- February 1999 -


Tapestry Carole King

Tapestry Notes

Original Release Date: 1971
Producer: Lou Adler

Track Listing

1. I Feel The Earth Move 2. So Far Away 3. It's Too Late 4. Home Again 5. Beautiful 6. Way Over Yonder 7. You've Got A Friend 8. Where You Lead 9. Will You Love Me Tomorrow? 10. Smackwater Jack 11. Tapestry 12. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman

Review  - 発語の快感だ。こりゃ病みつきだ。 -

前回1月のMonthly Masterpieceでは、60、80、90年代それぞれの名盤を紹介したので今月はぜひ70年代を!!と思って、ジェフ・ベックか〜、レッド・ツェッペリンか〜、ディープ・パープルか〜、と考えに考えた挙げ句、ある日突然変異的にスコっと浮かんできたのがこの「つづれおり」。 そう、キャロル・キングの「つづれおり」である。

もう自他共に認める名盤中の名盤中の名盤で、71年グラミー賞の最優秀アルバムにも選ばれたこの「つづれおり」。全世界で1500万枚を売り尽くしながらなおも売れ続けているというこの「つづれおり」。そして発表当時、およそ300週以上もチャートインしていたというモンスターアルバム「つづれおり」。とにかくこの数の圧倒性のみならず、なにはともあれ全人類必聴必携のアルバムであって、これに感動しなきゃやっぱり自分の耳を疑った方がいい。でも自分はやっぱりこのアルバムをテープでしか持っていないのだよね。それにね、キャロル・キングのってこのアルバムしか聴いたことがないんだよねこれが・・・・。

とにかく誰が付けたか知らないが、珍しく正解だったとしか言いようがないこの日本語タイトル「つづれおり」。「つづれおり」「つづれおり」「つづれおり」と3回唱えてみても恥ずかしくならない。でもまあ、「つづれおり」って何だい?っていう質問はこの際おいておくとして、ここに収められている12曲すべてがいい。そしてこの「つづれおり」を聴いたことがないとおっしゃるみなさんでも、少なくともこの中の半分はどこかで聴いたことがあるはずである。「I Feel The Earth」や「A Natural Woman」はテレビ、CMなんかでも使われていたような記憶があるし、「It's Too Late」や「You've Got A Friend」なんかは学校の音楽の教科書にでも載ってるんじゃないかい? つまり、ビートルズの「Let It Be」と「Yesterday」と「Don't Let Me Down」と「Please Please Me」あたりがひとつのアルバムに収まっちゃった、そんなすごい作品なのだねこれは。

そんなすごい作品でも、やっぱり全然知らなかった青い時代が自分にもあったわけだ。そしてこれを聴くことになったきっかけというものがやはり例の如く存在しているわけで、それが自分の場合、鶴久政治の一言だったわけだ。そう、元チェッカーズで、今はなんだかアンダーグラウンドなテレビ番組の司会なんかをふらふらやってどうにか食いつないでいるあの元コーラス部隊の一人の鶴久政治のこと。 チェッカーズの人気もそこそこで、なおかつ自分のソロアルバム用のマテリアルの準備なんかもしていた鶴久政治絶頂期。そんな時のそんな彼が、とある音楽番組の中でこんな短いやりとりをしていた。

 司会: 「レコーディングに息詰まった時に聴く音楽はなに?」

 鶴久: 「そういう時は、いつもキャロル・キングの『つづれおり』を聴きます。」

ヘロヘロとラリってんじゃないか、としか思えなかったいつもの彼とは明らかに違う表情で伏し目がちにぼそぼそと語る彼の言葉は、このときだけは信用できた。とにかく他は何も覚えてないのにこの言葉だけは覚えているんだから絶対に信用したのだ。 そして聴いたんだね、もちろんレンタルで。

それでね、やっぱりね、このアルバムって鶴久政治が言うように本当に息詰まったときに聴くといいんだよね。いやピアノの響きと何とも言えないキャロル・キングの声を聴いてるとさらに息が詰まって泣きそうになることもあるし、また逆に柔らかい日差しの当たる窓辺でゆりかごにでも乗って揺られているような、そんな気持ちにさせてくれることもある。確かになんてことのない日曜の夕暮れ時とかに聴いてもそりゃあそれでいいんだけれども、やっぱりどうにもならないしがらみと悩みを抱えたときにすっと手に取りたい一枚だ。 いや自分はテープでしか持っていないので一本というべきか。

どうやらとにかくとてつもなく巧いジャズ・ミュージシャンらがこのアルバムの底辺を支えているとかで、音楽的には当時のモータウン的な、ものすごいプロフェッショナリズム溢れる作りになっているから、とにかく演奏レベル云々、ギターのフレーズ云々抜きにして、また自分の日常の音楽レベルとは違った次元で安心して音に身を委ねることができる。まあロックンロールじゃないかもしれないし、クラブなんかでは絶対にかからないだろうけど、とにかくため息つきたいときに、いや、ため息つく前にこの一枚。 レコード屋、いやレンタルCD屋でもいいけど、このレコードを探すときには、「つづれおり」「つづれおり」「つづれおり」と唱えながら探していれば店員さんか、もしかすると近くのお客さんがニコニコしながらその場所を教えてくれるよ。いや、教えてくれないようなレコード屋にはもう行かない方がいいかも。 だってそういうアルバムなんだから、この「つづれおり」は。 聴けば分かるよ。



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Short Biography of Carole King

1942年、ニューヨークに生まれたキャロル・キングは、幼少の頃からピアノと作曲の才能を見いだされ、大学時代に出逢った彼女の永遠のパートナーとなるゲリー・ゴフィンとともに曲作りを開始。当初彼らの曲は商業的成功とは縁遠かったが、60年代後半にアレサ・フランクリンやモンキーズらに曲を提供し、その有能なソングライティングが徐々に脚光を浴び始めた。そして70年代に入って自身の音楽活動をスタートさせたキャロル・キングは、71年のこのアルバム「つづれおり」で音楽界に金字塔を打ち立てた。その後のキングはマイペースの活動を続けるが80年頃を境に音楽から一時身を退く。しかし90年代に入り再び彼女の音楽活動は活発になり、ガンズ&ローゼズのギタリスト、スラッシュとのコラボレーションなどという一面も披露しながら、近年もフェスティヴァル等への積極的参加の姿勢を見せている。


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Last updated: 2/18/99