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![]() はっきりいって1999年のベストアルバムはこれで決まりデス。 僕だけが感じていることなのかもしれないのですが、ベックの曲構成には大人っぽさがあります。なにが僕にそう思わせるのか、よくわからないのですが、渋いというよりは、それよりもやや浮いた感じの、フワフワした印象を受けます。掴めそうで掴めないという、6曲目「Angel (Footsteps)」はまさにその言葉がぴったりの曲です。10曲目「Declan」なども大人っぽく、尺八(?)の音もミックスされていて、モー最高です。 そして、1・2曲目だけでなく、ほぼ全曲に渡って、テクノ系の雰囲気が漂っている気がします。ベックは今作を手がける以前に、Massive Attack や Chemical Brothers あたりは必ず聴いていると僕は思うのですが。たとえば、5曲目の「Space For The Papa」は、マッシブとブルーズのミックスみたいな感じがしますし、そしてさらに一言付け加えれば、この5曲目は、個人的に、3曲目のブルーズ「Brush With The Blues」よりもよくできた会心作だと思います。ケミカルの要素に関して言えば、冒頭の2曲、あるいは7曲目「THX 138」あたりがそれをよく証明していると思います。もちろんプロディジーも聴いているでしょう。アンダーワールド、U2『POP』とそのリミックス、デビッドボウイの『Earth Ring』、LFO、ロニサイズ、などは最近僕のよく聴くテクノっぽい音ですが(笑)、こーゆー方向性を持った(曖昧な言い回しだ...(笑)。)アルバムは、ベックはおそらく聴いていると思います。もしかして、電気グルーヴやブンブンサテライツも聴いてたりして...? ベックの持ち味は言わずもがなギターですが、このアルバムではギターの音が何通りにも聴こえるから驚きます。静と動の変化もおもしろいですし、最後の11曲目「Another Place」では、まるで自分が天国にいるかのような錯覚に陥ります。この自由自在なギターさばき。これこそ本来の意味でのギターの「うまさ」なのかなって、思いますゥ。 54歳にしてこのアルバム。 僕の父親よりも年上のジェフベック。 春は訪れる。いや、もうすでに訪れている。 (初夏の日本に花火をあげるのはこの男、ジェフベック。) (text by ケータ)
80年代のギター・ロックを代表する(と自分では思っている)大傑作 "Guitar Shop" が出たのがすでに1989年.サントラ作りやセッションなど課外活動はボチボチあったものの,"Who Else! は "Guitar Shop" 以来の,何と10年ぶりのオリジナル・アルバムである.一体10年間何をしていたのかと思いきや,ジェフ・ベック御大はギター・マガジン誌(1999年4月)のインタビューで以下のように語っている. 「僕にとって『ギター・ショップ』からの10年間は自分の人生を取り戻そうとする時期だった.(中略)日々の繰り返しから離れて,普通の暮らしをしたかったんだよ.(中略)10年間たっぷり充電したことで,またアルバムを作って,ツアーに出る意欲が湧いたってわけさ.」 おいおいおい.10年間の充電なんて言葉,このオヤジ以外には語れないであろう!ファン心理としては10年間待った挙句に駄作が届けられたのではやり場のない怒りがこみ上げてくるだけだろうが,いざこのアルバムを聴いてみたら... ただただニヤニヤするだけあった. 何といってもオープニング曲の "What Mama Said" に打ちのめされる.まず壮絶なテクノのアレンジで鼻血が出たところに,共演しているぶっとびギター芸人 Jennifer Batten のタッピング・フレーズが出現し,鳥肌が立つ.それにベックのギターがからみ,10年間の充電をこの時点で許す.ドラム・ビートだけをバックに指弾きギター・ソロを弾いた後再び Jennifer Batten のタッピングがからみ,さらにエンディングで生ドラムがタグマッチを組み,オカズを入れまくった日には...さてさて,もう1回リピート. もちろん,他にも印象的な曲は色々とある.同じく打ち込み系の "Psycho Sam",ギター雑誌で大絶賛されているライブ録音のブルーズ・セッション "Brush With The Blues",おそらくマジメに弾いているのだろうがどことなく笑ってしまう "Blast From The East",昔からのマブダチ鍵盤弾き Jan Hammer と共演している "Even Odds",ぜひ映画「タイタニック」のサントラとして使ってほしいアイルランド民謡 "Declan",目を閉じると壮大な景色が広がるようなギター1本のナンバー "Another Place" など,聴き所は沢山とある. この原稿を書く当初は,「以前テクノロジーを導入しようとして大いにハマった "Flash" というアルバムがあったが,今回のアルバムにはそういう印象は微塵もない...」ということを書こうとも思ってはいた.また,今アルバムに見られるジェフ・ベックのギター・プレイとかを恐れ多くも書こうとも思っていた.しかし,アルバムを聴いた後では,そういう細かいことはどうでもいい.何せ主役はジェフ・ベックである.ギターがハジけている!もうウニョウニョ,キュイーン,ブル〜〜ンと吠えていて,これだけで十分であろう.ここまで聴く者を打ちのめし革命的な演奏を行い,トレモロ・アームをまるで体の一部のように微妙に動かし,スゴさのあまり聴く者をギャハギャハ笑わせてくれる30年選手はこの人以外にはいないだろう.若さの秘訣が知りたいならば,みのもんたではなく,ジェフ・ベックに聞くのが一番だろう,と痛感する今日この頃である. (text by しげやん)
自分はジェフベックのギターのことを何も知らない。まあ初期にはレスポール、中期にはストラトキャスター、そして最近はテレキャスターをメインにすることが多い、ってことぐらいはなんとなく知ってはいるが、結構それだけだったりする。 で、ジェフベックの何が自分をこれまで惹きつけてきたかというと、それはジェフベックのギターではなくて、実はそのリズムセクションだったりもする。 でもベースやドラムのことになるとなおさら分からなくて、ドラムなんて触ったことすらあまりないし、ベースも指弾きできない。 ジェフベックのバックバンドというのは、コージー・パウエル、テリー・ボジオ、ロン・ウッド、ティム・ボガード、スタイリー・クラークなど、蒼々たるメンツが務めたらしいが、テクニック的にはどのぐらいすごいもんなんだかも実はよく分かってなかったりする。 でも名盤コーナーで紹介した「ワイアード」を聴いてみれば明らかなように、ジェフ・ベックはとにかく、とにかく、とにかくリズムセクションがかっこいい。「ベック、ボガード&アピス」なんてスーパーバンドも昔あったが、歌詞とかギターリフとかは、「なんだか普通かなぁ?」って感じなんだけれでも、とにかくそのリズムがかっこいい。 立って踊らせるとてつもない魔力をその音楽の内に持っている。 ジェフ・ベックはダンスミュージックというのが心の底から好きなんだろうけど、これまでバンドメンバーをコロコロと変えてきたその理由も、「踊れなきゃダメだ! とにかく俺を踊らせろ! 俺のギターを踊らせろ!!」、といった感じでベックの理想とするリズムセクションを欲しがったためではないかと推測している。 それには、60〜70年代のリズム&ブルーズ、ファンクなどの黒人、モータウンの音楽が、実はジャズやクラシック界における当時最高のバックミュージシャン達が高性能なリズムマシーンとして曲のグルーヴを最大限に高め、それが結果としてダンスフロアの制覇とヒットチャートの席巻に結びついた、という事実を彼自身がよく知り、そしてそういうものを彼自信が特に嗜好する、などということが潜在的に反映されているのかもしれない。 R&Bやファンク、そしてジェフ・ベックのみならず、ギタリストというものは、いいリズムセクションなしでは活躍できないというのがこれまでの常で、エリック・クラプトンのギターがもっとも輝いていたのは、ジンジャー・ベイカーがいたクリーム時代であり、そしてジミー・ペイジの場合は言うまでもなくジョン・ボーナムがいたレッド・ツェッペリン時代のかっこよさが光り輝いている。 キース・リチャーズもチャーリー・ワッツなしのストーンズは考えられないと言っているし、ストーン・ローゼズにいたあの人の場合もそうだし、フーもそうだし、ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスもそうだよなあ。 つまりそういうリズムセクションあってのギタリストなわけで、なんだかその辺が忘れられていた80年代にテクニカルなギタリストがたくさん出てきて現在そのほとんどが死に絶えてしまったのも、そしてそれとは逆のリズム中心の今の音楽状況があるのも、リズムあってのギタリスト、リズムあってのロックンロールという前提に立てば、必然と言えば必然なんだろうな。 だからジェフベックはいつの時代においても最先端なものであり続けたのであろう。 この「Who Else!」も、ご多分に漏れずそんなリズミックな作品に仕上がっている。 いや、こんな冷静なレビューを書いている暇があったら踊れ!!ってぐらいのダンサブルな曲がひしめき合っている。 そしてひと通り踊って汗をかいて、ちょっと心地よい疲れを感じながらまたこのアルバムを聴いてみると、また一興なんだなこれが。 最近のジェフベックはギターの弦をピックではなく、右手の指で弾いているのだが、それがまたリズミックな独特のパーカッシブなノリに貢献しているのがわかったり、その一音一音を丁寧に拾って聴いてみると、これがまたスペイシーでなんだかかゆいところまで届く感じで、肩を揉まれているかと思ったら、次の瞬間に突然足の裏のツボを強く押されて、その気持ちよさにのたうち回るというか、女性であれば、アレの最中に、色々なポイントを、色々な強さで不意打ち攻撃されて、気が付かないうちにのたうち回りたくなるほど気持ちよくなるあの感じがこのアルバムにあるというか、男性だったらアレを・・・・・・ってことは詳しく書かなくてもいいかと思うが、とにもかくにもジェフ・ベックは気持ちいいものを作り出す達人だね。 この辺も彼から色々教わることがありそうだ。 しげやんが言うように、少なくともみのもんたよりはすごいに違いない。 (text by Kats)
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Last updated: 3/23/99 |