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![]() Original Release Date: August 1991 Producers: James Hetfield, Lars Ulrich & Bob Rock Metallica are: James Hetfield(vo&g), Kirk Hammet(g), Jason Newsted(b) & Lars Ulrich(drs) ■ Track Listing 1. Enter Sandman 2. Sad But True 3. Holier Than Thou 4. The Unforgiven 5. Wherever I May Roam 6. Don't Treat On Me 7. Throuth The Never 8. Nothing Else Matters 9. Of Wolf And Man 10. The God That Failed 11. My Friend Of Misery 12. The Struggle Within 13. So What?(Japan Only) ■ Review - 結局メタルな10年? - 音楽に勝ちも負けもないけれど、90年代の勝者、というか一貫として90年代を、最初から最後まで、休むことなく第一線であり続けたのはこのメタリカを置いて他にはないと思う。90年代のロックはメタリカに始まり、メタリカが受け継ぎ、メタリカに終わった、そんな印象すらある。 90年代が始まってすぐに出たこのアルバムが全米ナンバーワンの大ヒット。80年代後半からのメタルブームの中でも最も売れたアルバムのひとつとなり、そのアルバムの余勢を買ってアリーナ&スタジアムツアーを大成功。ガンズ&ローゼズとのジョイントツアーなどもあったりして当時のロック界の話題を独占する。 ニルヴァーナとかパールジャムとかパールジャムなんかが躍り出てきて、ガンズ&ローゼズ、スキッド・ロウらが突然鳴りを潜め、へヴィメタルの時代は終わった、なんてことも言われ始めた頃、まだまだメタリカのツアーは絶好調。 加えてニルヴァーナのカート・コバーンは、メタリカを自分のフェイバリットバンドに挙げていたことからも分かるように、彼らは新鋭オルタナティヴバンドからもオッケーのお墨付きをいただく。よってヘヴィメタ逆風をものともせず94年のウッドストックでは数多のオルタナバンドを抑えてエアロ前の準トリを務める。 カート・コバーンが死に、パール・ジャムがチケット会社ともめてツアーに出れず、グランジは死んだ、と言われていた頃、髪をばっさり切ったメタリカは彼ら流のオルタナアルバムを発表。オルタナバンドのフェスティバルと呼ばれたロラパルーザのトリを務め、大賛否両論の中、見事にロラパルーザとオルタナバンドを撃沈させる。 とまあこれだけでもメタリカの90年代的メジャー侵略は十分に大成功、と呼べることだと分かるけれど、自分的に言えばそのことにさらなる確信を持ったのは、今年のゼブラヘッドとリンプ・ビズキットのライヴでのこと。 ゼブラヘッドが渋谷クアトロでのギグの最中、メタリカの「エンター・サンドマン」を丸々1曲弾いたとき、そしてトゥールに引き続いてしつこいぐらいにこのことを引き合いに出しちゃうと、フジロックでのリンプ・ビズキットが、レイジ、トゥール、コーンと並んで「おめえらメタリカは好きか?」と聞いて、ギターのウェスがメタリカの「マスター・オヴ・パペッツ」を丸ごと弾いて歌ったとき。 ああ、この人たちメタリカを聴いて、メタリカに影響を受けて、メタリカみたいになりたくてバンドを始めたんだろうなあ、ってことが手にとるように分かって興味深かった。ヘヴィロックとかいって新しいタイプのロックとしての旗手のような2つのバンドだけれど、結局のところメタリカのリフとヒップホップのライムを掛け合わせただけなんだなあ、とかも思ったりして。(・・・とは言ってもセンスなしじゃここまでやってこれないわけだけど。) パイロをバカバカ爆発させて、ライティングも思いっきり派手で、四文字言葉を吐き散らし、ステージ上を右へ左へと走りまくる。他のバンドには恥ずかしくてとてもやれやしないアメリカンロックのエンターテイメント性満載のステージだけれど、メタリカだから、メタリカであるがゆえに成し得る業でもある。90年代を通じて一度足りともメンバーチェンジどころかメンバー間の不和さえも耳にすることがなかったところなども、バンドとしての理想がこのグループにはあるんだと思う。(というか81年のバンド結成以来、実質的なメンバーチェンジはなし。ベーシストが事故で不慮の死を遂げたことはあっても。) ベースのジェイソンがエリック・クラプトンとBBキングを、ボーカル&ギターのジェームスがカントリーを、それぞれ最高のフェイバリットに挙げているなんぞは、バンドの雑種性と柔軟性を表していると思うし、へヴィなはずなのにポップで耳について離れないメロディ、そしてキッズが必ずコピーしたくなる魅惑のギターリフは、口で言うのは簡単だけど、10年経って聴いてみても、懐かしいだの、恥ずかしいだの全然感じさせないということは、並々ならぬポップセンスあってのことだと思う。 加えて、実質のところアルバムはこれと「ロード(96年)」しか出してないのにツアーツアーに明け暮れているその体質なんぞは、まさに叩き上げのロックバンドとしての理想であろう。 ムラのない安定したパフォーマンスをいつもいつも披露しているらしいが、これって真似しようとしてもなかなか真似できるもんじゃないと思う。 結局90年代最後の大イベント、ウッドストック'99でもレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを抑えてヘッドライナーを務めたメタリカ。色物扱いされがちなへヴィメタルバンドの中にあって、ロックのメインストリームに徹底的なチャレンジを仕掛け、グランジ、ヘヴィロックという2つの大きな山にでっかい穴を掘ってなお爆走している脅威のブルトーザー。どう見ても工事現場で旗を振ってそうなジェームス・ヘッドフィールドは、アンダーグラウンドもオーバーグラウンドもすべて飲み込んで、もはや90年代のお山の大将としてグハグハ笑っているそんな姿が目に浮かぶ。 そんなヘヴィロックの90年代的様式美と完成形が、このメタリカのブラックアルバムにはある。 60年代のロックの完成形が、ビートルズのホワイトアルバムにあったように。 追伸: ギターのカーク・ハメットは、自分のかつてのルームメートに大変よく似ている。
■ Short Biography of Metallica 81年にロサンゼルスで結成されたメタリカは、スラッシュメタルとパンクを合わせたようなニュータイプのロックバンドとして83年にデビュー。アンダーグラウンドでカルト的な人気を得る中、86年の「Master Of Puppets」発売後は、グラミー賞のヘヴィメタル部門で数年に渡り賞を獲るなど、その音楽性は早くから業界関係者にも注目されていた。88年の「Justice For All」は全米のトップ10ヒットとなり、91年のアルバム「Metallica」が全米で700万枚を売り尽くす大ヒットとなり一躍メインストリームへ。2年以上に及ぶツアーを経て、96年に「Load」、97年に「Re-Load」というアルバムを発表し、ヘヴィメタバンドからの脱皮を宣言。今後のさらなる動向がもっとも気になるバンドのひとつである。
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Last updated: 11/23/99 |