- November 1999 (1) -


Aenima Tool

Aenima Notes

Original Release Date: October 1996
Producer: Tool
Tool are: Justin Chancellor(b), Adam Jones(g), Maynard James Keenan (vo) & Danny Carey(drs)

Track Listing

1. Stinkfist 2. Eulogy 3. H. 4. Useful Idiot 5. Forty Six And 2 6. Message To Harry Manback 7. Hooker With A Penis 8. Intermission 9. Jimmy 10. Die Eier Von Satan 11. Pushit 12. Casaro Summability 13. Aenema 14. (-) Ions 15. Third Eye

Review  - 神無月のころ・・・奥ゆかしくていとおかし -


イクタユウイチロウという男がいる。某掲示板では「Kowalski」という名前で出没を繰り返している。しかし23回目の誕生日を迎えたばかりのこの神奈川県人はなかなか奥ゆかしい一面を持つ。ドイツに何年も住んでいたくせに、「ボクの覚えたドイツ語は、”マルボロください。”だけですよー。」などと言い放ち、フジロックでは謎の外国人をたくさん連れてきたくせに、「ボクは英語のテストが苦手だったんですよー。」などとのたまう。かなりのカッチョメンのくせに、「ボクの鈴木京香さん、Katsさんに譲りますよー。」などと嬉しいことも言ってくれるが、フジロックの時に一緒に泊まった宿ではいつまでも起きなかったくせに、気が付けば会場に一番乗りしていたりもする。ついでに余計なことを言えば、帰りの電車賃も持っていないことを、駅の切符売り場でやっとこ白状したりもする。

トゥールというバンドがいる。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、コーンとともに、アメリカンヘヴィロック三羽烏とも呼ばれている。しかし10年目の誕生日を迎えたばかりのこのロサンゼルス人達もなかなか奥ゆかしい一面を持つ。アルバムが全米ヒットチャートの2位まで上り詰めながら、「メディアへの露出はシャットアウトさせてもらうぜ。」などと言い放ち、ライヴもかなりの数をこなしていながら、「写真は撮るな。写真は載せるな」などとのたまう。かなりのカッチョメンに違いないのに、「ボクは素顔を見せませんよ。」とばかりにへんちくりんなメイクを施すが、ボーカル以外は単なる普通のロック兄ちゃんだったりもする。ついでに余計なことを言えば、今月号のロッキングオンでちょっと小馬鹿にしたようなライヴレポートがあってかなりムカついている。

ムカつきついでに言えば、「裏ウッドストック」とも呼ばれた先の「コーチェラ・ミュージック&アート・フェスティヴァル」でレイジがトリを務めなかったのは、レイジがトリをやりたくなかったわけでも、レイジがトリを譲ったわけでもなく、トゥールがレイジ並みに、いやトゥールがレイジ以上に人気があるからなのである。これはぜひ正しく認識しておいていただきたいところでもある。

しかしその奥ゆかしさが災いしているのか、ここ日本でのトゥール人気はかなり寒いと言わざるを得ない。いや、その筋の人間にはかなり知れ渡っていて、アルバムもかなり聴かれているに違いないのだけれど、なにせトゥールはあっちじゃ破格の人気で、なおかつステージセットがそんじょそこらのライヴハウスなどでは再現できないとんでもないものだから来日できないんじゃないか、などと邪推したりもしている。いや、冗談抜きに、誇大表現なしに、ケミカル・ブラザーズやアンダーワールドのあの巨大な映像セット。あんなもんがトゥールのライヴでは使われているもんだから、そりゃあリキッドルーム、ブリッツあたりでは到底演れませんわな。

でもフジロック99でのリンプ・ビズキットのステージを観た人は覚えていると思うのだけれど、余興タイムでボーカルのフレッドが最初に発した言葉・・・・「おめえらトゥールは好きか?」「おめえらケミカル・ブラザーズを待ってんのか?」・・・・・。その後にレイジやメタリカの名前が同列で挙げられていたことから分かるように、つまりフレッドの言葉を勝手に解釈すると、ケミカルの映像セット×レイジ×メタリカ、これがトゥールだ。・・・まあ当のフレッドにそんな意識はこれっぽっちもなかったとは思うし、我ながらかなり強引な解釈ではあるけれど、そんなに違ってもいないとも思う。

奥ゆかしく1位を狙わずにわざわざ全米2位の位置に収まったこの96年発表のアルバム「Aenima」。レイジが持つへヴィネスと、メタリカに代表されるハードロックが持つある種のポップを兼ね備えたそんな楽曲で満載である。さらに、ライヴの場においてレッド・ツェッペリンの「ノー・クォーター」を圧倒的なクオリティーを持って演奏していたことからも分かるように、単なるお祭りパーティーバンドとはまったく違う音楽的バックグラウンドを持つ。どこまでも響き渡るかのような声の持ち主=ボーカルMaynardには、レイジやコーンやリンプほどヒップホップの要素は見られないけれど、その変幻自在のメロディーセンス、アンチクライスト的な歌詞、そして過剰とも言える映像装置に負けないだけのボーカリゼーションと存在感。ヒップホップのライムとは無縁でありながら、今のキッズにこれだけウケる理由はこの辺にあるのだと思う。

トゥール同様に奥ゆかしいイクタくんだけれども、このたび彼は彼のすべてを日本のロックファンへ向けて発信するトゥール専門サイト、「COME ON TOOL」を立ち上げた。そしてそこで確実に増えるであろうトゥールファンの前にその破格の存在感を示す機会は、そう、真夏のあのフェスティバルでしか考えられない。早いところニューアルバムを発表し、それを全米ナンバーワンに送り込んで、レイジ、コーン、リンプと来たその次のポジションを、ぜひトゥールに奪取していただきたい。



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Short Biography of Tool

90年に結成されたこのへヴィロックバンドは、メタルとオルタナの両面を併せ持ったサウンドで92年に「Opiate」でシングルデビュー。93年にアルバム「Undertow」を発表後、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンらとロラパルーザツアーに参戦し、 シングル「Sober」のビデオクリップのヘヴィーローテーションも相まって、強烈な印象と数多くのファンを獲得するに至る。 若干のメンバーチェンジがあった後、96年にアルバム「Aenima」を発表。これが全米ビルボードヒットチャートの2位まで上昇し、シングル「Stinkfist」のヒットともに、彼らの人気を決定付ける。その後、ロラパルーザツアーでヘッドライン扱いのショーを行い、98年にはオズフェストにも参戦。所属レーベルとの問題からアルバムの発表は遅れているが、99年、コーチェラ・ミュージック&アート・フェスティヴァルにて復活。今もっとも来日が渇望されているバンドでもある。


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Last updated: 11/13/99