アイランドに戻る”木馬”に戻る











妖精の守護者  第27話

 

 

 

 

 

「感じないかい・・・想いを?お前達を包んでいる・・・温かい想いを」

 

視線を戻したアキトが、アカツキとイズミを交互に見る。

そして、アカツキとイズミもゆっくりと笑顔を浮かべる。

 

「そうだな・・・想いか」

 

「そうね・・・」

 

その答えに満足そうに頷くアキト。

その時ルリは確かに見た。

アカツキ、イズミの背後に立つ人影を。

温かい眼差しで2人を見つめている青年達を。

そして・・・アキトの横に立っている1人の女の子を。

ニコニコしながらアキトに寄り添っている・・・黒髪の女の子を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精の守護者

第27話「動き出した陰謀」

BY ささばり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々の望みは宇宙の平和です。そのためには地球側との和平も必要不可欠なものだと思います」

 

姿勢をただしそう発言するのは白鳥九十九少佐。

木連優人部隊旗艦、かぐらづき。

『激我心』と書かれた額縁。

部屋の中に2人の男がいる。

真っ白な制服服を着て直立不動の姿勢を保っている白鳥九十九。

椅子に座りながら九十九の発言に耳を傾けている男。

木連突撃宇宙軍優人部隊隊長、草壁春樹中将。

その彼がゆっくりと口を開く。

 

「しかし白鳥少佐、我が木連では未だに地球人に対する嫌悪感が強い。皆が和平などに納得してくれるとは思えんが」

 

そう言って難しい顔をする草壁。

確かにそうすんなり行くとは思えない。

だが、全ての人たちが戦いを望んでいるはずがない。

 

「・・・きっと皆もわかってくれるはずです。我々と同じように平和を愛する心を、地球人たちも持っているということを」

 

熱く語る九十九を見て、少し考えたような顔をする草壁。

そしてゆっくりと笑みを浮かべる。

 

「君には負けたよ、白鳥少佐。よろしい、やりたまえ。徹底抗戦派の連中は私が押さえ込んでおこう。君はその・・・ナデシコかね、それとの交渉の手はずを考えておきたまえ」

 

「は!」

 

草壁の言葉に敬礼をすると退室していく九十九。

閉まったドアを眺めている草壁。

 

「くっ、くっくっく。今更和平なの結ばれては困るのだよ」

 

笑いをこぼしながらそう呟く草壁。

すると部屋の陰から一人の男が現れる。

九十九がその存在に気付けなかったほどの使い手。

北辰。

 

「彼奴も愚かな男よ」

 

「うむ、徹底抗戦派を押さえるか・・・まさかこの私がその徹底抗戦派の急先鋒だとは思うまい」

 

そう言ってククッと笑う草壁。

 

「して、我らの仕事は?」

 

北辰の静かな声。

 

「今後和平派を黙らせるために生け贄が必要だ」

 

「贄?」

 

「あの男、白鳥九十九には妹がいてな、彼奴はその妹を溺愛しておるわ」

 

そう言って笑みを浮かべる草壁。

いや、笑みと言うには余りにも禍々しい。

それを面白そうに見ている北辰。

 

「なるほど・・・和平の使者にはその妹を」

 

北辰の言葉に頷く草壁。

 

「和平の使者、しかも自分の妹が地球人に殺されたとなれば・・・あの男も和平などと口にすることもなくなるだろう」

 

草壁の言葉を聞き、いやらしい笑いを浮かべて唇を舐める北辰。

 

「決行は?」

 

「白鳥ユキナがナデシコ艦内に潜入後」

 

「・・・」

 

草壁の言葉に沈黙する北辰。

何かを考えているようだ。

 

「どうした、臆したのか?」

 

「・・・そう言うわけではない。だが、あの艦にはテンカワ・アキトがおる・・・」

 

北辰の口からでた名前に何となく聞き覚えがある。

 

「テンカワ・アキト・・・ふむ、何処かで聞いたことあるような名だが、そやつが居るとまずいのか?」

 

北辰の程の男が警戒する存在。

テンカワ・アキト。

 

「さあ、我にもわからぬ・・・あの男は常識では計れぬ故・・・」

 

しばしの沈黙が流れる。

草壁も北辰も何も喋らない。

1分ほどして草壁が口を開く。

 

「とにかく白鳥ユキナを消せ」

 

「・・・よかろう・・・」

 

そういって姿を消す北辰。

後に残されたのは草壁春樹。

ゆっくりと息を吐く。

 

「木連、地球、遺跡・・・すべて我ら火星の後継者のものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のんびりとお茶を啜りながらアニメを見ている九十九と元一朗。

ゲキガンガーを見ているようだ。

その時。

 

「お兄ちゃん!!」

 

背後のふすまが勢いよく開く。

そこから部屋の中に入ってきた少女。

活発そうな印象を受ける少女。

白鳥ユキナ。

 

「ユキナ、お兄さまと呼びなさい」

 

内心驚きつつも、なんとか平静を装い妹を窘める九十九。

 

「ゼエ、ゼエ・・・なによ、いい歳してアニメなんて見ちゃってさ」

 

兄のことは大好きなユキナ。

だが、このアニメ好きなところだけは好きではなかった。

 

「ユキナ、おまえもいずれ大人になれば・・・」

 

そう言いかけた元一朗をジロリと見るユキナ。

 

「元一朗は黙ってて!」

 

「ハ、ハイ!」

 

背筋を伸ばす元一朗。

「よろしい」とでも言うような顔をして元一朗を見るユキナ。

そして、九十九を睨み付ける。

 

「お兄ちゃん、地球人と和平っていうのは別にいいのよ」

 

九十九とユキナ、そして元一朗はアキトと知り合っていたので、地球人に対して一般の木連人よりも嫌悪感、敵愾心が薄かった。

 

「なんかイヤだけど、アキトは地球人だったもんね・・・」

 

そう言って少し遠い目をするユキナ。

アキトがいたときの生活を思い出しているようだ。

冷たいようで、本当は優しいアキト。

 

「・・・えへへ・・・」

 

思い出し笑いをしているユキナ。

そんなユキナを見ながら、少し引いている元一朗。

そして九十九は、アキトの無事を知らせたときのユキナの事を思い出していた。

意地っ張りな彼女が泣いていたのだ。

 

「はっ!危うく話がそれるところだったわ!」

 

自分でそらせたという事には触れないユキナ。

九十九も元一朗も怖くて突っ込めない。

 

「そんなことよりお兄ちゃん、この女は誰!!」

 

そう言って部屋に張ってあったゲキガンガーのポスターをはがす。

するとそこには。

大きく引き伸ばされたハルカ・ミナトの写真が貼ってあった。

 

「そ、それは!!いつの間に・・・九十九!」

 

驚きの声を上げる元一朗。

そして、九十九を睨み付ける。

 

「ユ、ユキナ・・・元一朗・・・」

 

オロオロとしている九十九。

 

「お兄ちゃんの不潔!地球女なんかにたぶらかされて!」

 

九十九に迫るユキナ。

じりじりと後ろに下がっていく九十九。

次第に追い詰められていく。

 

「そ、そんなことは・・・」

 

何とか弁解しようとする九十九だが、その口調は明らかに彼を裏切っている。

 

「どういうことだ九十九・・・誰なんだこの女性は」

 

ユキナと一緒になって九十九に詰め寄る元一朗。

 

「元一朗・・・違うんだ・・・ああ!!」

 

ついに九十九は壁際まで追い込まれた。

万事休す。

木連突撃宇宙軍優人部隊少佐、白鳥九十九最大の危機。

 

「おのれ九十九・・・貴様それでも木連の兵士か!」

 

「待て、誤解だ!」

 

そう言ったものの、そんな話を誰が信じるであろうか。

 

「問答無用だ!」

 

「問答無用よ、お兄ちゃん!」

 

九十九の顔が情けなく歪む。

元一朗がボキボキと指の関節を鳴らす。

ユキナがフフフと危険な笑みを浮かべる。

次の瞬間、部屋の中に九十九の悲鳴がこだました。

 

「や、やめてくれ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦ナデシコ。

イネス・フレサンジュの私室。

イネスともう一人、アキトがこの部屋にいる。

 

「やっと逢えた・・・お兄ちゃん」

 

そう言ってアキトの胸に飛び込むイネス。

それを優しく抱きとめるアキト。

 

「まさか・・・あなたがアイちゃんだったとはな」

 

イネスの髪を優しく撫でながらアキトが囁く。

少しくすぐったそうにしながらも、アキトの胸に顔を埋めるイネス。

 

「あの時・・・お兄ちゃんが光って、どっかに行っちゃうかと思って」

 

「俺のジャンプに巻き込まれたのか・・・ごめんな」

 

イネスを抱きしめながらその耳元で囁くアキト。

ほんのり頬を赤く染めているイネス。

そしてゆっくりとイネスのことをはなすアキト。

イネスは少し物足りなそうな顔をする。

 

「そんな顔をするな・・・続きは後でしてやるから」

 

「・・・うん」

 

顔を真っ赤にしていうイネス。

年齢から考えればかなり可愛い表情である。

 

「しかしわからないな、なぜあなた・・・いや、君は俺より年上になっているんだ?」

 

少しだけ悩んでいるような表情をするアキト。

それを見てイネスが口を開く。

 

「私はお兄ちゃんのジャンプに巻き込まれた後過去の火星に跳ばされたの」

 

「・・・過去の火星か・・・続けてくれ・・・」

 

「・・・そこで火星人にあったわ。火星の超古代文明を築いた人たちに。そして彼らに送り返してもらったの。ただ・・・なんでそれでも過去だったのかは謎ね」

 

何かを考えているアキト。

しばらくして、納得のいったような顔をする。

 

「なるほどね、最近小さな女の子が来たと言っていたのは君の事だったか」

 

その言葉に顔色を変えるイネス。

 

「どういうこと?」

 

「俺も会ったことがある、火星の民と。視力はその時にもらったものだ」

 

「え!!」

 

驚きを隠せないイネス。

自分が古代火星に行けたのはまさに偶然の産物でしかない。

それをアキトも行ったと言っている。

それも偶然なのだろうか。

 

「視力だけは辛うじて・・・治すことが出来たんだ。ただ左は眼球を再生しても見えるようにはならなかった。だからここには、C・Cを入れているんだ。しかもこのC・Cはかなりの高純度だ。ジャンプしてもなくなることはない」

 

だが、イネスはアキトの説明などほとんど聞いていなかった。

ただ、アキトの身体のことが引っかかっていた。

 

「目の他は無理だったの?」

 

心配そうな顔のイネス。

そんな彼女に優しく微笑むアキト。

自らの辛さを隠すかのように。

 

「ああ・・・あれほどすぐれた文明でも無理だった」

 

「そうなんだ・・・」

 

そう言って沈んでしまうイネス。

そんな彼女の頭を撫でてあげるアキト。

 

「そんな顔するな、アイちゃん。それに、無駄じゃあなかった。俺はそこで色々な事を学んだよ」

 

「色んな事?」

 

アキトに頭を撫でられて嬉しそうな顔をしながら言うイネス。

 

「学問・・・まあこれは良いか。今の世界では危険としか言いようがないからな」

 

「え?」

 

「古代火星文明を築いた奴らだぞ。俺達の世界とは技術の水準が違う」

 

「・・・」

 

何となく羨ましげにアキトを見るイネス。

だが、その視線はあえて無視するアキト。

 

「それに武術も・・・俺は老師に会えなかったら本当に駄目になっていただろう」

 

そう言って物思いに耽るアキト。

 

「・・・そのお爺さんはどうしたの?・・・」

 

イネスの言葉にキョトンとするアキト。

 

「お爺さん?・・・ああ、違うよ。老師って言うのは「師匠」って意味だよ。それにあいつはお爺さんじゃない。ハッキリとはわからないが恐らく20代後半くらいだな」

 

「そんなに若いのに・・・アキト君の師匠?」

 

「ああ、若いがあの強さは異常だ。人を超えている」

 

アキトの言葉が少し震えている。

そこにあるのは畏怖。

師匠の実力を改めて思い出しているアキト。

 

「・・・」

 

何も言えないイネス。

すると、アキトはため息を付く。

 

「結局最後まで勝てなかったな・・・あの化け物が・・・」

 

そう言っているアキトは知らず知らずの内に微笑んでいた。

武術だけではない。

人生においても師匠。

尊敬・・・そんな一言では言い表せない想いがある。

 

「・・・その他にも色々ね。結局あそこには2年ほど居たよ・・・最もこちらの世界で数時間ほどたった時間に帰ってきたがな・・・つまり、俺は2歳サバを読んでいることになる」                            

 

そう言って笑顔を浮かべているアキト。

しばらくして、意を決したイネスがアキトに話しかける。

 

「・・・お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「和平が成立したら、お兄ちゃんはどうするの?」

 

ピクッ。

アキトの笑顔が消える。

 

「火星の後継者を倒す・・・アイちゃんだって知っているんだろ?」

 

アキトの言葉に少し表情を暗くするイネス。

彼女も記憶マージャンの時アキトの記憶を見た一人だった。

 

「うん・・・でもそれを倒した後は?」

 

言葉に詰まるアキト。

それ程イネスの瞳は真剣だった。

 

「もうラピスちゃん1人のリンクだけじゃ限界なのよ。これからはどんどん体が動かなくなっていくわ。このままじゃいずれ身動き一つとれなくなっていくのよ?」

 

アキトに縋り付くイネス。

だが、アキトはそんなイネスを離し背を向ける。

ゆっくりと口を開く。

 

「火星の後継者を倒したら・・・君に頼みたい事がある」

 

「なに?」

 

「もし戦いが終わったら・・・ラピスとのリンクを解除してほしい」

 

アキトの言葉にハッとするイネス。

次第にその瞳に涙が浮かぶ。

そして、背を向けているアキトの正面に回り込む。

 

「何言ってるのよ!それがどういう事かわかってるの、お兄ちゃん!」

 

アキトの言った事。

それはアキトの肉体の死を意味している。

動くこともできず、五感すらなくす。

ラピスとのリンクの解除はそう言うことである。

 

「イヤ、絶対にイヤ!」

 

涙をぽろぽろこぼしながらアキトに抱き付くイネス。

そんな彼女の肩をつかみ自分から離すアキト。

正面からイネスの瞳を見つめる。

その金色の瞳から目を離せないイネス。

 

「いつまでもラピスを俺に縛り付けておく訳にはいかないんだ・・・頼む、君にしか頼めないんだ」

 

アキトの真摯な視線に何も言えなくなるイネス。

 

「あの子の人生を俺のせいで台無しにすることはできない・・・わかってくれ」

 

「・・・でも、あの子の気持ちはどうなるの?」

 

一瞬言葉に詰まるアキト。

だが、アキトの口は言葉を紡ぎ出す。

 

「・・・それでも頼む」

 

あの子の気持ち。

そう言われたとき一瞬アキトの顔に辛そうな感情が見えた。

だがすぐにそんなものは消す。

 

「わかったわ・・・」

 

そう言って涙を拭うイネス。

自分じゃあアキトを止められないことに気付いたのだ。

ほんの少しだけ悲しいイネス。

 

「ありがとう」

 

そう言ったアキトが微笑む。

だがイネスはその笑顔が少し寂しそうに見える。

 

「お兄ちゃん・・・」

 

「さてと・・・」

 

そう言ってイネスを見つめるアキト。

 

「お、お兄ちゃん?」

 

いきなりイネスを抱き寄せると唇を合わせるアキト。

 

「ん!」

 

いきなりの事で最初はもがくイネス。

だがだんだん身体の力が抜けていき、目を瞑りアキトの身体にうでをまわす。

アキトはしばらくキスを楽しんだ後、ゆっくりとイネスから唇をはなす。

 

「お、お兄ちゃん・・・」

 

とろんとした目でアキトを見つめている。

そんなイネスに微笑むと、その首筋に唇を這わすアキト。

研究者としては一流だったイネス。

だがその美貌、知性は男性を遠ざける要因となっていた。

さらには弟のように可愛がっていたアキトに、弟以上の感情を持っていた。

よって同年代の男性とは疎遠になり、男性経験も数えるほどしかない。

そんな彼女が今のアキトのテクニックに抵抗できるはずがなかった。

さすが大関スケコマシの名をアカツキから譲り受けた男だ。

 

「ん?・・・そう言えば昔アイちゃん・・・いや、イネスさんに押し倒されたっけな?」

 

そう言いながらもアキトの手は愛撫を繰り返していく。

何とか快楽に堪えながら声を出すイネス。

 

「あ、あれは・・・ただ・・・あん・・・酔ってただけで・・・ん!」

 

「酔ってただけね・・・いきなり押し倒されるとは思わなかったよ」

 

そう、実はアキトは14歳の時イネスと肉体関係を持ったことがある。

酔っぱらったイネスがアキトを押し倒したのだ。

もっともアキトもそういう事に興味があったので、特に拒まなかったようだが。

ちなみにそれがアキトの初体験である。

 

「さてと、イネスさん・・・いや・・・アイちゃん」

 

イネスの顎に手をあててクイッと上げるアキト。

まっすぐその瞳を見つめる。

上気した顔ととろんとした瞳がとても可愛いイネス。

荒い息を整えながらアキトを見つめる。

 

「お、お兄ちゃん?」

 

「今日は寝られないよ?」

 

そう言ってニッコリと笑うアキト。

アキトの笑顔から目の離せないイネス。

アキトの金色の瞳がイネスの瞳を射抜く。

しばらくしてゆっくりと瞼を閉じる。

 

「はい・・・お兄ちゃん」

 

「良い子だ、アイちゃん」

 

再び唇を合わせる2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝。

イネスの部屋から出てくるアキト。

廊下を自分の部屋に向けて歩く。

その身体が一瞬ふらつく。

次の瞬間壁に寄り掛かるようにして崩れ落ちるアキト。

 

「・・・がんばりすぎ?・・・」

 

意味の分からないことを呟くアキト。

何とか立ち上がる。

が、すぐにふらついて壁に手をつく。

 

「・・・くそ、またなのか・・・」

 

そう言ってその場に膝をつく。

目を閉じてそのまま時を待つ。

しばらくして、ゆっくりと立ち上がると軽くステップを踏んでみる。

軽やかな動きが戻っている。

 

「・・・間に合うのか?・・・」

 

そう呟いて歩き出すアキト。

彼は気付かなかった。

疲れ切って眠っていると思っていたイネスが、その様子を部屋のモニターで見ていたのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし良かったのですか?白鳥少佐に黙って出てきて」

 

一隻の長距離ジャンプ用小型宇宙船が星の海をゆっくりと進んでいる。

そしてそのすぐそばを飛んでいる護衛のゲキガンタイプ1機。

その護衛機のパイロットから通信が入る。

黒髪、ロングヘアーの女性。

美しい顔立ちをしている。

そして切り揃えてある前髪。

カザマ・イツキ中尉。

戦いは男の仕事だと思われている木連では、女性兵はかなり珍しい。

 

「いいのよ。お兄ちゃんをたぶらかす女は絶対に許さないんだから。それにちょうど草壁中将から頼まれたし」

 

「そうですか」

 

「それよりごめんなさい、なんだかあたしが無理矢理付き合わせてしまったみたいで」

 

そう言って頭を下げるユキナ。

そんな彼女に笑顔で答えるイツキ。

 

「いいえ、ユキナさん。私は白鳥少佐直属のパイロットです。少佐の妹さんをお守りするのは当然の事です」

 

「ありがとう、イツキさん」

 

そう言って通信を切るユキナ。

敵艦ナデシコまではまだ距離がある。

それまで一眠りできるだろう。

ゆっくりと目をつぶるユキナ。

 

「ナデシコ・・・地球人・・・お兄ちゃんは渡さないんだから!」

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

<あとがき>

どうも、ささばりです。

今回のお話はいかがでしたでしょうか。

ついに怪しげな方々が動き出しました。

しかもアキトはイネスさんに手を出してます。

ユキナもナデシコに向かってますし、ルリは大変です。

次回はどうなるでしょうか・・・。

感想等お待ちしてますので、よろしくお願いします。

それでは、次回をお楽しみに。

 



艦長からのあれこれ

はい、艦長です。

食っちゃいました。
それとも食べられた?(笑)

濃密な時間の中に存在する陰謀。
陰謀!
陰謀!!

ふうふう・・・取り乱してしまいました(爆)


今度は誰を食うのか予想も付かない、そんなアキトが見たかったららささばりさんにメールを出すんだ!(爆)


アイランドに戻る”木馬”に戻る