- March 2001 -


Just Push Play Aerosmith


Just Push Play 先日、10年以上に渡って自分が盲目的に愛し続けている女性アーティストのライヴを観にいった。名前を出してもいいのだが、それだとなんだか直接的過ぎるし、はっきり言ってかなりこっ恥ずかしいので名前は伏せておく。でも自分をよく知る方々や、掲示板をつぶさにご覧になっている方々ならご存知であろうし、10年ほど前には「奇跡の少女」「ずっと」「ハートを洗う!」などのヒット曲を飛ばしているので名前は聞いたことがあるだろうが、最近では中古CDの常連アーティストとしてその名はよく目にする、かつてはショートカットがよく似合った、静岡県御殿場市にて美容院を経営する母を持つ、33歳の女性アーティストのことである。そんな彼女のラジオ番組に毎週のようにハガキを出し、1990年の5月17日に1度だけそのハガキが彼女自身の手によって読まれ、現在廃刊になっている某FM雑誌に彼女のアルバムレビューを2度に渡って投稿&採用されていた当時は、武道館3デイズ、富士急コニファーフォレスト、横浜スタジアムなどのアリーナ、スタジアム級のライヴを次々と成功させていたが、時代の移り変わりと、彼女自身の結婚・出産などもあって、最近では大都市中心の小さなライヴハウスツアーを2年に1度程度行うに留まっている。

今回見に行ったのは、大阪、名古屋、東京の3ヶ所で行われた「小さなとびらツアー」のひとつ=赤坂ブリッツ公演で、彼女のライヴに足を運ぶのは、自分にとってなんと9年ぶりのことになる。それに加え、会場がライヴハウスということもあり、今世紀最高の期待を、このライヴに対して寄せていた。それこそ俺にとっては、ストーンズの「ブラウン・シュガー」を、ビートルズの「ゲット・バック」を、ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」を、ガンズ&ローゼズの「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」を、メタリカの「エンター・サンドマン」を、赤坂ブリッツで聞くのと同じことなのである。よって興奮するなというのが無理な話なのである。

しかしライヴを見終わった後の感想を率直に書くと、はっきり言ってあまり感動はしなかった。「奇跡の少女」「ずっと」は演奏しなかったが、「白い情報交換」「ハートを洗う!」「ゆっくり落ちる接吻」「虹」「かわいい舞踏的電気音楽」という名曲の数々に涙するはずだったのに、「相変わらずかわいいなあ。嫁にしたいなあ。」と思うほかは、9年間もその想いを溜め込んでいたはずなのに、自分に鳥肌を立たせるまでには至らなかった。むしろその前後に観たナンバー・ガールやグリーン・デイのライヴの方が感動の度合いはずっと高かったぐらいだ。悲しいことだが、彼女の過去の名曲は、自分にとって重要なものではなくなっていることを、思いがけずに実感させられることになった。だってむしろ彼女がステージを去る時にSEとして使われていたオアシスの「オール・アラウンド・ザ・ワールド」に鳥肌が立ったぐらいだから。「フジロックでやらねえかなあ」って感じで。




リアルタイムに自分を熱狂させた曲群=「デュード」「エレベーター・ラブ」「イート・ザ・リッチ」が、いまだ以ってパワフルなバイブレーションをもたらしてくれていることを再確認したエアロスミスのミレニアムカウントダウンコンサート。「古さを感じさせない」というロックンロールの常套文句を持ち出すのは簡単だが、73年のデビュー作に収められている「ドリーム・オン」「ママ・キン」から、80年代の「ラグ・ドール」「モンキー・オン・マイ・バック」に至るまで、ナツメロとして歌わせない曲作りの不朽のセンスというものは、言うほどたやすく形にできるものではないことが、歳を取り、上記のような経験をすることで段々と分かってきた。なおかつ昔の曲と同様に90年代のナンバーの方が盛り上がるという、そんなコンサートを(日本で)行っているアーティストは、70年代から活躍している人達の中では皆無に違いない。ライヴハウスのキャパ=何百人といった数ではなく、野球場を目一杯に埋め尽くす何万人という人達に、エアロスミスの過去現在の曲群が「必要とされている」。ボーイッシュだった彼女の曲は今の自分に必要とされていないが、エアロスミスの曲は、今の自分に必要とされている。だからもう彼女のライヴに足を運ぶかどうかは分からないが、次のエアロスミスのライヴには間違いなく足を運ぶ。

もちろん間違いなく足を運ぶ、と自分が言う時には、そのアーティストの今の作品が充実していることが前提としてある。面白かったホームページでも、全然更新されなければ自然と足が遠のくのと一緒である。だからジミー・ペイジやキッスのライヴには行かないが、エアロスミスやストーンズのライヴには足を運ぶ。そして今ここで聴いている彼らのニューアルバム=「ジャスト・プッシュ・プレイ」は、まあ過去のどの作品よりも素晴らしいとまでは言わないけれども、今度は福岡まで観に行っちゃおうかな、と思わせるぐらいには十分素晴らしい。80&90年代以降の楽曲の中で最高のファンキネスに溢れているタイトル曲「ジャスト・プッシュ・プレイ」、ジョー・ペリーのリードボーカル曲では恐らくもっとも実験的で、かつ個人的には彼の最高傑作だと断言できる「ドロップ・デッド・ゴージャス」、そして全て飲み込んだコマーシャリズムをスティーブン・タイラーのメロディアスなボーカルで吐き出したような問題作「ジェイデッド」。もちろんどうにも肯定し難い、エアロが演奏することに必然を全く感じないバラード曲も相変わらずいくつかあるし、エアロスミスという強力なブランド名が曲自体(そして日本の洋楽レコード業界全体)に光沢を与えている感も否めないが、さらにこの先10年の安定、もしくはさらなる繁栄を約束するような作品になっていることは間違いない。




ちなみに
永井真理子さん最新作「ちいさなとびら」も、かつての勢いはないもののなかなかの佳曲揃いでライヴでも結構良かったので、ひょっとしたら大復活もありえるかな??? という密かな期待を寄せたりもしている。 かなり確率が低いことは誰の目にも明らかなのであくまでも密かに。 掲示板とかでは絶対に書かないけど。





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Last updated: 3/20/01