フフッ、元気よ。あなたが今日帰って来るっていったら、ネルフにくるって言いだして大変だったのよ?」

 

赤木マナ。

リツコの実の娘である。

ちなみにリツコは未だ独身である。

彼女が今まで愛した男性は1人だけ。

だが、その彼はすでにこの世には居ない。

 

『あれから3年・・・大きくなったでしょ』

 

「もう小学4年生よ。ちゃんと女の子として扱ってあげないと怒るわよ?」

 

『そうですね。マナは聡明な子ですから』

 

「そうね・・・あの人に・・・あなたの叔父さんに似てとても聡明な子よ」

 

そういって少し寂しそうな顔をする。

それを見たシンジの頭にリュウヤの言葉が響く。

 

<リツコちゃん・・・>

 

(・・・兄さん。リツコ姉さんは今でも兄さんの事を・・・)

 

<・・・>

 

リュウヤはシンジの言葉には答えない。

その時リツコが気を取り直して言う。

 

「ごめんなさい・・・後でゆっくり話しましょう?マナも逢いたがっているし・・・」

 

そういって笑顔を浮かべるリツコ。

その顔を見て少しホッとするシンジ。

 

『そうですね。今は目の前の事を片付けましょう』

 

リツコはディスプレイを見る。

そこには様々な情報が表示されている。

 

『どうですか?リツコ姉さん』

 

「43.1%よ・・・悪くないわ」

 

リツコの言葉を聞いて少し顔をしかめるシンジ。

だが、すぐにいつもの優しげな表情に戻る。

 

『思ったよりありますね?てっきりシンクロしないかと思いましたよ』

 

そう言ってニッコリ笑顔になるシンジ。

その顔を見てオペレーターの伊吹マヤが顔を赤らめている。

だがリツコはそれでも少し辛そうなシンジの表情を正確に読みとっていた。

 

「シンジ君・・・まだ昔のことを・・・」

 

『ええ、忘れることは出来そうにありません』

 

リツコもあの事件を目の当たりにしていたから知っていた。

姉を助けるためにエヴァに消えていった青年。

そして失敗。

泣きわめく男の子をエントリーさせる大人たち。

男の子は帰ってきたが、心はぼろぼろだった。

いや、少し普通じゃなくなっていた。

嫌いになるのは当たり前である。

 

「シンジ君、あなたは知っていると思うから操縦方法等は省くわよ?」

 

『構いません。それよりリツコ姉さん、実はお願いがあるんですけど・・・』

 

急に真面目な顔をするシンジ。

リツコはそれを見て、同じように真面目な顔をする。

緊迫した空気が流れる。

 

「いいわよシンジ君。言ってごらんなさい」

 

『・・・これが終わったら、一緒に買い物に行きませんか?』

 

「へ?」

 

思いっきり間の抜けたリツコの声。

発令所の誰1人として、リツコのそんな声を聞いたことがなかった。

 

『実は、ここには手ぶらで来たんで着替えすら持ってないんです』

 

リツコは呆然としていて何も答えられない。

 

『付き合ってくれたらお礼に・・・何が良いかな・・・手料理とか・・・』

 

その言葉に、リツコが我を取り戻す。

そして、リツコは信じられないほどリラックスしていた。

 

「手料理・・・わかったわ・・・。それにありがとうね、シンジ君」

 

リツコには気付いたのだ。

シンジが、自分の緊張もほぐしてくれたことに。

これから人類の存亡をかけた一戦が行われようというのだ。

たとえリツコであっても緊張するだろう。

シンジはそれを見抜き、わざとリツコの気の抜けるようなことを言ったのだ。

 

「はいはい、もう良いわね?」

 

いきなりリツコとシンジの間に割り込んでくるミサト。

何となく不機嫌そうなリツコ。

だが、この場はあえて無視するミサト。

 

「いい、シンジ君。使徒の正面にだすから一気に倒して」

 

いきなり無茶なことを言うミサト。

しかしシンジは全く感情のない声で返した。

 

『シンクロしたことはありましたけど、ちゃんと動かすのは今度が初めてですよ』

 

だがミサトはそれを無視した。

それは大人の傲慢。

それとも復讐のためか。

 

「それじゃあシンジ君、良く聞いてね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごい・・・」

 

発令所は静まり返っていた。

エヴァが動けば使徒に勝てると信じていた。

だがここまで圧倒的だとは誰1人思っていなかった。

 

「も、目標、完全に沈黙しました」

 

オペレーターの絞り出すような声。

皆がメインモニタの光景に目を奪われている。

そこにはコアを砕かれた使徒が転がっている。

そして傍らに佇むエヴァンゲリオン初号機。

その右腕からは使徒の体液らしき物が滴っている。

作戦開始から1分も経っていない。

エントリープラグ内を写すサブモニタには『SOUND ONLY』の文字。

 

『終わったよ。どうすれば良いの?』

 

だがその声に誰も答えられない。

ユイ、そしてゲンドウでさえ。

2人ともエヴァの能力を十分知っている。

だがそれでも今の戦いは2人の想像を遙かに超えていた。

皆、黙ってウィンドウを見ていた。

そこにいる破壊神を・・・。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

<あとがき>

どうも、ささばりです。

いつも読んでいただきありがとうございます。

やっとエヴァに乗りました。

使徒を倒すシーンは、次回にまわします。

皆様、感想等お待ちしてますので、沢山くださると嬉しいです。

それでは、次回をお楽しみに。

 




艦長からのお礼


ひとつ目の感想。
リッちゃん、いい感じ(爆)

ふたつ目の感想。
私が似たような立場だったら、チャカ2丁握りしめてタマ殺りに走ってます(笑)

さあ、いい感じになってきた次回が見たけりゃここにメールを出すんだ!(爆)

TOPへ/第2書庫へ/