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![]() またか、と言われそうだけどやっぱこの人を登場させちゃうキース・リチャーズ。 彼がデビューしたころに掃いて捨てるほどいたビートバンドが次々と姿を消し、その後の自分のバンドの歴史を振り返るときよく口にするのが、「今まで誰もやったことがなかったことをやってるんだぜ。誰も道を作ってくれたわけじゃないんだ。誰か道を作っておいてくれれば楽だったのによぉ。」ってなこと。 「俺たちゃどこに行きゃあいいんだ? どうすりゃいいんだ?」みたいな状況、と来れば話しの筋は見え見えだけど、ストーン・ローゼズが解散した時、ブリットポップという新しい流れがイギリス中を襲ったとき、シャーラタンズも似たような状況になったんだろうと思う。 かたやブライアン・ジョーンズ、こなたロブ・コリンズ・・・・そんな時期に主要メンバーを事故で無くしているなんてとこもすごく似ているし。 そしてそんな時期にかたや「ブラウン・シュガー」、こなた「ワン・トゥー・アナザー」なんていう起死回生のとんでもない名曲及び新機軸を打ち出したところもなんだかそっくりだ。 レゲエ、ファンク、ゴスペルなんかを絶妙にブレンドしながら、よりディープサウスで泥臭いロックンロールを消化していったストーンズと同じように、サンプリングやループなどの時代の音を織り込みつつとてもあのシュワシュワしたファーストアルバム(・・・未だに好きになれない。)を作ったとバンドとは思えないぐらいよりシンプルに、アメリカ南部っぽいグルーヴを獲得していったシャーラタンズ。 アメリカ的なものから何万光年もの隔たりがあるように見えるこのファッショナブルな英国バンドを「アメリカ的だ」なんて呼ぶと憤りを覚えるイギリスかぶれの人もいるかもしれないけれど、島国イギリス的村社会で生きる英国バンドの音は自分を捕らえないし、「アメリカ的」だからこそシャーラタンズは逆に洗練され、自分にとって心地よいものとなってくれているのだと思う。 これはストーンズも然り、そして次に引き合いに出すザ・バンドも然りだ。 シャーラタンズのニューアルバムを聴いてまず思いだしたのがそのザ・バンドなのだけれど、ザ・バンドは60年代にボブ・ディランのバックバンドを務めて一躍名を馳せたグループである。 まあ確かにこのアルバムでのシャーラタ・ティムのボーカルやハーモニカが、まるでボブ・ディランみたいな時がはたくさんある。 でもそれ以上に自分が思ったのが、ザ・バンドのメンバーのほとんどがカナダ人で、そしてそんなよそ者カナダ人達がアメリカ南部の音にチャレンジして、結果的に地元人が作るよりもより洗練された作品を世に残してきたという事実。 これはよそ者だからこそ、客観的にそこの音楽を見れたからこそ、ありがちなカントリーバンドやブルースバンドに留まることなく、すべてをミックスさせた形で新しいものをクリエイトすることができたんだと思う。(もちろん加も米も英も同じ英語圏にあるってこともかなり大きい) だけど、ファッションとか絵とかも同じだと思うけど、こういうことにはやっぱりちょっとした人並みはずれたセンスを持っていないとただの実験的なものとして終っちゃうし、人に受け入れられない可能性も大。 イギリス人が演じるアメリカ音楽はとてもダサカッチョイイからなかなか難しいけど、シャーラタンズはその辺うまく最新のものを取り入れつつ洗練させたものとして完成させているように感じる。 ビートルズもまんまエルビスだったらあんなにウケなかったと思うし、クーラ・シェイカーもあのハイパーロック趣味とインド趣味とクリスピアンのカリスマ性とをうまくブレンドして、あそこまで嫌味なくカレー味の英国産ロックンロールを作り出したんだと思う。 「次に俺たちはどうすりゃいいんだ?」といった状況に陥ったときにミュージシャンが取る行動。 ひとつには時代とうまく折り合いをつけていくこと。 つまりひたすら学習である。 これはU2もやってるしエアロもストーンズもそうだ。 そしてもうひとつは自分の本当に好きなシンプルな音楽に立ち戻ること。 「俺のやりたかったことって何だったんだっけ?」 ジョン・レノンがR&Rに回帰した時がそれだったし、ストーンズもやっぱりそうだったと思う。 よく考えるとこの2つのベクトルってのはまったく違う方向を向いているのだけれど、これを同時にやっちゃうってとこがやっぱ人並み外れている証拠なのだろう。 だからシャーラタンズは生き残るべくして生き残ったというか。 最新のものに貪欲に。だけどよりシンプルに・・・・こうやってシャーラタンズは新しい道を切り開いていくんだろうなあと感じさせる「Us And Us Only」。 そして自分はやっぱりアメリカっぽい大陸的なイギリスのバンドが好きなんだなあ、ってことも改めて確認させられた。 そしてこういうのが本国アメリカでも受け入れられればまた面白いんだけどなあ。 「UK And UK Only」ではなくて。 ![]()
Last updated: 10/11/99 |