++ April 1998 (2) ++


Vision Jaguar

97年のデビュー以来、イギリス各音楽誌で絶賛の嵐(?)が巻き起こり、ここ日本でも新興某S誌の大プッシュによって、その名を知られるようになったこのジャグアー。どうやらそれら紙媒体によると彼らの音はストーン・ローゼズとオアシスに似ているらしい。まあ、その言葉につられてこのアルバムを買っちゃったローゼズ、及びオアシスファンも多いだろうけど(かく言う私もそうだが。)、極論すればローゼズに似ているところは、一曲目の「Up And Down」のジョン・スクワイアっぽいタメの効いたギターのベンドと全体的に流れる柔らかいトーンぐらいだし、オアシスっぽいところは全体的にメロディー重視の傾向がある程度である。でも言うなればそこが彼らジャグアーの持ち味でもあって、そのつかみ所のなさは、某S誌の編集者2人が書いた苦心したのか、それともいい加減なのかわからないライナーノーツにも現れている。(まあ、T.S.さんの原稿はいつも観念的で、私みたいなミーハー人間にはよく分からないのだけれど。)

このジャグアーのメインコンポーザーで、ボーカル兼ギタリストのマルコム。この人、私は相当したたかな若者と見た。このアルバムを聴いていると私は高校の地理の富塚先生の言葉を思い出す。「受験ではみんな分かる簡単な問題を確実に得点するんだよ。難しいのはみんな出来ないんだから。」 ジャグアーの音楽ってまさにこれである。難解とも思われる新しいことは何一つやっていない。もっぱら万人に分かりやすいリズムとギターリフ、そして小綺麗にまとまったメロディー。今のトレンドとこれまでの音楽を徹底的に研究した結果なのであろう。売れ線、と片付けてしまえば身も蓋もないのだが、あまりにもスマートなこのバンドに欠けているのは一種のアクの強さだからして、「売れ先狙い」と他から非難されるのも悪くない。優秀な成績で入学した大学生のようなこのジャグアーが、そこで様々な経験を経てどのようなバンドになっていくのか、これからも注視していきたい。

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Last updated: 4/14/98