- March 1999 (1) -


Performance And Cocktails Stereophonics

Performance And Cocktails 「僕達はAC/DCを聴いて育ったからね。ストレートなロックサウンドに、キャッチーな歌詞が載っている、っていう音楽をずっと聴いてきたんだ。(中略)AC/DCとか、ボブ・ディランとか、ニール・ヤングとか、エアロスミスとか、自分たちのやっていることに信念を持っているバンドが好きなんだ。インディ・バンドに興味を惹かれたことはない。ぽっと出て、6ヶ月後には名前も聞かなくなっているような、そういうバンドには興味がないんだ。」 (SNOOZER98年8月号、ステレオフォニックス・インタビューより抜粋)

この徹底したメジャー指向。 ウェールズの田舎町に住んでいたからメジャーなアーティストのレコードしか手に入らなかった、というのであればなおさらステレオフォニックスは信用できる(笑)。 特に、「エアロスミスが好き」というのもそうだが(笑)、「ぽっと出てすぐに消えてしまうようなバンドには興味がない」というところ。 そういえばいわゆるブリットポップと呼ばれるムーブメントの最中にそんなバンドがたくさんいたなあ。 日英のレコード会社が先を争って新人バンドを青田買いしてアルバムを作らせて、ブームが去るとあっという間にポイ捨て。 でもそんな時期に、「メジャーになりたい!」、と高らかに叫びまくって、一部から失笑を買っていたバンドがひとつあったなあ。 ・・・・・オアシスだ。 彼等は、「ビートルズよりビッグになりたい!」という超メジャー指向を持ってこのメジャーシーンに登場して、その通りに超メジャーになった。 「メジャーになりたい!」と言って本当にメジャーなロックンロール・スターになってしまう。世の中にこれほど痛快なことはない。だって「ファンなんていらないや」、なんて思っているバンドはひとつもないわけだから。 そんな星の数ほどあるメジャー指向のバンドの中で選ばれしステレオフォニックス。 

特にオアシスやステレオフォニックスなんかは、これといったイメージ戦略もなく、マンチェブームやブリットブームに乗ったわけでもなく、単なる一介のロックンロールバンドとしてデビューし、レコードを売り、でかいギグをモノにし、さらにレコードを売り、ここまでやってきた。オアシスなどは痴態、暴言、奇行などのネタを提供し続けてきたということもあるから、そういったメディア受けする話題の提供もほとんどなしにここまで来たステレオフォニックスはもっと偉いのかもしれない。「ストレートなロックサウンドに、キャッチーな歌詞が乗っている」という曲の提供だけでここまでメジャーになったロックバンドはここ数年いなかったのではなかろうか。それこそニール・ヤングやボブ・ディラン以来のメジャーなアーティストとしての地位をステレオフォニックス築いているのかもしれない。

そしてこのセカンドアルバム「Performance And Cocktails」。「ストレートなロックサウンド」という言葉にさらに「ヘヴィーな」といった形容を付けたくなるような音がここでは鳴らされているのが個人的には嬉しい。いわゆるウェールズの牧歌ムードも残しながら、より世界的なスケールの大きい演奏がここで聴くことができる。この「スケールが大きい」というのは得てして「商業主義的」で「売れ線ねらい」の音楽を形容する言葉として使われるが、ステレオフォニックスはもともとメジャー指向だからして、いい意味でこの形容がもっとも似合うバンドだと言えるかもしれない。ファーストアルバム発表以来の地獄のようなライヴ三昧の日々でややハスキーがかったケリーの声は、回を重ねるごとに大きくなる会場の隅々まで響き渡っていくように、より大きく、よりスケール感を持って発せられている。

ハードロック小僧にはギターを取らせ、アコギの弾き語り少年には地下鉄の構内へと向かわせ、パブの常連にはビールを取らせ、はたまたカラオケ屋の客にはマイクを握らせる、そんな様々な人達の様々な光景が目に浮かぶような、ステレオフォニックスの傑作アルバムの登場だ。


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Last updated: 3/1/99