T.聞くと聴く

江戸時代の儒学者、荻生徂徠は、「聞く」と「聴く」の違いについて、次のように言っている。

「聴ハ聞トハ違ウナリ。聞ハ耳、声ヲウクルナリ。聴ハ耳、声ヲ待ツナリト註セリ。耳、声ヲ受クルナリトハ、キコエルナリ。耳、声ヲ待ツトハ、キコウト思ウテキクナリ。ソレユエ聴字ハ公事沙汰ヲキクニモ用ユ。聴政、聴雨ナド、ミナ気ヲツケテキクナリ。マタ、イカニモト合点スルコトヲ聴トイウ。和語ニキキイレタトイウ程ノコトナリ・・・」

荻生徂徠によれば、二つの「きく」という言葉の違いは、

聞く ; 声を受ける・・・聞こえてくる・・・・・・・消極的きき方
聴く ; 声を待つ・・・・きこうと注意して聴く・・・能動的きき方

ということになります。

 単に、音声が聞こえて来るという聞き方ではなくて、相手のことばを待ち、言葉の背後にある感情を聞き取ろうとして聴くことは、とても難しいことですし、相当の労力を必要とします。この講座では、前者を「聞く」と表現し、後者は、「傾聴する」と表現したいと思います。

 傾聴の心得六箇条

 1.共にいること
 2.心を配ること
 3.真心から共感すること
 4.判断を控えること
 5.相手の考えや感情が表現されるまで待つこと
 6.対話を継続しようと努力する決意