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妖精の守護者  第13話

 

 

 

 

 

愛おしそうにアキトの顔をそっと撫でる。

 

「アキトさん・・・」

 

アキトの顔にゆっくり顔を近づけるルリ。

唇が触れ合う。

優しく。

想いを込めて。

 

「愛してます・・・アキトさん」

 

そう言って部屋を出ていくルリ。

部屋に沈黙が訪れる。

ピ・・・ピ・・・ピ・・・。

医療器具の無機質な音だけがあたりに響く。

その時・・・。

アキトの右目から涙が一筋こぼれた。

まるで愛する者との別れを悲しむかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後、アキトはナデシコを去った。

ルリとアキト、2度目の別れだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精の守護者

第13話「追憶」

BY ささばり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここは・・・どこだ』

 

指一本動かすことの出来ないアキト。

辺りは闇。

何も見えない。

 

『俺は・・・どうしたんだ?』

 

そう考えながらアキトの意識は闇に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ようこそ諸君。私はこの研究所の責任者、ヤマサキです。よろしく』

 

辺りを見回すアキト。

10人くらいの人が居る。

 

『君たちにはこれから私達の実験に協力して貰うことになります』

 

見窄らしい検査着のような物を着てモニターを見ているアキト。

そこに映る研究者を見る。

 

『君たちの貴い犠牲は決して無駄には・・・』

 

(犠牲・・・どうなってるんだ?あの変な奴に連れてこられたけど・・・)

 

『ぜひ火星の後継者のために・・・』

 

しばらくヤマサキの演説は続くが良くわからなかったアキト。

壁に寄り掛かると膝を抱えて寝ようとする。

ふと隣を見る。

同じようにしている少女。

アキトより1つか2つ年下だろうか。

可愛いと言える顔立ちの少女。

艶やかな黒髪が印象的だ。

少女と目が合う。

だがアキトはすぐに視線をはずす。

誰かがドアを開けて部屋の中に入ってきたのだ。

 

『初めまして・・・テンカワアキト博士・・・こちらに来てください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何日経ったのかわからない。

ここがどこかもわからない。

実験、人体実験。

奴ら。

ヤマサキ・ヨシオ。

狂ってる。

北辰。

狂ってる。

もう嫌だ・・・。

俺は・・・いつまで正気でいられるだろうか。

ルリちゃん・・・元気にしてるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしたんだテンカワ君。この実験を始めてまだ10日目じゃないか』

 

アキトが現在やらされているのは戦艦オペレーションの実験。

IFS強化体質にされたアキトは、休息無しのオペレーションにどれだけ人間が耐えられるかの実験をさせられている。

 

『頼む・・・ねせて・・・ガア!』

 

すかさずアキトの身体に電気ショックが送り込まれる。

食事をとる事も、水を飲むことも、寝ることすら許されない。

地獄。

 

『博士・・・どうやら限界ですね』

 

研究員の1人がヤマサキにそう進言する。

その言葉に少し考え込むヤマサキ。

 

『ふぅん・・・人間って脆いね。じゃあこの辺でやめよう。明日休んだらまたやるからね』

 

その言葉を聞きながら崩れ落ちるアキト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北辰。

実験の合間に俺を呼びだしては、俺の身体を切り刻む。

浅く・・・でも無数に・・・。

全身血まみれになる。

あいつは俺の悲鳴を聞いて笑っている。

異常だ・・・。

そう言えば今日は2人帰ってこなかった。

他の部屋もたくさん帰ってこなくなってるらしい。

またか・・・みんな死んでしまったんだろうな。

そして新しく2人来た。

いつまで保つか・・・。

どうしてこんな事に・・・。

・・・。

そういえば、初めて彼女としゃべった。

アヤカ・・・それが名前だって。

北辰にやられた傷の手当をしてくれた。

良い娘だ。

笑顔の可愛い女の子・・・16歳だっけな?

・・・明日も実験か・・・。

ルリちゃん・・・あの頃に戻りたいよ。

君と一緒にいられたあの頃に・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは・・・昔の記憶・・・』

 

暗闇の中、1人アキトは考える。

 

『これはあの忌まわしい過去・・・こんな物を見るなんて・・・死ぬのか、俺は』

 

アキトの意識は再び闇に飲まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうした、テンカワアキト。早くジャンプして逃げなければ喰われてしまうぞ』

 

半球状の部屋の中。

ガラス窓の外から白衣を着たたくさんの人間達が覗いている。

その中にいる人物を。

テンカワアキト。

 

『よ、寄るな・・・来るなよ・・・シッ、シッ』

 

アキトの正面には猛獣。

虎。

その口からよだれを垂らしながら近寄ってくる。

 

『テンカワ君、早くしないと本当に喰われちゃうよ』

 

白衣を着た内の1人が言う。

ヤマサキ・ヨシオ。

 

『そんなの出来るわけないじゃないか!それより出してくれ、頼むよ!』

 

懇願するアキトをあざ笑う白衣の面々。

そうしている内にも少しずつ近付いてくる猛獣。

 

『よ、よせ・・・やめろ。・・・や』

 

その瞬間飛びかかる虎。

とっさに左腕を出すアキト。

グシャ!

 

『ウワアアアァァァァ!』

 

アキトの左腕に噛み付いた虎はそのままアキトを振り回す。

その腕を引きちぎるかの様に。

ゴリゴリ!

牙が骨をかみ砕く。

吹き出している血。

赤い。

ブチブチ!

引きちぎられる筋肉や血管。

次の瞬間腕を噛みちぎられ振り飛ばされるアキトが居た。

ドン!

床に叩き付けられる。

息が詰まる。

左腕の感覚がない。

何とか顔を上げるアキト。

虎。

アキトの左腕をくわえた虎がゆっくりと近付いてくる。

そして。

奴が飛びかかってきた。

 

『ウワアアアァァァー!』

 

刹那、アキトの身体が輝き出す。

周囲にまぶしいほどの光が満ちる。

次の瞬間。

アキトは部屋の外にいた。

それを見て驚愕する科学者達。

1人ヤマサキだけは歓喜の声を上げる。

 

『すごい!やっぱり彼はA級ジャンパーだね』

 

それを聞き口々に騒いでいる科学者達。

 

『間違いない・・・あの状態から逃げたのだ。ボソンジャンプ以外にはない!』

 

『ジャンパーだとは知っていたがまさかA級ランクだったとは!』

 

『貴重なサンプルだ。しばらく面白くなるぞ』

 

『よし・・・早く手当をしてね。出血多量なんかで死んで貰っては面白くないからね』

 

ヤマサキがそう言うと医療班がアキトに駆け寄る。

薄れゆく意識の中、アキトはヤマサキを睨み付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしてもアヤカは良い娘だ。

俺の腕を見て泣いてくれた。

彼女も実験されているはずなのに、そんなことはおくびも出さない。

俺は彼女に・・・惹かれているのかも知れない。

・・・俺の・・・腕・・・。

熱い・・・熱い・・・熱い・・・。

ここは地獄だ・・・。

ルリちゃん・・・いじめられてないだろうか。

逢いたい・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヤマサキ・・・。そんな奴居たか?アヤカ・・・。誰だ、俺はこんな娘知らないぞ。あそこにいた連中の名前さえ知らない・・・どういうことだ?』

 

暗闇の中、何も出来ずにいるアキト。

自分が生きているかも死んでいるかもわからない。

ただ走馬燈のようによみがえる忌まわしい過去の記憶。

しかし、それにはアキト自身も知らないことがあった。

ヤマサキという研究者の事。

アヤカという娘の事。

アキトには全く覚えがなかった。

 

『やめてくれ・・・もうこんな物見せるな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『テンカワ君、君は最近仲良しの女の子がいるようだね』

 

アキトに話しかけるヤマサキ。

それを睨み付けるアキト。

 

『・・・それがなんだ』

 

『いや・・・ただ君があまり非協力的だと彼女にすべて実験して貰うよ』

 

そう言ってニヤリと笑うヤマサキ。

悔しそうに呟くアキト。

 

『・・・汚いぞ・・・』

 

アキトの言葉を聞いておかしそうに笑うヤマサキ。

 

『あははは、テンカワ君。言葉には気を付けて方が良いよ。これから君にしようとしている実験、もう60人ほど死んでいるんでね。あまり変な事言うとあの娘で実験するよ・・・アヤカちゃんだっけ』

 

『クッ・・・わかった・・・好きにしろ・・・』

 

『おや?君は物の頼み方を知らないようだね』

 

馬鹿にしたようなヤマサキの言葉。

 

『・・・お願いします・・・』

 

屈辱に震えながら言うアキト。

そんなアキトをにやにや見ているヤマサキ。

 

『誰に?』

 

『・・・お願いします・・・ヤマサキ博士』

 

その言葉を聞いてニヤリと笑うヤマサキ。

 

『そこまで頼むのなら仕方がない。さて、君はどうなるか・・・楽しませてくれよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体が動かない。

うまく動かない。

あの実験か・・・。

アヤカ・・・俺に寄り掛かりながら寝ている。

きっと泣き疲れたんだろうな。

俺のために泣いてくれる彼女。

俺のことを心配してくれる彼女。

でも俺は・・・君に何をしてあげられるんだろう。

そうだ・・・ルリちゃん・・・ちゃんとご飯食べてるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この部屋に監禁されているのもアキトとアヤカだけになった。

アヤカは実験だ。

アキトは身体が動かない。

ふと目を開ける。

アキトの知らない女の子がいる。

無表情な顔。

金色の瞳。

薄桃色の髪。

 

『アナタダレ?』

 

感情のこもっていない声。

その言葉に辛うじて顔だけを向ける。

 

『ルリちゃん!・・・じゃない。髪の色だって違うのにな』

 

そう言うと女の子は少し首を傾げる。

 

『ルリ・・・ダレ?』

 

またもや感情のない声。

そんな女の子を見ているアキト。

 

『アナタモ・・・ワタシデジッケンスルノ。ワタシヲイジメルノ?』

 

その言葉に愕然とするアキト。

ヤマサキ、北辰・・・貴様達はこんな子供まで。

 

『大丈夫、俺は君をいじめたりしないよ』

 

『ホントニ?』

 

『ああ、本当だよ。ねえ、君名前は?』

 

しばらく少女が考え込む。

そして口を開く。

 

『ナンバーゼロニトヨバレテル。ソレガナマエ』

 

『そんな、そんなの名前じゃないよ』

 

『ソウナノ?』

 

小首を傾げる少女。

仕草は可愛いが顔は無表情のままだ。

 

『ああ。そうだ、俺が名前を付けてあげるよ』

 

『ホント』

 

『ああ。うーん、何が良いかな。そうだ!』

 

『・・・』

 

『ラピス、ラピス・ラズリ。どうかな』

 

『ラピス・ラズリ・・・イイ、ソレデイイ。ワタシハラピスラズリ・・・』

 

『うん、よろしくラピス。俺はテンカワアキト』

 

そう言ったアキトの顔にぺたぺた触る。

そしてラピスはこういった。

 

『アキト・・・アタタカイ。・・・イママデダレモクレナカッタ・・・アタタカサ』

 

ラピスはそのまま研究員が来るまでアキトのそばを離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時的なものかと思ったけど、どうやらそうではないらしい。

身体が動かない。

意識しても動かない・・・いや、微かには動く。

ラピスって子・・・ルリちゃんに似てた。

何とかしたい・・・だけど・・・。

可哀想だけど・・・俺には助けられない。

そういえば今日、アヤカに好きって言った。

こんな状況だけど・・・だからこそハッキリ伝えておきたかった。

泣いてたっけな・・・嬉しいって。

その後アヤカとキスした。

彼女の温もりを感じた。

温もりだけが、俺に生きていることを教えてくれる。

もし、この温もりを失ったら・・・俺は・・・。

ルリちゃんか・・・もう逢えそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしたテンカワアキト、あの時のように抵抗しても良いのだぞ』

 

そう言いながらアキトの首を軽く絞める北辰。

アキトに馬乗りになっている。

実験の後遺症ですでに体の自由がきかないアキトに、北辰の戒めから逃れる術はなかった。

 

『かはっ・・・やめて・・・く・・・かはっ』

 

『フフフ、苦しそうだな。良い表情をしているぞ』

 

アキトの苦しむ顔を見て嬉しそうに笑う北辰。

アキトの喉に掛けていた手を退ける。

そしてゆっくりと小刀を抜く。

 

『さて・・・面白いことをしてやろう。まず選べ・・・右か左か』

 

『げほっ・・・ごほっ・・・何の話だ?』

 

『まあ良い・・・では左だ』

 

そう言ってアキトの左目に小刀が突きつけられる。

北辰の指がアキトの瞼を押し広げる。

 

『クックックッ、楽しむが良い。自らの眼に小刀が押し込まれる瞬間を』

 

『な!よっ、止せ・・・やめろ!』

 

『さあ、汝はどんな風に鳴いてくれるのかな?』

 

じわじわと迫ってくる小刀。

逃げることの出来ないアキト。

部屋に、アキトの絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱い。

左目が熱い。

アヤカが居なかったら、きっと俺は自殺してる。

愛してる、アヤカ。

・・・ルリちゃん・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『殺してやる!ヤマサキ・・・絶対に殺してやる!』

 

床に這い蹲りながら叫ぶアキト。

それを見ながら悩むヤマサキ。

 

『彼はどうしてあんなに興奮しているんだい?』

 

自分の後ろにいる研究員に聞くヤマサキ。

 

『ほら、この前女を1人・・・ヤマサキ博士も楽しんだでしょ』

 

その言葉にぽんっと手を叩くヤマサキ。

 

『ああ・・・あの子か・・・なかなかエッチな身体の娘だったね』

 

『その時ほら、彼も参加させたでしょ。見るだけですけど』

 

その言葉にニヤリと笑うヤマサキ。

アキトを見る。

呪い殺さんがばかりのアキトの視線。

 

『なんだテンカワ君、君もしたいならそう言えばいいのに。アヤカちゃん、可愛かったね・・・アキト助けて!・・・とか言ってさ』

 

その言葉を聞いてアキトが激昂する。

 

『ヤマサキー!殺してやるー!』

 

右目でヤマサキを睨み付けるアキト。

そんなアキトをニヤニヤしてみているヤマサキ。

 

『でもあの娘ももうちょっとがんばってくれればいいのにさ。テンカワ君を追い出した後壊れちゃったよ、心がさ・・・。確か60人目くらいだったかな?』

 

その言葉に一瞬アキト言葉をとめる。

だが次にアキトの言ったのは呪いの言葉だった。

 

『ヤマサキィィィィィィィィィ!!殺す!!絶対に殺してやる!!俺が地獄に堕ちても!!どこに隠れようが必ずお前を見つけだして殺してやる!!皆殺しだ!!皆殺しにしてやるー!!この研究所の奴らも!!火星の後継者も!!1人残らず殺してやるー!!!』

 

叫びすぎて喉を痛め血が出て、口から吐くアキト。

だがそれでもやめない。

呪詛。

一瞬身震いする研究員。

 

『このままでは実験できませんよ・・・博士』

 

その言葉を聞いて困った顔をするヤマサキ。

しばらくして口を開く。

 

『あれを使う』

 

『あれって・・・まさか』

 

驚愕している研究員を放っておいてヤマサキがアキトに話しかける。

 

『テンカワ君・・・実は新しい薬があってね。成功すれば君の最近の記憶を消せるんだけど・・・今日はその実験をするね・・・あ、後あれもやろうか・・・』

 

そう言ってアキトの首筋に何かを注射するヤマサキ。

次第にアキトの意識に闇が広がっていく。

 

『そうだ、良いことを教えてあ・・るよテンカワ・・・・アヤカちゃんはまだ死んでな・・・・・・北辰が少し遊び・・・・・・・・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっぱり駄目だったな・・・う〜ん、記憶は消せているだろうけど、直接脳に打つのは危険か・・・良い薬だと思ったのにな』

 

『視力・・・聴力とも確認できません。詳しく検査なさいますか?』

 

『いや・・・もう良いや。どうせさっき入れたナノマシンの影響でしょ?』

 

『ええ・・・やはり多すぎましたね』

 

『そうだね・・・でも死んでないのはすごいけどね』

 

『ヤマサキ博士・・・彼、どうします?』

 

『あ、もういいから捨てといて』

 

『わかりました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・思い出した。アヤカ・・・愛していた。本当に愛していた・・・でも、もう遅いよ・・・』

 

あんな状態だったけど、本気で愛し合っていた。

あの時助けられなかった自分が不甲斐ない。

頭から離れないアヤカの悲鳴。

 

『・・・ごめんなアヤカ・・・助けられなかった・・・』

 

許してくれるわけがない。

アヤカもきっと自分を恨んでいる。

そう思い始めるアキト。

 

『・・・ヤマサキ・・・北辰・・・』

 

憎い!

憎い!

憎い!

殺したい!

殺したい!

殺したい!

・・・。

だが負けた。

アキトは北辰に敗れた。

しかも今の今までヤマサキのことを忘れていた。

 

『・・・今更何が出来る・・・』

 

辺りは闇。

まるでアキトの心を表しているかのような。

深い闇。

 

『・・・北辰に負け・・・復讐も果たせず・・・俺に何が残ってるって言うんだ・・・』

 

自嘲的に笑う。

 

『未熟者・・・か・・・』

 

思い出す。

ルリの笑顔。

ラピスの笑顔。

そして・・・アヤカの笑顔。

だがそれすらもアキトを助けることは出来ない。

次第にアキトの意識は闇に飲まれていく。

薄れゆく意識の中・・・アキトは呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・もう・・・疲れたよ・・・』

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

<あとがき>

どうも、ささばりです。

この度も最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は暗いです。

実験の記憶。

アキトを苦しめている記憶。

それを書いてみました。

感想等是非ください、お願いします。

それでは次回をお楽しみに。

 



艦長兼司令からのあれこれ

えーと、艦長です。

なんといいますか、今回は(笑)を付けて書くのがためらわれるほどハードですな。

アキトの忌まわしき過去。

思い出したくもない記憶。

だが皮肉にも、その記憶が呼び起こす激しい憎悪が彼の生きる原動力。

ジレンマ、ですな。


さあ、早いトコ続きが見たければここにメールを出すんだ!


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