- November 1999 (3) -


Live Era '87-'93 Guns N' Roses

Live Era '87-'93 ガンズ&ローゼズの黄金期(・・・というか実質的に活動していたのはこの時期のみだけど。)を克明に捕えたライヴアルバム、それもいまどきダブルアルバムが出るということで、期待120%で迎えたアルバム発売日。 そしてその期待に違わぬ素晴らしい出来でこのライヴアルバムを聴き終えることができた。

思いっきりあの東京ドームで収録されたライヴビデオを思い出させるオープニング「Nightrain」! 暗闇から浮かび上がるアクセル・ローズの腹筋が目に浮かぶようである。音のバランスもすごく良くて、ギルビー・クラークのものと思われるギターサウンドもまったりしていて文句のつけようがない。ほんとこの曲のスラッシュ&ギルビー(イジー)の絡みは最高である。まさにツインギターの真骨頂がここにあると思うし、こういったプレイが自分は非常に好きだ。エアロやストーンズの例を出すまでもなくね。 「Mr. Brownstone」のダブルリフもうねりまくっていて、スラッシュのチョーキングはほんと弦がぶちぎれそうで怖いぐらいだぞ。

「Live And Let Die」が収録されていないのはちょっと悲しいけど、その代わりイジー・ストラドリンがメイン・ボーカルを取る「Dust N' Bones」が聴けて何よりも嬉しい! こういったストーンズ風シャッフルがこのアルバムではスパイス的な役割を果たしていて、決して「バラード&ロックンロール」なバンドイメージに捕らわれないそんなGN'Rの音楽性の幅の広さを感じさせる楽曲だ。シンプルなコードなのに、なんでこんなに多彩な印象を受けるのか、まったく不思議でならない。でも、シンプルなコードで誰にも真似できないことをやる、これが自分にとってのロックンロールだったんだ、と改めて思い起こさせてくれた。

「You Are Crazy」のレイドバックヴァージョン(?)は初めて耳にするが、曲調とは対照的なスラッシュの壊れたギターディストーションが凶暴に鳴り響く。「クレイジーなのはおめえだろ?」とツッコミのひとつも入れたいところである。この曲のアコースティックヴァージョンも、もちろんパンクヴァージョンも大変素晴らしいが、こういった中途半端なのもいいなあ。これも楽曲の良さが成せる業なのであろう。これは「Used To Love Her」にも言えることではあるけれども。

「Pretty Tied Up」「Move To The City」といった後期ガンズ&ローゼズのライヴではあまり演奏されなかった曲目では、スラッシュのギターが暴走しまくっていて、特に「Move To The City」ではエンディングのタイミングを忘れるほどスラッシュは飛ばしまくっている。そして案外ダフのベースがグルーヴィーであることにこの辺で気が付くのである。意外とそのプレイに関しては語られない彼だけれども、シド・ヴィシャスに影響を受けたと言いつつも、そのシュア−な力量はもう少し評価されていいと思う。

「Sweet Child O' Mine」では初期の荒々しさが舞い戻った感じでやっぱいい曲だわ−、と再認識させてくれる、そんな出来に仕上がっている。「Don't Cry」でのアクセルの痛切な叫びに涙し、「Estranged」の綺麗な旋律とスラッシュのメロディアスなプレイに酔いしれ、そして「Paradise City」では一抹の寂しさを感じつつもすべてを忘れてヘッドバンギングしまくる。スラッシュがステージを降りて客を煽る姿を、アクセルがステージ上を飛び回る姿を、ダフがクールに決めまくる姿を、いやが上でも想像しないわけにはいかない。その想像のかなたに白い地平を見られなきゃ、あなたはロックンロールに何を見ているのか、新たに問い直したい気分だ。

ガンズ&ローゼズという生粋のライヴバンドの姿を余すことなく捕えたこの迫真のドキュメント集。まったく淀みなく流れる90年代最高のロックンロールを、ここで体験せずして2000年は迎えられない。レイジファンも、リンプファンも、オアシスファンも、マニックスファンも、すべてのロックを愛する人たちに聴いてほしい、そんな2枚組のライヴアルバムである。 



Live Era '87-'93 Guns N' Roses

Live Era '87-'93 クレジットはないけれども、まずちょっとしたファンならすぐに分かること。このライヴアルバムは、92年2月19日、東京ドーム公演からの音源が全体の3分の1以上を占めているということ・・・・・・・これにはちょっと首をかしげなかった???? ライヴビデオとしても発売されているこの音源をそのままライヴアルバムに使うなんて・・・。

「Live Era '87-'93」とは言うものの、その大半が90年代以降のライヴからのもの。2枚組の前半は、2代目ドラマー、棟梁マット・ソーラムのやたらと重いドラムでそれだとすぐに分かってしまう「Nightrain」「Mr. Brownstone」「Welcome To Jungle」「My Michelle」などの初期の音源も全部そうだ。ライヴでもメドレーになっていた「It's Alright」〜「November Rain」も同じ音源に見せて、実は後半の「November Rain」はどうやら東京ドームのものっぽい。(・・・レコーディングが違う人によって行われているから。) シンバル類の多用と、スネアの軽快さから「It's So Easy」と「Used To Love Her」は、初代ドラマー、スティーヴン・アドラー在籍時の80年代のものっぽい。スラッシュのギターがこじんまりしていなくて、まるでガラスを叩き割ったような生々しい音色になっているのも特徴的だ。 後半の目玉となっている「Pretty Tied Up」「You Could Be Mine」「Move To The City」なども明らかに東京ドームの音をそのまま、という感じだし、「Don't Cry」「Estranged」に入る前のMCも、まったくそのまんまやん!!

・・・・といきなりオタクっぽい話になってしまって我ながらいやだ。 でも92年に出たあのライヴビデオ(・・・正確にはWOWOWで放送されたものを所有。)はほんと穴が空くほど観まくったし、それは当時のファンならばほとんど同じ状態だったと思う。ライヴでは滅多に演られることがなくなった曲を含めて、1本のライヴを丸々パッケージングした、当時のガンズ&ローゼズのすべてを垣間見ることが出来るこのライヴビデオ。自分はこのビデオで「piss off(=ムカつかせる:サバイバル・イングリッシュ参照)」の使い方を学んだし、「You know where the fuck you were, Tokyo!!」というMCで、「the fuckってのはこんな風に強調したい時のに使えるんだなあ。」と受験英語では学び得なかった表現に舌鼓を打ち、「Thank you very fuckin' much !!」とアクセルが叫んでいるのを見て、「ほぉ〜〜。fuckin'って単語は、veryとmuchの間に入れることもできるのかぁ〜。便利な表現だなあ。」と感嘆したものであった。つまり破壊欲だけでなく知識欲をも満足させてくれる、そんな優れたライヴビデオだったのだ。

でもそういった想い出をカット&ペーストしただけの、そんなライヴアルバムはいかんぞぉ〜〜。思い入れ盛りだくさんがゆえに逆にずっこけちまった。いや、もうひとつ言わせてもらうと、自分の90年代ベストアルバム「Use Your Illusion I」から「Perfect Crime」とか「Double Talkin' Jive」とか「Right Next Door To Hell」といったハイパーロックンロールナンバーが収録されていないのに合点がいかなかったが、アルバムを聴いてみてさらにその不満は募ってしまったぞぉ。それにどうにも2代目リズムギタリスト、ギルビー・クラークの音は小さすぎる! さらに言えばまたしても伊藤政則はアルバム聴かないでライナーノーツを書いただろう!!(・・・・この人は、GN'Rのデビューアルバム「Appetite For Destruction」でもライナーを担当していたのだけれど、はっきり言って好意的なことはなにひとつ書いていなかった。)

いや、こんな不満だらけのライヴアルバムに見えても、オーラスを迎えた瞬間は結構あって、まずはわざわざこのボーナストラック1つのために600円もの金を積んだ「Coma」。いやあ、さすがに1回もライヴヴァージョンを聴いたことがなかっただけあってかなり感動的。いかにもプレイし慣れていないといった感じのダフが、結構慎重にベースラインを弾いているのが伝わってきてなんとなく微笑ましい。そして2枚目トップの「Out Ta Get Me」。スティーヴン・アドラーの軽快なバスドラとシンバルの連打、そして初代リズムギタリストのイジー・ストラドリンがギターを弾いている、といったところに当然のことなんだけど今更ながら感動する。こりゃあ、ブライアン・ジョーンズがジャンピン・ジャック・フラッシュを弾いているのと同じことか???

東京ドームの音源以外も、おそらくファンの間では結構有名なソースを使っているのだろうが、いずれにせよ、内ジャケにあるバンドの生々しい演奏シーンとは違って、ここで聴けるガンズ&ローゼズの音は、まさに90年代型スタジアムロックバンドの焼き直しにすぎないと思った。というか個人的にはただ単に好きなバンドのベスト盤を聴いているだけというか、もう何度も何度も聴きまくったその音を、ただ順番を入れ替えただけで手元によこされたというか、とにもかくにも自分が期待していた、初期型の破滅に向かうガンズ&ローゼズの姿と、後期型のブラックホール的になんでも飲み込むガンズ&ローゼズの姿はそこにほとんど無かった。 というか簡単に言うと、自分の好きなガンズ&ローゼズの姿をそこに確認しただけで、彼らに関する新たな発見や驚きはほとんどなかった。つまりあの東京ドームのビデオにすべては集約されているということなのかもしれないが。 イジー脱退後も、ギタリストは2人いるのに、どうみても1人にしか聴こえない悲しい事実をさらに強調する形で。

俺はこのアルバムを聴くぐらいなら彼らのオリジナルアルバムを聴き続けると思う。無人島にアルバムを3枚しか持っていけないとしたら、このライヴアルバムと他のバンドのアルバムではなくて、ガンズ&ローゼズのオリジナルアルバム3枚を持っていくと思う。

でも改めて分かったことは、アクセルにはスラッシュが、スラッシュにはアクセルが必要、ってことかな。90年代の最後を飾る必殺ライヴアルバムとしてはかなり複雑な心境にさせるものではあるけれども。


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Last updated: 11/30/99