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The Battleship ”P−31” 6000HIT記念投稿小説


The Theater 外伝

防空軽巡洋艦「綾瀬」生誕秘話


作 ベイオウルフ




彼が最初に記録に載ったのは、1937年のことであった。

極東の軍事大国「大日本帝国」の海軍第三次補充計画において、

初めて彼は記録上現れることになる。


1937年8月、彼の建造命令は海軍省により発令され、

同10月、呉海軍工廠にて起工式が行われた。

そのとき初めて、彼は「綾瀬」と名づけられた。

「綾瀬」は後に日本の主力となるであろう、空母群を守るために設計された。

基本設計は、全長203メートル、全幅21メートルの重巡に匹敵する船体を持ち、

その船体を33ノットオーバーで疾走させる強力な機関を搭載する。

新開発の長砲身10cm高角砲を連装16基32門装備、

砲管制には優秀な98式光学射撃指揮装置が搭載され、2基の高角砲を管制する、

これは後により強力な対空射撃管制レーダーに改装された。

「綾瀬」が完成した暁には、あらゆる敵勢航空兵器から空母群守り抜く無敵の盾となるはずであった。

しかし、米軍との戦いがすべてを変えてしまった。


「綾瀬」の工事が終了し、主砲や機銃、機関の試験が行われ、数々の検査に合格したのは、

1942年4月18日、くしくもドゥーリットル爆撃隊によって東京が初めて空襲されたその日であった。

この空襲による直接的な被害は少なかったもの、軍部はショックをうけ

準備不足のままミッドウェイ攻略作戦を実施してしまう。

この作戦で海軍は4隻の航空母艦を失い。

ここに「綾瀬」が守るべき第一航空艦隊は壊滅してしまったのだ。


行き場のなくなった「綾瀬」に海軍は冷たかった。

守るべき空母群の再建は当分先の話であるし、その時まで港で腐らせているわけにもいかない。

艦隊戦に使おうとしても魚雷装備の欠如が問題視された。

というより、誰も魚雷の載ってない巡洋艦など乗りたくなかっただけなのかもしれない。

ただちに重巡に改装するか高角砲を降ろし魚雷を搭載し重雷艦にしてはどうかという

声もあったが、その改装をするドックは空母を建造しなければいけない。

いっそのこと、トラック島の泊地に座礁させ泊地防衛艦にしてしまえ、などという意見すら出始める始末だった。

「綾瀬」の運命は生まれた直後だと言うのに風前の灯火であった。


だが、そこに「綾瀬」を救う物が現れた。

南方作戦の終結により、本土へ帰還していた碇シンジ中佐である。

彼は南方作戦中に水雷戦隊を率い敵艦4隻を撃沈し、その功績を受けこのたび中佐に昇進したばかりであった。

誰が彼を「綾瀬」の行く末を決める会議に呼んだかは不明だが、

結果として、この事が「綾瀬」を救うことになった。


それは、会議も半ばになり意見が出尽くした時のことであった。

「ちょっとよろしいですか?」

「なんだね?碇中佐」

「この「綾瀬」、そのまま使ってはどうでしょうか?」

「なに?!それはどういうことだね?碇中佐」

「たしかに「綾瀬」は魚雷を載せてなく大型艦艇に対する

攻撃力の不足は感じます。」

「しかし、先の南方作戦においては軽巡の役目は敵の水雷戦隊に対する、

主砲射撃が中心で魚雷発射の機会はほとんどありませんでした。

しかも、長良級では火力の不足が非常に目立ちました。」

「つまりどういうことだね?」

「はい、つまり初速の早い高角砲を多数装備し、制圧力の優れた「綾瀬」は

敵の水雷戦隊の撃破に専念して、大型艦の撃破は後続の駆逐艦に任せてしまうのです。」

「面白くはないな」「しかし、良い考えではあるぞ」「うむ、改造の必要もないしな」

「しかし、問題がある、誰がそんな艦(ふね)に乗りたがるのかね?」誰もが顔を見合わせた。

「良ければ、私が乗りましょう」

「なに!君がかね?」

「はい、言い出しは私ですし、「綾瀬」に興味もあります。ぜひ、私を乗せてください!」

この時の辞令は出るのが今までで一番早かったと、後に碇中佐は語ったという。


中佐が艦長の辞令を受け、乗艦、訓練を開始し半月の日時が過ぎたとき、

「綾瀬」の元に一通の命令が届いた。

「本日、14:00。物資を積み込み次第、トラック島へ出港せよ」

それが、後に「太平洋最大の激戦」と呼ばれる戦いの戦笛であることにだれも気づことはなかった。


Fin



あとがき



こんにちは、ベイオウルフです。

初めてHTMLで書いてみたので

どこか不都合があるかも知れませんがお許し下さい。


この話は「綾瀬」の設定を見て思い付きました。

いろいろ参考にしてる本はありますが、詳しくは秘密です(笑)。

ちょっと、濃すぎるかもしれませんが、許してやって下さい。


では、6000HITおめでとうございました。

by ベイオウルフ





艦長より感謝の言葉。



ベイオウルフさんから投稿していただきました!

しかも我が愚作「The Theater」の外伝です。

嬉しいッス、涙で目が霞みます(笑)。

第1部でシンジが乗り込んだ「綾瀬」の完成までのお話です。

守る家を失った番犬がシンジに拾われるまでのいきさつです(笑)。

ベイオウルフさん、ホントにありがとうございました!

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