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妖精の守護者  第23話

 

 

 

 

 

そしてエリナ、ラピス、ルリカの3人が声を揃えて言う。

 

「アキト君はあなただけのものじゃないのよ」

 

「アキトはルリだけのものじゃない」

 

「お父さんはルリさんだけのものじゃありません」

 

ブチ!

何かが・・・キレた。

顔から血の気の引いていくアキト。

珍しく、狼狽している。

恐る恐るルリに目を向けると・・・。

 

「説明・・・してもらえるんですよね。ア・キ・ト・さん」

 

顔は笑っているが、目がマジだ。

アキトは目を瞑り胸のロザリオに触れる。

 

(アヤカちゃん、もう駄目だ・・・俺は逃げたいよ)

 

アキトには少女が苦笑いしているように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精の守護者

第23話「和平への階段」

BY ささばり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナデシコ、トレーニングルーム。

2人の男が向かい合っている。

片方は、白鳥九十九。

もう片方はテンカワアキト。

アキトの顔には引っ掻き傷の様な物が付いている。

その傷で、彼が今までどれ程の修羅場をくぐり抜けてきたかがわかる。

2人は身動き1つしない。

構えをとっている九十九に対して、アキトは全くの自然体である。

 

「どうした九十九・・・腕が落ちたのではないか?」

 

笑みを浮かべながら言うアキト。

あくまで余裕である。

だが、九十九はそれどころではなかった。

アキトと向かい合っているだけで、全身に汗が滲んでくる。

アキトの金色の瞳を見ただけで、恐怖を感じる。

足が、震えている。

 

(・・・クッ・・・本当に人間か?・・・)

 

九十九は木連式柔の免許皆伝で、木連の中でも10指に入るほどの実力者である。

その彼が、恐怖を感じている。

逃げたくても逃げられない。

それ程の恐怖を。

 

「九十九・・・俺は人間だよ」

 

「!!」

 

驚愕する九十九。

 

「な・・・なぜ・・・」

 

声が震えている。

アキトの視線は九十九の魂をも射抜く。

金色の、神だけが持つ全てを見通す瞳。

 

「目が言っている・・・お前は化け物かってな・・・」

 

そう言って少し寂しそうに笑うアキト。

その笑顔に衝撃を受ける九十九。

 

「す・・・すまん・・・」

 

「良いさ・・・俺には力が必要だから・・・」

 

そう言ってすっと目を細めるアキト。

殺気を放っているわけではない。

傍目から見れば、普通に立っているだけ。

それなのに、九十九は恐怖を感じている。

彼の本能が、アキトに恐怖しているのだ。

 

「かかってこないのか?・・・」

 

行けるはずがない。

今のアキトに立ち向かえる存在がいたら見てみたいものだ。

そう思う九十九。

すると、アキトが視線を外す。

そして、気が抜けたのかその場にへたり込んでしまう九十九。

 

「お前は大した奴だ。相手の強さがわかる人間は長生きするそ」

 

九十九に歩み寄りながら言うアキト。

それを見ている九十九。

 

「・・・それ、誉めているのか?・・・」

 

「そうとってくれてかまわない」

 

そう言うとゆっくりと笑みを浮かべて九十九に手をさしのべる。

その手を取り立ち上がる九十九。

先程の男と同一人物とは思えないほどのアキトの笑顔。

 

「・・・しかし・・・ここまで強くなっているとは・・・殺気を感じているわけではないのに身体が動かなかった・・・」

 

「殺気は・・・邪魔になる。相手が弱ければ威嚇になるが、強ければその変化で動きを悟られる」

 

そう言って口元を歪めるアキト。

それを見て顔をしかめる九十九。

 

「お前・・・その笑い方は止めろ」

 

九十九の言葉に口元を引き締めるアキト。

 

「ああ・・・すまん」

 

「しかし本当に強くなったな。よほど良い老師についたんだな」

 

その言葉に微笑むアキト。

 

「そうだな・・・彼は俺に力をくれた。未来を切り開くための力だ」

 

「ふっ、俺も会ってみたいものだ。その人に」

 

その言葉を聞きながら出口に歩き出すアキト。

その横に並ぶ九十九。

 

「もう死んでるよ・・・大昔に」

 

「?・・・どういうことだ?」

 

「さあな」

 

そう言いながら2人はトレーニングルームを出ていたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ頃合いだと思うがな」

 

そう言うアキト。

ここはアカツキナガレの私室。

 

「でも、一応彼は捕虜な訳だしね」

 

そう言ったアカツキは同意を求めるように隣にいるプロスペクターを見る。

その視線を受けて電卓を叩き出すプロス。

 

「そうですねえ、彼らから被った損害も馬鹿になりませんし」

 

アキトに電卓を見せる。

その行為に苦笑いするアキト。

 

「だがミスター、このまま戦争すればその額も半端じゃなくなる。彼なら和平を考えてくれる」

 

アキトの言葉に再び電卓を叩くプロス。

言葉を続けるアキト。

 

「それに、今我々は木連などと争っている場合ではない。真の敵は奴らではない」

 

「火星の後継者かい?」

 

アカツキの言葉ににっこり笑うアキト。

正解だとでも言うように。

 

「木連でも彼らのことは危険視されている。その事は九十九に確認済みだ。そして木連の上層部も彼らと手を組んでいる奴らがいる。まあ向こうもその事でかなり揺れているようだ」

 

「和平の事はどうなんだい?」

 

「どうやら二つに割れているようだ、和平派と徹底抗戦派で。この辺に隙があるんじゃないか」

 

その言葉に考え込むアカツキ。

 

「九十九は信用できる。彼に和平を託してみるのも悪くはないと思うがね」

 

その言葉に何かを決心したのかアキトを見つめるアカツキ。

 

「よし、その方針で行こう・・・軍には艦長のお父上を通すとしよう」

 

その言葉で全てが決まった。

ナデシコは今後木連との和平を目指すことになる。

アキトは最後に細かいことを確認して部屋から出て行こうとする。

そこにアカツキが声をかける。

 

「テンカワ君、お姫様の機嫌は直ったかい?」

 

ビクッとするアキト。

その問いに顔だけ後ろに向けて言う。

 

「・・・なんとかな・・・」

 

そう言って部屋を出ていくアキト。

 

「テンカワさんも大変ですなあ」

 

プロスの言葉に頷いているアカツキ。

だがその顔には晴れやかなものがあった。

昔のアキトに戻った。

そう思うと何となく嬉しいアカツキだった。

 

「今度ナンパにでも誘うかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし・・・本当によろしいのですか?」

 

心配そうに聞く九十九。

そんな言葉ににっこり笑うユリカ。

 

「ええ、全然構いません。あくまで私らしく・・・これがナデシコなんです」

 

「私らしく・・・素晴らしい事かも知れませんね。では和平の件、何とかやってみます」

 

「はい、お願いします」

 

ユリカとの会話が終わるとミナトに向き直る九十九。

 

「またいずれお会いできることを・・・」

 

ミナトの瞳を正面から見つめる九十九。

その瞳を見つめ返すミナト。

こくりと頷く。

そして最後にアキトに向き直る九十九。

 

「アキト・・・またな」

 

「ああ、元一朗とユキナにもよろしくな」

 

ピクッ!

「ユキナ」と言う名前を聞き逃さないルリ。

 

「わかった、ユキナも喜ぶだろう。お前が明るくなった事を知れば」

 

そう言って笑顔になる九十九。

それに笑顔で答えるアキト。

そして、2人は別れる。

再び会うことを約束して。

 

「それでは皆さん、また!」

 

そうして九十九は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白鳥九十九は去った。

今後の和平が成り立つかは彼にかかっていた。

ブリッジに並んで立っているアキトとルリ。

遠ざかっていくシャトルを見ながらルリが呟く。

 

「ところでアキトさん」

 

「ん?」

 

ルリの方を向くアキト。

その顔には笑顔。

何となく赤くなってしまうルリ。

 

「ユキナさんって・・・誰ですか?」

 

「ユキナは九十九の妹だ。俺は木連にいたとき九十九の家で生活していたからな」

 

「・・・美人なんですか?」

 

少しだけ目が怖いルリ。

だが、アキトは別に気にしない。

 

「まだ子供だよ。それに、あの娘には世話になったからな」

 

「そう・・・ですか」

 

そう言って再び外の映像に目をやるルリ。

同じようにするアキト。

黙ってそれを見ていたルリが、しばらくして口を開く。

 

「和平・・・成立するといいですね。そうすればこの戦争も終わります」

 

「ああ・・・そうだな」

 

歯切れの悪いアキト。

その答えに訝しく思うルリ。

 

「どうしました、アキトさん?」

 

「いや、何でもない」

 

アキトは知っていた。

木連との和平。

それが成立してからが本当の意味での戦争だという事を。

火星の後継者。

 

(ルリちゃん達の未来のため・・・お前達には消えてもらう、北辰、ヤマサキ)

 

アキトは自分や皆の幸せなど望んではいなかった。

ただ、自分の知っている一握りの人達の幸せ。

そのためには自らも修羅と化すつもりだった。

その命続く限り・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキトの私室。

アキトだけが使っている。

結局ラピス達と以前のように皆で住むわけにはいかなかった。

そこまで広い部屋がないのだ。

ラピスはエリナと、ルリカはルリと一緒に住んでいる。

特にルリカの事情を知ったルリは自らルリカと同室になる事を申し出たのだ。

だからアキトは独りで住んでいる。

その部屋の中に1人佇むアキト。

右手を閉じたり開いたりしている。

 

「・・・やはりそうか・・・」

 

右手の動きに何か違和感を感じる。

何かはわからないが、確かに感じる。

すると、次の瞬間。

 

「あれ?」

 

そう言ってガックリ膝をつくアキト。

操り人形の糸が切れたかのように。

それ程急激に体中の力が抜けた。

 

「力が・・・どうしたんだ」

 

アキトの顔が緑に光る。

必死に立とうとしているのに立ち上がることが出来ない。

意識はあるのに動くことが出来ない。

ヤマサキ達に実験されていた時のことを、嫌でも思い出してしまう。

背筋を冷たいものが流れる。

それは恐怖。

アキトの心に深く深く刻まれた、癒えることのない傷。

 

「クソッ!・・・いつまで俺を苦しめれば気が済む!」

 

1分ほどそうしていると急に治る。

不自然なほど急に・・・。

立ち上がるアキト。

軽く体を動かしてみる。

 

「・・・そろそろヤバイかな?」

 

少しだけ何か考えているような顔になる。

だがすぐに部屋を出ていくアキト。

気にしても仕方の無い事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂。

閉店になったナデシコ食堂でアキトとホウメイが酒を飲む。

誰もとがめる者はいない。

ほぼ恒例となっている時間。

2人の関係を噂している者達もいるが、本人達は全く気にしていなかった。

 

「災難だったね、テンカワ」

 

そんな事を言ってアキトの顔を見るホウメイ。

引っ掻き傷がアキトの顔にある。

ホウメイの言葉にサングラスを外しながらジンを一気に流し込むアキト。

 

「まあ痛くはないからな」

 

そう言いながら傷跡を撫でるアキト。

この男に傷を負わせられるほどの猛者が果たしてこのナデシコにいるのか。

アキトの小さなグラスにジンを注ぐホウメイ。

 

「これからどうなるのかねえ」

 

ホウメイの言葉。

おそらく和平の事を言っているのだろう。

 

「和平の成立・・・それが実現すれば」

 

「和平か・・・そうなればこの艦ともお別れかね」

 

ホウメイは今までのことを思い出していた。

色々あった。

大切な思い出。

 

「ホウメイ。お前はこの艦を降りたらどうするんだ?」

 

「さあね・・・ただあたしはコックだからね」

 

そう言ってワインを飲むホウメイ。

そんなホウメイを見つめるアキト。

 

「そうだ、アンタも一緒に働かないかい?味覚も段々戻ってきているんだろ?」

 

アキトは自分の料理をおいしそうに食べてくれる。

なら、治っていると思っても仕方がない。

ホウメイの言葉に少し悲しそうにしているアキト。

 

「・・・テンカワ、まさか・・・だってあの子達だってアンタの舌は治ってるって・・・」

 

あの子達・・・恐らくルリカ達のことだろう。

 

「俺は、酷い父親だ・・・」

 

そう言いながら胸のロザリオを触るアキト。

そんなアキトにかける言葉の見つからないホウメイ。

 

「気にするな、俺は平気だ」

 

そう言って笑ったアキト。

だがホウメイにはわかってしまった。

彼自身平気ではないこと。

そして、二度と味覚が戻らないことを。

 

「嘘、いつかはバレちまうよ」

 

「・・・最初で最後だから・・・」

 

「それって・・・」

 

「すまん、忘れてくれ」

 

そう言ってジンを飲むアキト。

何も言えずにワインを飲むホウメイ。

 

「一緒に飲むか、ミスター?」

 

「え?」

 

アキトの言葉に振り向くホウメイ。

そこにいたのはプロスペクター。

ホウメイは全く気付かなかった。

 

「そうですね、ご一緒しましょう」

 

そう言ってアキトの横に座る。

 

「プロスさん、ワインとジンのどっちがいい?」

 

ホウメイの問いに一言「ジンを」と言うと押し黙るプロス。

しばしの沈黙。

 

「テンカワさん、あなたは彼女たちをどうするつもりですか?」

 

そう言ってアキトに視線を向けるプロス。

ホウメイもアキトに視線を向ける。

 

「和平が成立したら、ナデシコを降ろす」

 

「そうすんなり彼女たちが降りますかね」

 

プロスの言葉に頷くホウメイ。

ラピス達がアキトのいるナデシコを降りるとは思えない。

 

「あたしもそう思うよ、テンカワ。あの子達はアンタを置いてナデシコを降りるような子じゃないよ」

 

「・・・」

 

ホウメイの言葉を黙って聞いているアキト。

 

「テンカワさん、あなたには彼女たちに対する責任があります。それを放り出すようなまねだけはお止めになった方がよろしいですよ」

 

そう言ってクイッとジンを流し込むプロス。

 

「ミスター・・・」

 

「いやいや、何だか偉そうなことを言ってしまいましたな。ただ、彼女たちにはあなたと共にいる権利がある。それを邪魔する事はたとえ貴方でも出来ないのですよ」

 

プロスの言葉にホウメイが続く。

 

「そうだよテンカワ。あの子達はナデシコを降りてもきっと喜ばないよ。それよりアンタの側にいることを望むんじゃないか?アンタが本当にあの子達のことを考えているのなら・・・もしそうならアンタのすることは1つ。それはあの子達を捨てる事じゃない、一緒にいてやる事じゃないか?」

 

その言葉を聞いてフッと笑うアキト。

普段の魅力的な笑みとは全く違う、自虐的な笑み。

 

「この命、尽きるまでか?」

 

アキトが呟く。

ホウメイとプロスは胸が痛くなる。

2人とも知っていたから。

彼の命の蝋燭はすでに燃え尽きようとしていた事を。

死神の鎌は確実にアキトの魂を刈り取ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホウメイ達と別れて部屋に戻ろうと廊下を歩いているアキト。

 

(誰だ?)

 

自分の部屋の前でうずくまっている人物がいる。

ホシノ・ルリ。

 

「どうした、ルリちゃん」

 

その声に、顔を上げるルリ。

ハッとしてすぐに立ち上がる。

 

「あの・・・少しお話ししたいんです」

 

「・・・入って」

 

そう言ってルリを招き入れるアキト。

部屋の中には備え付けの家具しかなかった。

がらんとした印象の部屋。

肌寒さを感じる。

何気なくベッドに腰掛けるルリ。

アキトはサングラスを外して棚の上に置く。

 

「フルーツ牛乳でも飲むかい、ルリちゃん」

 

そう言ってキッチンのスペースに行くアキト。

冷蔵庫からフルーツ牛乳を取り出す。

ラピスやルリカのためにたくさんジュースなどが入っている。

アキト自身が飲んだことはない。

 

「ありがとうございます」

 

瓶を受け取るルリ。

ルリの正面に椅子を引っ張ってきて座るアキト。

 

「それで・・・話って?」

 

フルーツ牛乳をこくこく飲むルリをしばらく見ていたアキトが口を開いた。

その言葉にキョトンとしていたルリがあわてて言う。

 

「あ、いえ・・・その。少し眠れなかったので」

 

そう言ってアキトの顔を窺う。

ニコニコしているアキト。

そんなアキトに少し頬を赤くするルリ。

だがルリは少し気になっていた事を聞いてみることにした。

 

「アキトさん」

 

「なんだい」

 

「和平が成立しても、戦争は終わらないんですか?」

 

「・・・どうして?」

 

そう聞いたアキトにすまなそうな顔をするルリ。

 

「だって、まだ火星の後継者ってのがいるんですよね」

 

その言葉にアキトの顔色が変わる。

 

「何処でそれを」

 

「オモイカネが教えてくれました」

 

その言葉にやれやれといった風に笑うアキト。

 

「あいつ・・・余計なことを」

 

「え?」

 

「いや・・・ルリちゃん。君はもう気付いたようだから教えるけど、誰にも言っちゃ駄目だよ」

 

アキトの言葉に頷くルリ。

それを確認して話し出すアキト。

火星の後継者のこと。

アキトを拉致した組織であること。

今も危険な実験を行っていること。

木連でも危険視されていること。

そして遺跡を使って世界を手に入れようとしていること。

 

「そんな・・・」

 

「わかったかい。俺達が木連と争っている間にも奴らは力を付けているんだ」

 

「それで和平を?」

 

そう聞くルリに少し苦笑いをするアキト。

 

「九十九達とは戦いたくないしね」

 

そう言ってもうこの話は終わりとばかりに椅子から立ち上がるアキト。

そして椅子を戻すとルリの横に座る。

いきなりの事で驚くルリ。

 

「ルリちゃん」

 

「は、はい!」

 

そう言ったルリを見つめるアキト。

ドキドキするルリ。

アキトの金色の瞳。

そこに映る自分。

目が、そらせない。

そこでハッと気付くルリ。

現在の時刻は、すでに夜中の12時をまわっている。

そして彼女は大好きな青年の部屋にいる。

2人きりで。

しかも自分は彼のベッドに腰掛けている。

そのすぐ横、触れ合うくらいの距離にアキトがいる。

ルリの耳元に囁くアキト。

 

「泊まっていくかい?もちろんベッドは一緒だけど・・・意味、わかるよね?」

 

「!!!!!!!!!!!」

 

余りのセリフに顔を真っ赤にして驚くルリ。

年頃の女の子である。

アキトの言葉に過剰に反応してしまった。

 

「ア、ア、アキトさん。だって・・・その、そんなこと、あ、あの!」

 

そう言って急にベッドから立ち上がるとドアの方に移動していくルリ。

ニコニコしているアキト。

 

「フフフ、どうしたんだいルリちゃん?」

 

「え、あ、あの。今日は・・・その、それじゃあアキトさんお休みなさい!」

 

そう言って逃げるように部屋から出て行くルリ。

そんな彼女の余りの素早さにしばし唖然とするアキト。

だがすぐにクスッと笑う。

 

「ごめんねルリちゃん、先日のお返しだよ」

 

そう言って頬の引っ掻き傷を撫でる。

そしてシャワーを浴びるためにバスルームに消えていった。

一方ルリは・・・。

結局一晩中ドキドキしていて眠れなかったらしい。

次の日眠そうに目を擦っているルリがあちらこちらで目撃されたという。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

<あとがき>

いつもご愛読ありがとうございます。

ささばりです。

さて、今回はいかがでしたでしょうか。

少しだけ、シリアスな内容になってます。

いろいろ悩みがあってアキトは大変です。

体の調子も・・・悪くなっているようですし。

ホウメイとプロスさんは、個人的に好きなので登場させました。

2人とも大人ですし、アキト自身もそんな彼らが好きなのでしょう。

さて、次回もがんばって書きます。

感想、激励等々メールください。

返事はちゃんと送らせていただきますので・・・。

それでは、次回もよろしくお願いします。

 



艦長からのあれこれ

はい、艦長です。

いやあ、なんかシリアスになってきましたね。
ほのぼのした雰囲気もいいですが、こーゆーのもグゥ。

アキト、何回も言うけど女の子泣かせちゃダメだよ?(笑)


さあ、ささばりさんにメールを出すんだ!


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